目次
ブックマーク
応援する
2
コメント
シェア
通報
猫みたいな彼女がツンデレ過ぎる
猫みたいな彼女がツンデレ過ぎる
武 頼庵(藤谷 K介)
現実世界ラブコメ
2025年02月27日
公開日
1.5万字
連載中

 主人公(男子高校生)はいたって普通の高校に通う男子高校生。見目が良いわけでもなく、勉強もそれなりには出来るといった感じで、運動神経が少しいいくらい。

 お幼馴染も通う事になったその学校には、噂では中学生時代に有名だった子も入学してくるらしい。
 どんな子なのかはうわさに聞いているくらいで、あまり興味が無いが、幼馴染と共に何の偶然か同じクラスになってしまう。

 席順も前後している事で近く、同じ班になった事で、色々な事を一緒にする事が多くなった二人。しかし彼女はいつもツンとした態度で接してくる。

 それが『猫な彼女』との初対面だった。


 表ではツンとした『猫』の様な彼女と、時折見せる『デレ』に次第に魅せられていく俺。

 その結末やいかに――。
 『猫』に翻弄される学園ラブコメスタート!!

ep0 ないしょ



「どうしてこんなこともできないの?」

「あん? 仕方ねぇだろ?」

「言い訳はいらないわよ」

「言い訳してねぇだろ!!」

 女子の方はいたく冷静な口調のままで、俺だけがちょっとヒートアップしているけど、これはいつもの事だ。


「おい、アイツらまたやってるぞ」

「まったく飽きないわねぇ」

「でもさ良く言うじゃん?」

「ん?」

「喧嘩するほど仲が良いって――」

 俺たちの首位でそんな会話がされているのが耳に入ると、俺はその会話している奴らの方へと顔を向けた。


「「仲良くなんてしてねぇよ(してません)!!」

 思わず先ほどまで言い争っていた相手と言葉が重なった。


「な?」

「ね?」

 周囲がウンウンと頷いている。

 俺はそれを見てはぁ~っと大きなため息をついた。




 お昼休みは学生にとって、放課後に次いでゆっくりとくつろげる時間でもある。


 俺は一人静かな場所で食べたいから、お昼休みの間だけ解放されている校舎の屋上で食べる事にしている。


 友達がいないわけじゃないし、なんならクラスの中には幼馴染と言える奴もいるのだけど、なんというか……大勢の中、他人ひとのする会話を聞きながら食べるという事に、ちょっとした罪悪感というかその場に居ちゃいけない気持ちになってしまい、どうしても一人静かな所を選んでしまう。


 今日も独り、うららかな青く高い天を見あげながら独りで母さんの作ってくれた弁当を食べている。


がちゃ

スタッ


――ん? 誰か来たのか?

 いつもはほとんど誰もいないとはいえ、この屋上というスポットは色々な用途に使われるので、まったく誰もこないというわけじゃない。


 座っていた場所からスッと立ち上がり、来た人から見えない様にと移動し、入り口の反対側へと回り込む。


「あ、来てくれてたんだね!! 良かった!!」

「…………」


 更に誰かが来たみたいで、聞こうとはしていないけれど、聞き慣れない男子の声がきこえてきた。ただ話しかけているようだけど相手の声は聞こえない。


「えっとその……手紙見てくれたかな?」

「はい。読みました。ですからここに居ます」

「そ、そうだよね!! ごめんね変なこと言って……」


――あれ? 先に来ていた相手って……。

 毎日の様に聞いている声が聞こえて来たので、少しだけこの人たちの会話が気になってしまう。



「ま、真下瞳さん!! すs、すすす好きです!! ぼ、僕とお付き合いしてください!!」

「…………」


「お? 告白かよ……。またえらいもん聞いちまったな……」

 知らぬ間に零れ落ちる独り言。



「ありがとうございます。好きだと言ってくれるのは嬉しいです。でも、ごめんなさい。私はあなたとお付き合いはできません」


――はい撃沈!!

 ちょっと気の毒な気もするけど、これもまぁ仕方ないよな。好き嫌いはあるだろうしな。



「り、理由を聞いてもいいかな?」

「理由ですか? わかりました。では言いますけど、私はあなたの事を知りません。あなたも私の事なんて良く知らないでしょう?」

「え? いや、そんな事無いよ!! 中学時代の事とか、モデルにスカウトされたことがあるとか、知ってるし」

「ほら、しか知らないでしょう?」

「あ、あとは、あとは……」

「はぁ~。もしかしたら私のこの外見を気にいってくださったのかもしれませんけど、良く知りもしないのに『好き』というのは、私には理解できないんです。だからごめんなさい。あなたとはお付き合いできません」

「…………うあぁ~~!!」


――っ!?

 先ほどまで告白していた男子がいきなり叫び出したのを聞いて、スッと腰を上げる。


だだだだだだだ――。


 出ていこうとした瞬間に、階段を駆け下りる音が聞こえて来た。ホッとしてまた腰を下ろし、手に持ったままだった箸を弁当に向けようとした瞬間。


「ねぇ……」


「ねぇってば!! いるんでしょそこに!!」

「え?」

 少し大きな声が聞こえて来たので、ようやく話しかけられている事に気が付く。


「もしかして俺に声かけてたのか?」

「やっぱりいるんじゃない……」

「ん? まぁここが俺の特等席だからな」

「そんなこと言って……」

 壁際に少しずつ大きくなりながら近づいて来る影と、先ほどまでの酷く静かな声じゃない、感情の乗っている声が近づいて来る。


 スッ


「は?」

「なに?」

「いや、何で隣に座ってるんだよ?」

「いいじゃない……少しだけいいでしょ?」

「いやまぁ……。良いけど」

「うん……」

 そういうと少しだけ空いていた空間を詰めるようにして、真下が近づいて来る。


 その近づいて来る真下に合わせるようにして、動く空気に乗りほんのりと甘い香りが俺の鼻腔をくすぐる。


「さっきはごめんね……」

「ん?」

「ほら、教室で……」

「あぁ、あれぐらい気にすんな。俺はいつもの事だからな。言われ慣れてる」

「でも……」

「真下――瞳の口調が人前であぁなるのは今に始まった事じゃないだろ?」

「そうだけど……」

 手に持った箸を再稼働させ弁当を手に持って食べ始めた。


ぱたり

ぽすん


――!?

 軽い衝撃と共に俺の肩に乗る心地よい荷重。


「ちょっとだけ貸してね……」

「あぁ。ちょっとじゃなくていいぞ。どうせ俺は今、弁当食うのに忙しいからな」

「……ひらく、ありがと」

 そのまま俺は黙々と弁当を食べて、食べ終わってもずっとその体制のまま、午後からの授業始まりの予鈴が鳴り響くまで、二人屋上の上で緩やかに流れ吹く風を感じ取っていた。




「なぁ拓」

「ん?」

「知ってるか?」

「何を?」

 午後の授業も一つクリアした休み時間に、俺の後ろに座る男子から声を掛けられる。


「真下さんの事だよ」

「ひ――真下がどうした?」

「お昼休みに隣のクラスのイケメン陽キャに告白されたらしいぜ」

「へぇ~……」

「なんだよ興味ないのか?」

「……ないなぁ……」

 まさかその場にいたとは言えない。


「でもさぁ」

「ん?」

「見事撃沈されたらしいぜ」

「そうなんだ。それは可哀そうに……」

「真下さんって好きな人でもいるのかなぁ?」

「俺に聞かれてもな……」

「ま!! 拓じゃない事だけは確かかもな!!」

「うざ!!」

 今では俺も少しは仲良くなっているとは思っているけど、そこまで自分がとは思ってない。それだけの事をしているとも思ってない。ただ――。


――瞳の好きになる奴か……。

 気になるかならないかはまた別な話ではある。



「なに?」

「え? いやなんでも……」

「そう?」

 知らぬ間に隣を見ていたのか、気が付いたら隣からも視線を感じたと思うと、言葉が向けられて少し驚く。



「私が好きな人はね…………ナイショ」

「え?」


 俺に向けにこりとしながらそういう瞳の笑顔がとても輝いて見えた。

これが今のの関係だ。



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?