(晃相手に、こんなにドキドキすることになるなんてな……)
好きになる予感は、多分なかったと思う。人生って不思議なものだ。
晃の唇が、肌を撫でていくのを眺めながら、そんなことを考える。甘い痺れに身体を震わせ、吐息を吐き出す。緊張で指が震え、冷静な思考と興奮した脳とが、同時に入り混じる。初体験の時よりも、多分オレは緊張している。
オレの身体なんか、見たって撫でたって面白くないはずなのに、晃はやけに丁寧に、一つ一つ確かめるように触れて行った。太腿、膝とキスをされ、クラクラと眩暈がする。顔が良いせいか、晃の言動はなんだかやけに色気があった。
「あ、きら……っ」
ゾクゾクと身体を震わせながら、名前を呼ぶ。晃はチラリと視線をよこしたが、止まることなく愛撫を続ける。こんなに丁寧な抱き方をされると、気恥ずかしい。もどかしさに上体を起こすと、晃がやんわりと胸を押してベッドに押し返した。
「それっ……、擽ったいっ……」
「嫌そうには見えなかったけどな」
その言葉に、むぅと唇を結ぶ。嫌なわけでは、ない。オレの反応にフッと笑って、晃は一度深呼吸をした。それから、備え付けのローションを手に取る。ローションの風を切る晃の様子に、俺はゴクリと喉を鳴らした。晃の指は震えていた。
「……嫌だったら、しないから」
「嫌じゃねえよ。この前のは――違うから」
ハッキリとそう告げると、晃は少しだけホッとしたようだった。それから、意を決したように、指先で固く閉じた窄まりを撫でた。敏感な箇所ゆえの快感と、触れ方のもどかしさに身を捩った。
「だい、じょうぶ……、だからっ……」
「……ん」
促す言葉に、指先が挿入される。異物が侵入する感覚に、反射的に足でシーツを蹴った。ローションのぬめりを借りて、指がぬるりと入って来る。
「っ――……」
顔を顰めたオレに、晃が「大丈夫?」と問いかける。
思ったほどの、嫌悪感も違和感もない。そこに何かが入っているという感覚こそあるものの、痛くも痒くもない、というところだ。
「あ、あは……、思ったより、平気……」
「……良かった」
強がりを言ったつもりはなかったが、そう言った途端、内部を指が搔き乱すのに、ビクンと身体を跳ねらせる。
「あっ、あ……」
晃は内部をほぐすように、晃を迎え入れられるように、丹念に弄り始める。男として生きて来て、こんな経験をするとは思っても居なかった。
(でも、晃になら……、許せちゃうんだから……)
自分でも、大概だと思う。
指が増やされても、文句のひとつも出てこない。むしろだんだんと、早く晃と繋がってみたいと思っている。
「はぁ……、っ、んっ……晃っ……っあ!」
快感から逃れようと捩る身体を、晃が封じる。
「っあ、晃っ……! そこ、ばっかっ……!」
「陽介、気持ち良さそうな顔……。可愛い」
「ばっ、ばかたれっ……!」
チュ、とキスをしながら、晃はそれでも手を止めない。ガクガクと膝が揺れ、もうどうにでもなれと思い始めた頃、不意に指が引き抜かれた。
「ひぁっ!」
急に止められ、感情をどうしていいか分からなくなって視線をさ迷わせる。じわじわと湧きあがる快感を持て余しながら、晃の方を見た。晃はゴクリと喉を鳴らし、コンドームの袋を破ろうとした。緊張しているらしく、何度か失敗しているのをボンヤリ見つめる。
「……カッコよく決めろって」
「多くを求めないで。所詮俺だから」
ようやくゴムを装着したらしい晃が、脚の間に入って来る。普段なら、そんな場所に侵入を許さないのに、もうそんな意識もなかった。額に張り付いた髪。顎を伝う汗。息を吐き出して上下する胸と、甘い吐息。
カッコ悪いところもあるけれど、やっぱりカッコいい。この姿を、オレだけが見ているというのは、少しだけ優越感がわく。
晃はハァと大きく息を吐き、小さな声で「入れるよ」と呟いた。
「――ぃ!」
晃は一瞬躊躇したが、きゅっと唇を結んで、そのまま腰を押し進める。
やがて、すべて挿入しきったのか、晃がオレの上で小さく呻いた。
「……大丈夫…?」
「…………解らん」
大丈夫かという問いかけに、オレは小さくそう返事をした。つながった箇所がやけに熱い。心臓がそこにあるみたいに、ドクドクと脈打っている。
「……やっと、繋がれた」
フッと笑った晃の微笑みに、心臓がきゅんと跳ねた。
「……キス、して」
腕を拡げ、キスを強請る。晃の唇が降りて来て、オレの唇を軽く啄んだ。そのまま、舌を忍ばせ、互いに絡め合う。
「……動いて良い? 良いよな……?」
返事も待たずに、晃が動きだす。
「あっ! あ、あっ……、待っ……」
「陽介っ……、陽介……」
(あ、これ、晃の大きさ、解る……)
互いの深いところに触れ合うのに、服も、肉体も邪魔で。もっと繋がりたくて、一ミリの隙間も出来ないほどに肉を寄せ合う。多分今、一番深くつながっている。一番晃の、近くにいる。
「陽介……、好きだ……。好きだよ……」
「っ、あきら、……れもっ……、すき、あきら」
うわごとのように繰り返して、唇を寄せる。
晃がオレの中で弾けるのと同時に、オレは腹の上に白濁をまき散らした。