次々と魔法が登録されていく。
想像していたものや考えたことのないもの等、見ているだけで楽しい。
あ、キノコの名前調べの魔法が増えたぞ。
でも名前を調べるより毒かどうかを調べた方がいいんじゃないのか?
結局一睡もせずに魔法のリストを見ていた。
もっと見ていたいけどさすがに学校をさぼるとまずいので嫌々ながら一階に降りる。
「おはよう」
「お兄ちゃん遅い、って目が死んでる」
「寝てないんだよ」
文句言っているのは妹の陽菜だ。
綺麗な黒髪で目が少したれ目、可愛らしいと綺麗の境目にある容姿に加えてスタイルも良い。
中2なのにツインテールにしている変わり者でセットに時間がかかるからいつも早起きしているらしい。
「ツインテールじゃなくてツーサイドアップだよ、お兄ちゃん」
「モノローグに突っ込むのはやめよう?」
「心の声が周りに聞こえたら突っ込むに決まってるよ」
「え、声に出てた?」
「自分でモノローグって言ったよね?」
「モノローグって心の声って意味じゃないのか?」
「心の声を独り言で言うことだよ?」
まじかよ、ずっと間違って使ってた。
いや、ある意味今回は合っていたんだけど。
「お兄ちゃんはたまに抜けてるよね」
「寝てないんだから仕方ないだろ」
「寝てないのはお兄ちゃんの問題だよ」
こんな話をしている間にも魔法はいろいろ作られているんだろうな。
気になるけどもう学校に行く用意しないと間に合わない。
「テレビすごいことになってるけど当たり前だよね」
そう言って陽菜は眼の前に世界書を出現させた。
てっきり本人にしか見えないのだと思ったらそうでもないらしい。
見た目は俺のと変わらないな。
「お兄ちゃんの見せてよ」
「変わらないぞ」
「いいから」
念じると目の前に世界書が現れた。
自分で出しておいてなんだけどやっぱり現実感ないな。
「大きさがちょっと違う」
陽菜が自分の世界書を手にとって俺のと重ね合わせる。
たしかに大きさが違うな……。
「って、いやいや、なんで触れるんだよ!?」
「本だから当たり前でしょ?」
「普通触れない仕様にするだろ!?」
「そんなのどうでも良くない?」
「どうでも良くない」
触ることが出来るってことは他人が干渉できるってことになる。
魔法を使うための大事なものなのに、どうしてそんな仕様になっているんだ?
「相変わらず考えすぎだね、お兄ちゃん」
「お前が考えなさすぎなんだよ」
「どういう理由であれ触ることが出来る、それが全てだよ」
陽菜らしい非常にシンプルな答えが返ってきた。
あるがままを受け入れ直感で答えを出す。
それで正解を引き当てるのだから大したものだと思う。
俺はなぜそうなったかを理解しようと必死に考えてようやく答えが出せる。
兄妹なのに性格が違いすぎるとよくツッコまれるのも無理はない。
「ページもめくれるのかな?」
そう言って触ろうとしてきたので世界書を消す。
まだろくに機能も把握してないのに手当たり次第触られたら困る。
「ケチ」
拗ねた顔でちょっと頬を膨らませて抗議してくる。
非常に可愛らしくて許したくなるが、自身の可愛さを理解した上でやってるので非常にたちが悪い。
きっと他人の世界書で検索とか出来るか試してみたかったんだろうな。
「他人が触ったら何か不具合起きるかもしれないだろ、少しは考えよう」
「考える前に動く、私の好きな言葉です」
「異星人は退治しないとな」
「頭の中に響いたあの声も異星人かな?」
陽菜との会話の途中で話が飛ぶのはいつものことだけど、たしかにそれは俺も気になった。
言われてみればあれは誰だったんだろうか。
頭の中に直接語りかけるなんて現代の技術で出来るわけないし、そもそも一人一人に世界書なんて与えられない。
「テレビで神様がどうとか言ってたよ」
さっそくテレビをつけてみるとどこもその話題だった。
偉い人が神だの異星人だの言ってるのはちょっと面白い。
「神でも異星人でもいいのにね」
「宗教を信じる人には影響大きいからなぁ」
多神教ならまだしも一神教だと大問題だろう。
ただ日本人にはあまり興味ない話題だろうし魔法が使えるようになったらすぐそっちに話題が移るかな。
「さっさとご飯食べて学校行きなさい」
「はーい」
「わかった」
なぜ学校を休みにしてくれないんだろうか。
魔法が使えるようになるなんて大事件だろうに。
・・・
「おはよう」
「魔法すげえぞ!!」
教室に入ると、翔が目にクマをつけながらテンション高く話しかけてきた。
絶対あれから寝てないんだろう。
「たしかにすごいのが多かったよね」
「回復魔法とかあったぜ」
「まじ?」
回復って腕が生えてくるとか?
いや、そこまでは無理でも壊死した細胞が復活するとかで十分だ。
「透視魔法とかもあったし使ってみたいぜ」
「詳しく」
透視、たしかに一度は使ってみたい。
実際に下着を見たところで多少興奮する程度だろうけど、それはそれ。
男のロマンなのだ。
「調べればすぐ出てくるだろ」
「だって一人じゃ効率悪いし」
魔法の効果を確認している端から増えていくから一人じゃどうしようもない。
「そのためのこれだろ」
そう言ってスマホを見せてきた。
WIKIに魔法がリストアップされてランキングがついている。
最強魔法とかも紹介されてるけど、まだ使えないはずなのにどうして?
「すげえだろ」
「ランキングついてるけどもしかしてもう使えるの?」
「説明文と消費MPからの想像らしい」
「それは評価って言わないよ!?」
エアプランキングと言ったほうが正しい。
というかそれで最強魔法とかよく選べたな。
「そのランキングの300位を見ろ」
「[ヒートテイク]?」
名前から熱に関することだとは分かるけど何をするかは分からない。
熱を放出するとかなのかな?
「そうだ、そのうえでこれを見ろ」
そう言って世界書を出してこちらに見せてくる。
そこには一つの魔法が表示されていた。
名称:ヒートテイク
登録者:春日井 翔
効果:対象に熱を加える。
消費MP:1
「オレの魔法だ」
ドヤァっという顔をしてたのでとりあえず腹パンしておく。
……腹筋が硬すぎてこちらの手が痛い。
「ナイスパンチ」
「全然効いてないだろうが」
翔はボクシングをやっているので腹を殴られるのは慣れている。
ろくに運動していない俺が殴った所で効くはずがない。
「で、対象に熱を加えるってどういうこと?」
普通に考えればお湯を沸かすとか氷を溶かすとかだろうか。
それならものすごく便利な魔法だと思うけど。
「手で持ちあげた物の温度を3℃上昇させる」
「しょぼっ、もう少し高性能にしようよ」
たしかに熱は加えてるけどそれだと手で持つのと変わらない。
せめて決まった温度にするとか100℃ぐらい上昇させるとかじゃないのか。
「仕方ないだろ、維持コストが高えんだから」
「維持コスト?」
「少しは調べておけよな、魔法を作ると維持コストがかかるんだ」
「どのくらい?」
「魔法の消費MPと同じだけ最大MPが減る」
「は!? 暴利すぎる!?」
自分の世界書を出してMPを確認する。
最大MP30、最初に見た[炎]の魔法なら維持だけで三分の一がもっていかれる計算だ。
「ちなみにみんな最大MPは30らしいぞ」
「めちゃくちゃ厳しいな」
俺も魔法を何個か作るつもりだけどその仕様だとかなり厳しい。
たしかに翔のようにしょぼい効果でも消費MP1の魔法になるな。
「授業始めるぞー」
「お、もうそんな時間か、じゃあな」
「おう」
先生が来たので話は打ち切りとなった。
そうか、昨日は新しい魔法を見るのに必死だったけど自分で作れるんだよな。
昔たくさん魔法を考えたことがある。
もうほとんど忘れてしまったけどその夢が叶うのか。