目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第二話

初めて議会に呼ばれ、長や議員から軽く仕事の説明を受けた。

もちろん議会には兄も居た。

兄は僕が木こりの仕事に就くことを納得していないのか、僕が最後の最後まで反論をしていたが、もう決まったことだと長に諭されていた。


兄は長にそう言われるとバンッと力強く立ち上がり、議会室の扉を力強く開け放ち出て行った。


「まぁ、そういうわけだから、よろしく」

長の言葉で議会は閉廷し、僕は家に戻り荷物をまとめてその日の内に大樹近くの小屋に荷物を移した。


木こりの仕事は大樹の周りのみで、ノルマをしていれば誰かに文句を言われることのない環境だ。

自分で働く時間を決めてもいい。

斧を振るう必要が有るので肉体的にはしんどいが、気持ちは村で陰口を言われている中で働くよりも断然楽だった。


木こりになってから二ヶ月くらい月日が経ったと思う。

今日も変わり映えしない仕事を終えて小屋に戻ると、六体の生き物がキュピキュピと可愛い音を鳴らしながら部屋の中で暴れていた。

この動物達との出会いが、僕の生活を一変させる。


まず小屋の中が騒がしくなった。

不思議な動物達は声を発することが出来ないので、話し相手にすることはできないがこちらが言ってることは理解できるようで返答は体で表現してくれる。

なので簡単な会話は可能だ。

おかげさまで仕事以外の時間が苦痛じゃ無くなった。

次に身の回りの家事を何もしないで良くなった。

短い手足を駆使して上手いことご飯を作ったり、お皿を運んだり部屋の片付けをしてくれる。

自分達は食事をしないのにどうやって味付けをやっているのかは不明だが、味はかなりのものだ。


そんな珍しい六匹の動物と過ごし始めて一月が経った。

六匹の内訳はこうだ。

うさぎ・白黒の熊・白黒の小さい熊・とかげ・牙の生えた魚・珍しい模様の猫でうさぎ以外はこの森では見たことがない。

おそらく森の外から来たんだと思うが、うさぎもこの森に生息していたものか怪しいと考えている。

理由としては、この動物達は食事をしないし、睡眠も不要。

そして、触るとフワフワで動くだけでキュピキュピと音が鳴る。

村にいた犬なんかは確かに毛が生えていてモフモフはしていたが、体に触るとゴツゴツと骨を感じたが、この六匹の生物には骨がない。


まぁ正直生物かどうかは別にどっちでもいい。

この六匹の動物達が小屋に来てから生活に彩りが出来たように思う。


六匹が家事を全てしてくれるので、僕は時間がかなり余っていて、前にも増して不思議な力の練習をすることができるのだ。

だが、余った時間をどれだけ練習に使っても、兄が教えてくれた一番簡単なものすら発動する気配すらない。


それから半年。

最低限の仕事だけをして、残りの時間は全て練習に明け暮れた。


そしてその時は突然にやってきた。

少年の腕には不思議な紋様がまとわりつくように発現し、兄がそよ風ブリーズと呼んでいた狙った方向へ微風を放出するの力が発動したのだ。

これは村にいた時兄に教えてもらった一番簡単なものだ。


そよ風ブリーズは行使することで強力な攻撃になるわけでも無ければ、特別な効果があるわけでもない。


そよ風ブリーズを行使することで、体内に巡っている力を発動する為に必要な要素を理解することができる。

ここから応用してより強力な力を行使していくのだ。

だが、これは一般的な人であればの話だ。

僕はそよ風ブリーズを行使することで理解してしまったのだ。

自分の体内を巡る力ではこれ以上強力なものを行使することが出来ない事に。

あくまで体感にはなるが自身が体内に保有している力ではこのそよ風ブリーズを二回発動すれば全て使い切ってしまう。

むしろ二度目が発動できるかも怪しい。

それでもそよ風ブリーズが行使出来たことには変わりない。

木こりになってから村に一度も帰っていなかったが、兄にそよ風ブリーズが使えたことを報告したいと思った。


強く握っていた拳を解き、僕は駆け足でみんなが待っている小屋に戻った。

扉をバァーンと開け放つと六匹の不思議な生き物が目をまんまるにして扉の方へ視線を向ける。


「みんな、いきなりだけどちょっと村に帰るよ!」

村に戻ることを告げるとみんな心配そうに僕を見つめる。

この六匹の生き物達ともそこそこ長い時間一緒に居る。

何を考えているのかが大体分かってきたところだ。


「大丈夫だよ。みんなそんな心配そうな顔しないで。村はすぐそこだから明日には戻ってくるからさ」

少年がそう言うと六匹の生物は僕の方へキュピキュピという音を立てながら近づき、足元でじゃれついてくる。


「みんな本当にありがとうね。みんなのおかげで僕はようやく力を使うことが出来たんだ。だから兄ちゃんに見せたら次はみんなにも絶対見せるからね」

僕の言葉に六匹の生物はピョコピョコと飛び跳ねて喜びを表現する。


「ははは、みんな元気だなー!よし、じゃあ、村に行ってくるから留守番よろしくね」

カバンに必要な物を詰めて僕は村に向かう事にした。

六匹の生物はわざわざ小屋から出てきて、姿が見えなくなるまで手を振りながら見守る。



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?