それからと言うもの、ピザをお届けしたり、ポケットパンパンにチョコレートを詰めたり、なんとも可愛らしいイタズラの応酬を繰り返す仲になったのである。
そして今、目の前にはビーチがある。
はい、やってる。犯人は絶対に晃。
どうやらオレが研修で不在だった二日間を良いことに、寮の部屋を魔改造したらしい。
オレの叫びを聞いて現れた晃は、しれっとした顔で
「沖縄行きてーって言ってたじゃん?」
と口にした。
「アホか。どこが沖縄だ」
口では呆れているが、まあ、こういう馬鹿は嫌いじゃない。労力も金も掛かっている。遊びに全力過ぎるだろ。
「水着とアロハシャツもある」
「そう言うことは早く言えよ」
差し出されたアロハシャツと水着を受け取る。こうなったら、楽しまなければ損である。
二人して着替えて、ビーチに横になったりしながら写真を撮る。
「ポスターが小さいんだよ。画角に入らん」
「スマホ貸せって。ほら、こうすりゃ入るから」
グイと肩を引き寄せられ、画角に入るよう調整する。画面には馬鹿二人。ノリノリである。
「はよ。この体勢きっつw」
「待て待て、もう一枚」
アホみたいな柄のアロハシャツを着た晃は、なんだか馬鹿みたいだった。残念なイケメンである。身体中砂まみれだし、何をやってるんだか。
「トロピカルジュースないの?」
「シークヮーサーサワーならある」
「飲む」
酒を飲みながら、ヤドカリをつつく。どこで拾ったんだろうか。
「これ、オレ寝られんの?」
かろうじてベッドは無事だが、周りは砂だらけである。片付けを考えたくない。
「俺の部屋来て良いよ」
「そうするわ」
結局、ビーチになった部屋を久我たちに自慢したら馬鹿にされ、寮長の藤宮に見つかって、めちゃくちゃ怒られた。オレはとばっちりだが、一緒に怒られたし、一緒に片付けた。
「はー、疲れた。晃、お前砂なんてどこから持ってきたんだよ」
「ホームセンターに売ってた。コンクリート作るのに使うっぽい」
「へぇー。何でも売ってるな、ホームセンター」
「マジで何でも売ってる。楽しくなる」
「解るわ」
駄弁りながら、のそりとベッドに潜り込む。男二人で寝るのはどうかと思ったが、案外気にならなかった。
砂だらけの部屋はまだ完全に片付いていない。ヤドカリはペット禁止だが、捨てるわけにも行かないので育てることになった。
「しかしお前、やってんな」
「楽しかっただろ?」
「まーなー」
否定はしないけどさ。
「今度は店でもやるか?」
「お前馬鹿だろ。あー、でも、ピザ屋良いかも。トースターで焼きたて出せばさ」
「だろ?」
その気はなかったはずなのに、大津の言葉でつい、想像してしまった。
ビーチに部屋を改造したように、部屋をピザ屋に改装して、友人たちに提供したら楽しそうではないか? 冷凍のピザだったら簡単に出来る。焼くだけなら面倒はない。
いや、どうせやるなら本格派? ネットで調べて、ピザ生地を捏ねるところからやったら、面白いのではないか。
幸いなことに、馬鹿なことに付き合ってくれる友はいる。
「どうせやるなら本気で馬鹿やろうぜ」
「おうよ。お前ならそういうと思ったよ」
オレの言葉に、晃はそう言って、モデルみたいな顔で笑った。