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3話 邪魔変魔法


 買い出しへ行ったゼーシェリオン達。


 ノキェットの城下街で、食材を買っていた。


「……ルーにぃ、あれをミディに買ったら喜びそう」


「アイスか。ゼノンが喜びそうの間違いだろう」


「ぷみゃ⁉︎ ってエレが言いそう」


「ゼノン、自分が欲しいならそう言え」


 ゼーシェリオンは、アイスを物欲しそうに見つめている。隣を歩くイールグの服の袖を掴み、物欲しそうに見つめている。


「アイス……」


「ルー、買うんじゃない。ゼノンは、昨日こっそり、お菓子を持っていた」


「チッ、なんで知ってんだよ」


 食べ物には、魔力回復効果がある。甘いものは特にその効果が高く、魔力吸収量も上げる。


 ゼーシェリオンは、魔力吸収量が上がると、魔力に酔う可能性がある。そのため、甘いものは大好きだが制限しなければならない。


「……むぅ」


 ゼーシェリオンは、ぷぅっと頬を膨らませた。


「ゼノン、甘いもの以外なら買ってやる」


「……願いの星の姫の最新刊」


 最近大人気な恋愛小説。その登場人物が、エンジェリアに似ている事から、ゼーシェリオンは、昔から愛読している。だが


「それ出るのまだ先だろう。あるのでだ」


 最新刊発売日は、二十日後。まだ出ていない。


「最新の魔法具設計図ランキング本」


 エンジェリアと一緒に見て楽しめる事もあり、それで妥協する事にした。


「それなら。ある……エルグ、本屋に寄って良いか? 」


「俺も欲しい本があった」


「わたしも、料理本欲しい」


「俺も、今注目の魔法具技師の設計図の描き方の本が」


「私、調合免許目指そうと思うから参考書」


「俺は、魔法具技師免許目指して参考書」


 全員本屋に用があるようだ。ゼーシェリオン達は、本屋へ入った。


      **********


 ゼーシェリオンが本を探していると、イールグが写真集を買おうとしていた。


「ルーにぃそういう趣味が」


「なんだ、意外だ。貴様も興味あると思ったが」


「あるわけねぇだろ。女の子の水着の写真集……は? なにこれ? 」


 良く見てみると、屈強な男達が表紙に載っている。タイトルも、筋肉写真集と書かれている。


「この屈強な姿。まさに歴戦の戦士と言える」


「……うん。後で部屋行って良い? 俺も買うから、置いといて」


 フォルはまだ良いが、エンジェリアにだけは見られたくない。


 自分の部屋に置く事は、エンジェリアに見てくれと言っているようなもの。


「隠す必要はないだろう。だが、興味あるならいつでも歓迎しよう」


「ルー、少し手伝って……ノヴェに頼むか」


 ルーツエングが来て、本を見て去ろうとする。


「エルグにぃ、これ筋肉写真集」


「筋肉? そんな言い訳……世の中、意外な需要があるのだな。勉強になる」


「エルグ、興味ないか? 歴戦の戦士に」


「……紹介してくれ。こっそり」


「ふっ、良いだろう。それで、さっき頼もうとしていたのはなんだ」


「ああ。禁呪の魔法書がないか調べるのを手伝ってもらいたくて。最近、良く見かけるから、悪用される前に買っているんだ」


 禁呪の魔法書は、販売禁止本だ。だが、どこからか流通しているのだろう。それに、ルーツエングが悩まされているようだ。


「俺も手伝う。魔法具設計図ランキング本探すついでだが」


「助かる」


「俺も、それを探すのを手伝おう。エルグの方も」


 ゼーシェリオン達は、禁呪の魔法書を探しつつ、魔法具設計図ランキング本を探した。


      **********


 買い物が済み、本屋を出た。


 禁呪の魔法書は、三冊見つかった。


「これはどうするんだ? 」


「管理者が所有する書庫で保管する」


「そうか。用が済んだ。遅くならないうちに帰ろう」


「ああ」


 ゼーシェリオン達が帰ろうとすると、悲鳴が聞こえた。


「……エルグ」


「魔物が現れたのかもしれない。行ってみよう。リミュ達は、そこで待っていて欲しい。ゼノンは」


「俺も一緒に行く」


「頼む」


 ゼーシェリオン達は、悲鳴の聞こえた方へ走った。


      **********


 悲鳴がした場所に来ると、女性が血まみれで倒れている。ゼーシェリオンは、すぐに回復魔法を使った。


「回復魔法は苦手じゃ」


「ああ。だから応急処置程度しかできねぇ」


「代わろう。これでも神獣だ。回復魔法くらい使える」


「……ああ」


 ルーツエングが、回復魔法を使い、女性の傷を治した。


「ゼロ、誰にでも得意不得意はある。あまり気にするな」


「そうじゃない。この傷、おかしいと思わないか? 傷だけじゃねぇ。魔物にやられたなら、ここまで至近距離になるか? まるで、直前まで抱きしめていたかのような」


 魔物の足跡と女性のいた場所があまりに近すぎる。だが、近い割には、傷が浅い。


「……そうだな。この至近距離なら、もっと傷が深いだろう。それに、魔物が近距離攻撃型であまりに速かったというわけでもないなら、この距離も納得できるが、あまりに近すぎる。抱き合っていたというのもそうだが、キスでもしていたようだ。ここ、良く見てみろ」


 女性の唇に血がついている。何か、牙の鋭いものに噛まれたような跡もある。


「……俺の魔法だと、傷跡までは治せなかった」


「その時点でおかしいんじゃねぇのか? 俺は苦手だからって思ってたが、魔法の効きが悪い。普通の魔物がそんな事できるか? 」


 女性に魔法を妨害する魔法でもかけていたのだろう。それで、回復魔法の効きが低いようだ。


「もし自分でとか、恋人がとかなら、怪我をしたら回復魔法が効くようにはしておくはずだ」


「おかしいと言えば、今の状況もだろう。悲鳴があったなら警備兵が来るだろう。なのになぜ来ない」


「そう言えば、誰もいねぇな……エルグにぃ、ルーにぃ、向こうに大量に魔物の足跡がある」


 ゼーシェリオンは、魔物の足跡を見つけた。その足跡を辿れば、魔物が見つかるかもしれない。


「待て。おかしい」


「何がだ? 」


「ルー、意見を聞きたい。誰もいない場所。魔物の足跡。倒れている女性。それが今の状況だ。もし、誰かが人を消したりしよう。ならなぜ、この女性がここにいる」


「……エルグ、貴様は、この女性が怪しいと思っているのか? 」


 一見すると、怪我人で魔物の被害者。


 ――俺なら、自分が疑われないように、被害者の位置で様子を見る。もし、そうだとしたら……いや、疑われないようにじゃねぇ。これが呪いだとすれば……


「……エルグにぃ、俺の考えも聞いてくれるか? 」


「ぜひ聞かせて欲しい」


「……呪いの聖女なんだろ? いや、リミェラねぇ」


「うふふふふふ。やっと、やっと見つけた! 絶対に許さない! 」


 倒れていた女性が起き上がる。


「リミェラと言えば、ノーズとヴィジェの黄金蝶だろう」


「ああ。だから、俺らを恨んでんだろ。俺らが、二人をどこかへ消したと思ってんだ」


 それを否定はしない。できるはずがない。それに関わっているのは事実だから。


 ゼーシェリオンは、両手をぎゅっと握り、拳を作った。


「なんで、関係ねぇ奴まで巻き込んで、呪いの聖女なんかしてんだよ。俺らだけを狙えば良いだろ」


「おまえ達が一番許せない。けど、あの民衆どもも許せない! 全部、全部呪ろってやる! 」


 ――……あの時、俺が止めなければ……そんな事考えなんな。あの時はああするしかなかったんだ。


「ゼロ、とりあえず今は引く」


「けど、俺らのせいで」


 呪いの聖女の誕生。ピュオとノーヴェイズの過去の話と、今の発言。その二つから、エンジェリアとゼーシェリオンが原因の可能性が高いと思われる。


「……ぜ、ろ? 」


「えっ? 」


「会いたかった」


 突然そう言って微笑んだ呪いの聖女。だが、それはすぐに消えた。


 気のせいではない。まるで、人が変わったかのようだった。


 それに気を取られたのは、ゼーシェリオンだけではなかった。


 恐らく、呪いの聖女と呼ばれる黄金蝶、リミェラは、それを意図していなかっただろう。だが、その数秒が、ゼーシェリオン達が、邪魔変魔法にかかる隙となってしまった。

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