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24話 約束を果たすため


 何千、もしかしたら何万かもしれない。ずっと、会えなかった。伝える事ができなかった。


 エンジェリアとゼーシェリオンも探してはいた。だが、呪いの聖女となったリミェラを見つける事ができなかった。


 ようやく、会えた。ゼーシェリオンは、一度会っているのだが。


「やっと見つけた。ノーズとヴィジェを奪った二人を」


「ゼロ、お願い」


「ああ」


 ゼーシェリオンが、氷魔法を使い、呪いの聖女を氷の中に閉じ込めた。


「どうにかして、聞いてもらわないとなの。二人から伝えてほしいって頼まれた事」


「ああ。俺らだけでってなるとだいぶ難易度高いが」


 氷が溶ける。元々、時間稼ぎにしか使う予定はなかったが、予想以上に早い。


「小賢しい真似するなー! 」


「ふぇ⁉︎ 」


 炎の弾が、エンジェリア達に向けて放たれる。エンジェリアは、急いで防御魔法を使ったが、慌てすぎて、かなり弱い。


 これでは、防ぎきれない。


「……みゅ? 」


 エンジェリアの防御魔法が壊れたと同時に、ゼーシェリオンが、氷魔法で壁を創った。


「時間稼いでくれたおかげで、ちゃんと制御できた」


「ゼロ……エレ、やっぱり、こういうのじゃ役に」


「立ってるから安心しろ」


 エンジェリアが、落ち込むと、ゼーシェリオンが慰めてくれる。


 エンジェリアは、もう一度落ち着いて防御魔法をかけようとした瞬間、氷が斬れた。


「ほんと、君らってこういう事考えてないよね」


 エンジェリアの目の前で剣がぶつかる。フォルが守ってくれなければ、エンジェリアは、避ける事も防ぐ事もできなかっただろう。


「リミェラは黄金蝶だ。いくら魔法の方が得意なだけで、武器を扱えないというわけじゃない」


「ぷみゅぅ」


「オルにぃ、流石にこれは多めに見てよ」


「……俺は何も見てない。元々、二人がリミェラの相手にならなかった場合、ここで起きた事を全てもみ消すために来ている」


 オルベアは、エンジェリアとゼーシェリオンだけでは、呪いの聖女を止める事ができないと知っていたのだろう。


 その時、フォルの立場を守るために、わざわざ同行してくれたのだろう。


「でも、エレ達だって、何もできないはやなの。ノーズねぇとヴィジェにぃに、リミェラねぇを会わせるためにも、エレ達だってがんばるの」


「なら、僕は、君らだけじゃどうにもできなくなるまでは見ているよ。リミェラは、本家の神獣。君らだけで止める事なんてできないだろうけど、君らの納得するようにして」


「みゅ。ありがと」


 本当は、守りたいだろう。それでも、フォルは、身を引いてくれた。


 エンジェリアは、ゼーシェリオンに防御魔法を使う。今度は、落ち着いて。


「ゼロ、防御魔法はできたの。エレはゼロのサポートするから」


「ああ」


 ゼーシェリオンが、氷魔法で剣を創る。


「これって」


「ゼムに教わったんだ。かなり昔だけどな」


 呪いの聖女が、エンジェリアを狙って、剣を振り下ろす。ゼーシェリオンが、氷の剣で受け止めた。


 呪いの聖女の持つ剣が凍る。触れたものを凍らせる。だが、剣が全て凍る前に溶けた。


「ふみゅ。相性悪い気がしてくるの」


「そうは言っても、俺は他の魔法あまり得意じゃねぇんだよ」


「闇魔法使えなの」


 エンジェリアは、ゼーシェリオンをずっと見てきている。ゼーシェリオンが得意とする魔法は全て把握している。


「……苦手かもだけど、破壊魔法で剣を破壊するって方法も」


「それがあったか」


 ゼーシェリオンは、破壊魔法を使うが、効果がない。


「ふみゃ⁉︎ 」


 ゼーシェリオンに気を取られていたエンジェリアは、闇魔法に気づかず、自分の足元に闇魔法で作られた触手に巻き付かれた。


「エレ」


「大丈夫なの。動けなくしても、エレは魔法に集中してるから意味ないの」


 この闇魔法からは、攻撃性を感じない。動きを封じるために使ったのだろう。


 だが、解析をしていない以上、それだけとも限らない。エンジェリアは、防御魔法を維持したまま、魔法を解除するためにも、解析を行う。


 ――ぷみゅ。危険性はないの。ちょっとぬめってるけど。でも、足だけとは限らないから、早めにどうにかしとくの。


 エンジェリアは、足元にある闇魔法をできるだけ早く解く。


「ぷみゅ。できたの」


 防御魔法を維持したまま、闇魔法を解いた。


「きゃふっ⁉︎ 」


 闇魔法を解いていて前を見ていなかった。氷魔法で創られた氷柱が、鳩尾にぶつかり、爆発した。


 爆発の衝撃で、エンジェリアは、後方へ吹き飛んだ。


「大丈夫? 」


 壁にぶつかる前に、フォルがエンジェリアを受け止めた。


「……みゅぅ」


 爆発した際、氷の破片が飛び散り、エンジェリアの腕や足、額に刺さり、血が流れている。


「ゼロ、氷魔法で防御しろ! 」


 ゼーシェリオンは、エンジェリアの防御魔法を当てにしている。エンジェリアは防御魔法を維持してはいるが、かなり弱くなっているだろう。


 これでは、呪いの聖女の魔法には耐えられないくらいに。


 ゼーシェリオンが、フォルの声を聞き、氷魔法を使った。


「……ゼロ」


「……オルにぃ様、今の」


「間違いない。外部からの攻撃だ」


「今度は、オルにぃ様の品定め、だろうね。僕がこの子につきっきりになると想定して」


 フォルは、エンジェリアに癒し魔法をかけながら話している。エンジェリアを攻撃したのは、リューヴロ王国の時と同一と見ているのだろう。


「エレ、少しだけ協力して。思い通りにされるのなんて、君もいやでしょ? 」


「や」


「なら、少しだけ君の魔法を使わせて。それだけしてくれれば、あとはどうにかする」


「みゅ」


 フォルがして欲しい事は分かっている。エンジェリアは、フォルの手を握り、メロディーズワールドを使った。


「それで、ゼロを守ってて」


 フォルが、浄化魔法を使った。呪いの聖女の部分だろう。真っ黒い靄が溢れ出た。


「これが、呪いの聖女の原因か」


「みゅぅ」


 エンジェリアは、メロディーズワールドを解く。ついでに、溢れ出た真っ黒い靄をメロディーズワールドで創られた世界に封印した。


「これで、あとは何が起きたのか聞くだけだけど……」


「……ゼロ? エレ? ……わたし……ありがとう。二人とも」


「相変わらず状況把握が早いね。なら、話を聞いても良いって言いたいけど、記憶ある? 」


「ない。だから、その時の事を話したくても、話せなくて」


 エンジェリアは、それは想定していた。そのためにエンジェリアが、魔法具を用意してまで、ここへいるのだが、想定外なのは、魔法が使えなくなる事。


「今ので力尽きたの。ぱたり」


「ごめん」


「これだけは、呪いの聖女関係ないよ。エレ、後でご褒美あげるからがんばって。これは君以外はできないから」


「……なで……ちゅぅ……くんくん……ぎゅぅ……お風呂一緒……ぽかぽか……」


 エンジェリアは、ここぞとばかりに要求する。これを全てしてくれないと、何もしないというのは、長年の付き合いであるフォルは理解しているはずだ。


「……頭なでと、唇ちゅぅと、ぎゅぅしたままくんくんと、お風呂一緒で僕が全部洗うと、一緒に密着してねむねむ? 」


「みゅにゃ⁉︎ そ、そこまでは要求してないの⁉︎ 」


「えぇー。要求してよ」


 フォルが、にこにこと笑いながらエンジェリアを抱きしめる。


「……ゼロ、キミってあの二人とずっと一緒にいるから聞きたい。気のせいなら気のせいと言って。これ、エレがフォルにご褒美要求じゃなくて、フォルがエレを良いように扱ってない? 気のせいだよね? 気のせいで良いよね? 」


「残念ながら、あなた……あなた方の義弟は、エレを好き放題しているだけです。誠に残念で、信じられないと思いますが」


 リミェラは、本家の黄金蝶。フォルの義姉だ。


 ルーツエング達だけでなく、リミェラも、フォルを弟のように扱っていた。そんな弟が、ご褒美をねだるエンジェリアで遊んでいる光景を信じたくないのだろう。


「……ぷみゅぅ……ご褒美はあるからがんばるの」


 エンジェリアは、フォルから離れて立ち上がった。


 エンジェリアは、リミェラに近づき、ゼーシェリオンと手を繋いだ。


「ぷみゅ。エレのがんばりで、思い出させてあげるの」


 エンジェリアは、そう言って、過去を視れるように魔法を使った。

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