目次
ブックマーク
応援する
5
コメント
シェア
通報
今さら嘘とは言いにくい
今さら嘘とは言いにくい
藤掛ヒメノ
BL現代BL
2025年02月25日
公開日
5.4万字
完結済
オレ、蓮田陽介と大津晃は、同じ独身男子寮に住む仲間だ。学生気分も抜けずに互いにイタズラばかりしている。
ある日、オレは酔いつぶれた晃に、「酔った勢いでヤっちゃったドッキリ」を仕掛けた。
驚くアイツの顔を見て笑ってやろうと思ったのに、目が覚めた晃が発したのは、「責任取る」の一言で――。

真面目な返事をする晃に、今さら嘘とは言いにくくて……。

イタズラから始まる、ハイテンション誤解ラブコメ!


※他サイトにも掲載しております。ネオページ掲載版はR15に編集したものです。

一話 二人のイタズラ合戦


 何を言っているか解らないかも知れないが、家に帰ったら部屋がビーチになっていた。オレも解らん。なんでこうなった。


 部屋の壁にはブルーオーシャンなポスターがでかでかと貼られ、床一面に敷き詰められた白い砂。ビーチパラソルにプールサイドによくあるパイプのベッド。砂の上には貝殻やら、ヒトデやら。あと、生きたヤドカリがノコノコと歩いている。


 オレは無言で、一度部屋の扉を閉めた。407号室。合ってる。


 もう一度部屋を覗く。ビーチである。


「おおおお晃ぁあああぁぁあ!! あの馬鹿、何してくれてんだ!」




   ◆   ◆   ◆




 夕日コーポレーションの運営する独身男子寮『夕暮れ寮』というのが、オレの住んでいる場所である。


 寮ってどんなもんかと思っていたけれど、同世代の集まりは案外楽だし面白い。社会人経験の浅いオレだが、正直に言えばまだ大学生気分が抜けていない。まあ、馬鹿な同期のせいもあるかも。


 寮に住むオレの同期は、オレを含めて四人。


 ドキュンファッションで、ややヤンキーみたいなルックスの宮脇陸みやわきりく。見た目はアレだが、中身はポイ活とかしっかりしてる倹約家である。


 型で押したような若手サラリーマンみたいな風情の久我航平くがこうへい。きっと意識高い系が読むようなビジネス雑誌やら自己啓発本とか読んでるんだろうなって感じ。寮では麻雀やら競馬やらを悪い先輩に教えられてる。まんま、陽キャって感じ。


 で、多分、一番オレと仲良くしているのが、大津晃おおつあきら。見た目は爽やかイケメンって感じでモテそう。けど、中身は小学生男子。オレと一緒に馬鹿ばっかりやってる。


 ついでにオレ、蓮田陽介はすだようすけ。夕暮れ寮、馬鹿代表。


 そして、オレが自分自身を馬鹿代表だと思う由縁。それは――。


 頻繁に繰り返す、同期たちへのイタズラのせいであった。




   ◆   ◆   ◆




 ことの発端は、食堂の空いていない休日に、外に飯を調達に行くのが面倒で、配達を頼んだこと。その時は牛丼だった。


 オレはふと、思ったのだ。


(この牛丼、届け先他人の家にも出来るんだよな)


 ネットでも、悪質なイタズラとして一時期騒がれた。金は注文した人間が払うのだから、完璧な愉快犯である。


 見知らぬ相手なら迷惑千万だが、知り合いならば馬鹿なイタズラで済むだろう。要するに、奢ってやろうというだけだ。腹一杯。


 ポチリ、注文を確定させた品は、そうして隣人である晃が受けとることになった。その数、四人前の牛丼。


 てっきり文句を言ってくるか、笑い飛ばすか―――「なにやってんの?」とか、そう言うのを期待していたのだが。


 特に反応のないスマートフォンを眺める。受け取ってはいるようだ。


(うむ。さすがに、空気読めてなかったか。まあ、同期っていってもな)


 この時は、社会人になってこんなアホなことをしている、馬鹿なヤツだと思われて、スルーされたのだろうと思っていた。


 晃とは比較的仲が良いが、就職してから仲良くなった程度で、そこまでの関係じゃなかったと言うことだ。


 なんだか自分が恥ずかしくなる。


 そう思っていたところで、不意にスマートフォンに通知が入った。


『ご注文の商品がまもなく届きます。しばらくお待ち下さい』


 その通知に、一瞬(は?)と思考が停止した。


(まさか)


 既に答えの正解を、半分くらい解っていた気がする。ワクワクが止まらない。


 五分ほど待って、到着の通知が鳴る。玄関前に出て、オレは荷物を受け取った。


(チーズ牛丼、十個www)


 意趣返しとして、満点の返信。


 オレは笑いながら牛丼の袋を抱えて、晃の部屋に乱入した。


「おい、おまっw チー牛十個はやってるって!」


「ごちー」


「ごちー、じゃねえのよ。お前のが払ってんのよ」


 部屋に入ると、晃は大口を開けて三つ目の牛丼を食べている最中だった。


「あー、笑った。あ、一個交換しよ」


「おけ」


 勝手に居座り、オレも一緒になって食べ始める。結局、二人で十四個の牛丼を完食するのは無理で、宮脇と久我にも手伝って貰った。


 こんな感じで、オレたちのイタズラ合戦は始まったのである。






この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?