話は少し前に遡る。
エンジェリアは、神殿の情報を閲覧できる。そこで情報収集していると、呪いの聖女の目撃証言というものがあった。
呪いの聖女は、かつて、ピュオとノーヴェイズが出会っている。その事を知っていたが、その結末も知っていたため、話を聞こうとは思えなかった。
だが、これ以上被害が出る前に対策を取る必要があるのも事実。エンジェリアは、ゼーシェリオンとフォルに相談し、話を聞きいく事にした。
「言いたくなければ言わなくて良い。でも、僕としては、話を聞いて、君らの意見も聞いてから、どうするか決めたい」
フォルは、呪いの聖女の処分を命じられていた。それもあり、話を聞きたかったようだ。
「フォル、そんな事すれば」
「今回の仕事は色々と不明な事が多すぎるんだ。向こうが何も情報を渡さずに、処分だけを命じるなら、僕は自分が見聞きしてどうするか決める」
「そうか。そう決めたら、何があっても変えそうにない。やりたいようにやれ」
「ありがと。それで、話は戻るけど」
「良いよ。全部話す」
そうして、ピュオとノーヴェイズが、呪いの聖女に会った前後の話をした。
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「これが、わたし達が知っている事だよ。役に立ったかな? 」
「ありがと。正直、こんな情報が得られるとは思ってなかった」
「……琥珀色って黄金と似てる気がするの」
エンジェリアが一番気になった部分はそこだ。
ピュオとノーヴェイズを誰かと間違えた。それは恐らく、御巫候補であったから。そう考えると、琥珀色の瞳という部分が引っかかる。
「フォル、黄金蝶って、赤髪なんている? 」
「黄金蝶は緑系統が基本だけど、稀に別の毛色の時がある。だから、もしかしたら赤髪もいたのかもしれない……赤? そういえば」
「みゅ? 誰か思い当たる人……みゅにゃ? 」
エンジェリアも、フォルと同じく、心当たりがある。ゼーシェリオンも、心当たりがあるだろう。
「フォル、お部屋でお話ししよ」
「うん」
「あっ、ミディ、俺買い出しあるから」
「みゅ。分かった。また後でどうなったか教える」
「ああ」
エンジェリアは、フォルと一緒に部屋へ戻った。
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エンジェリアの部屋より、フォルの部屋の方が良いだろうと、フォルの部屋で話し合う事にした。
「フォルはどう思うの? 」
「間違いないだろうね」
「ふみゅ。なら、探している相手ってやっぱり……」
エンジェリアは、そう言って俯いた。
「……何があったのかは、君が話したくないなら聞かない。話したい時話してくれれば良いよ。でも、一つだけ言わせて欲しい。こんなの、三人とも望んでないはずだ」
「ふぇ? 」
「……救って欲しい、か。エレ、呪いについて調べるよ。手伝ってくれるよね? 」
フォルが、連絡魔法具を見て、そう言った。ピュオかノーヴェイズからのメッセージだろう。
エンジェリアは、喜んで引き受けた。
――救うって事なら、いっぱい協力するの。エレも、救いたいから。
「ふにゅ? でも、調べるってどうすれば良いの? 」
「記憶の書庫や本家の所有する書庫には及ばないけど、ここにもそれなりに本はあるよ。魔法関連を重点的に揃えてあるから、載ってるかもしれない」
「ふみゅ。じゃあ早速」
「でも、僕らが調べるのは、呪いというのが、どんな状態になるのか。それさえ分かれば、ある程度予想はつけられる。君が詳しく調査してくれれば、一つに絞れるかもしれない。エレ、できる? 」
「任せるの。フォルのためにいっぱい探すの」
エンジェリアは、フォルのためにと調査を開始する。
「みんな、呪いの聖女の噂を集めてきてくれる? 」
小さな精霊達が噂を集めている間、何もする事はない。フォルの服を適当に出して、ベッドの上で寝転んだ。
服を顔に近づけ、匂いを嗅いで楽しむ。
「エレ、匂い嗅ぎながらで良いから仕事手伝って。報告書の確認が終わってないんだ」
「良いけど、エレが読めるか分かんないよ? 読みにくいから」
管理者の半数が、管理者になる前は文字を書いた事すらなかった。フォルが管理者に迎え入れた後、教育をしてはいるが、まだ慣れないようで、暗号のような文字で報告書が書かれている。
エンジェリアは、山になっている報告書を何枚かベッドに持って行った。
「ふみゅ。ちょっと上手になってる」
「エレなら、仲間だから解読すぐできると思ったんだけど」
「エレは丁寧に書けば上手なの。早く書くと下手になっちゃうだけなんだから」
「上手に書いていた時を見た事ないんだけど」
「それは知らないの」
エンジェリアとフォルは、報告書の確認をしながら、精霊達が帰ってくるのを待った。
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精霊達が帰ってきて、呪いに関する情報はかなり得る事ができた。
「ふみゅ。まずは、魔物の変わるの。そこからどんどん自我がなくなって、人を襲うようになるの。そういう症状だって言ってた」
「……邪魔変魔法」
「ふみゅ? えっと、確か……魔物に変わっちゃう魔法なの。でも、あれって、ご主人様の言う事だけを聞く良い子なはずだけど」
エンジェリアの聞いた話では、魔物化した人々は、自我を失い、人々を襲い破壊の限りを尽くす。
だが、フォルの言っている邪魔変魔法というのは、使用者の命令を聞き、動く。
「不完全なら、そうなる可能性は十分にあり得る……だとしたら、使用者にもかなりの負荷がかかってるはずだ。それに、代償も……」
「ふみゅ。なら、手遅れになる前に早くどうにかしないとなの。エレ、いっぱいがんばるから、使って」
「うん。なら、フィルに頼んできて」
「ふにゃ⁉︎ 設計図を持っている事をなぜ知っているの⁉︎ 」
エンジェリアは、フィルに魔法具の製作を頼もうと、設計図を持ち歩いていた。フォルがそれを気づいていた事に、エンジェリアは、驚きのポーズをとった。
「君が考えそうな事だから」
「エレを良く見てるフォルもすきなの」
「見てるよ。好きなんだから」
「ふみゃ⁉︎ 直球できたの⁉︎ フォルも一緒に行くの」
「うん」
エンジェリアは、フォルと手を繋いで、フィルの部屋へ向かった。手を繋げて喜んでいたのは、フォルも気づいていただろう。
**********
フィルの部屋を訪れると、魔法具の本を読んでいた。
「フィル、お願いがあるの」
「なに? 」
「魔法具を作って欲しいの。設計図を持ってきたから」
エンジェリアは、そう言って、フィルに設計図を渡した。
フィルが、設計図を受け取って、見ている。
「三日……二日あれば作れる」
「ふみゅ⁉︎ さすがなの。フィルすごいの」
「これ何に使うか聞いて良い? 処理能力向上の魔法具なんて、エレ以外需要なさそうだけど」
エンジェリアは、処理能力が著しく低い。ゼーシェリオンとの共有である程度は補う事ができるが、それでも限度がある。
エンジェリアの使う過去視を使うのに、処理能力が低いと、遠い過去を視る事ができない。これは、それを補うために設計した魔法具だ。
「過去視のためなの」
「……これだと、過去視には向いてない」
「ふぇ? そうなの? むにゅぅ、慣れないから難しいの」
「……フィル、この回路を少し変えて、形をつけやすいのにすれば、過去視を使う時にも使いやすいんじゃない? 」
「ふみゅ。さすがなの」
フォルが、設計図を少しだけ変える。それだけで、エンジェリアの過去視に使う際の欠点をなくした。
「エレのフォルはとってもすごいの。らぶらぶなの」
「君にこれを教えたのは誰だと思ってんの? 」
「フォル。ついでに、調合に関してもフォルなの。エレの教育はゼロとフォルがしてくれていたから」
エンジェリアは、ゼーシェリオンとフォルにより、都合良く教育されている。そのため、多少、一般常識を知らない事もあるが、ここにいる分には苦労しない。
エンジェリアは、フォルに抱きついて匂いを嗅いだ。
「フィル、徹夜はだめだよ。ちゃんと寝て」
「それ、フォルにも言える事だろう。いつも仕事で徹夜ばかり」
「……僕用事思い出したから、部屋戻る」
「ふみゃ⁉︎ 都合悪くなって逃げるフォル可愛いの」
「冗談抜きで、報告書があまりに溜まりすぎているから。フィル、報告書の確認が済んだらくるよ。エレ、君は暇なんだから手伝って」
「ぷみゅぅ。フィル、魔法具お願い」
エンジェリアは、フォルに連れられて、フォルの部屋へ戻った。