駆け出した私に反応するように、スライムも同じように触手を伸ばして応戦の構えを取る。
さっきまでと違うところといえば、迫りくる触手を
どれだけ絡まれて肌を溶かされようと意に介さず、ただひたすら前に向かって進み続ける。
溶けては修復し、修復しては溶かされてを繰り返しながらスライムの身体に肉薄した私は、そのままその身体の中へと自らの意思で飛び込んでいった。
当然そんなことをすれば、溶解液に触れた全身から激痛が走る。
その痛みを感じるより早く全身を修復し続けながら、私はスライムの中にポツンと浮かぶ拳大の球体を見つけ出した。
スライムの核となっているソレに向かってメイスを振り下ろすと、それはあっさりと粉々に砕け散る。
その瞬間、ブルリと震えたスライムの身体は一気に崩れていき、そのまま地面に溶けるようにして消えてなくなってしまった。
「はい、これで私の勝ち。我ながら、完璧な勝利ね」
なんてドヤ顔で腰に手を当てて勝利宣言する私だけど、実は全身が溶けてるせいでヒリヒリ痛い。
それでもそんな痛みなんておくびにも出さず表情を決めていると、コメントは違う方向で盛り上がっていた。
”いやっ、その前に服っ!!”
”乳房がこぼれそうだって!”
”制服を溶かされた腹いせに倒すために、制服がボロボロになる手段を取るのってどうなの?”
”これはさすがにエロすぎるって……。チャンネルBANされそう……”
「だから、別にそこまで気にしなくても大丈夫だってば。こんなの、すぐ直せるしね」
言いながら全身に修復をかけると、制服はまるで新品同然にしわもなく綺麗な状態へと戻っていた。
「はい、これで元通り。ちなみに、あのスライムの身体の中に飛び込むのはさすがの私でもオススメはしないわ。下手したら、骨も残らず溶かされちゃうから」
”言われなくても分かってるって”
”オススメされても、俺なら断固拒否するわ”
”骨も残らず溶けるような場所に、なんの躊躇もなく飛び込むなよ……”
「私はいいのよ。もう何度も飛び込んで、大丈夫なことは分かってるし」
それに、ああでもしないと私じゃスライムの核は壊せない。
「魔法が使えたら比較的簡単に倒せるし、そういう意味ではあのスライムも深層では最弱の部類ね。一応は魔法耐性も持ってるらしいけど、ここまで来れる探索者ならある程度の耐性なら無視できるでしょ」
”解説が適当すぎてなんの参考にもならない……”
”この子に言わせたら、大抵のモンスターは最弱になるんじゃないか?”
”むしろ、穂花ちゃんが強すぎるんだよなぁ”
「まぁ、倒したモンスターのことはもういいでしょ。それじゃ、次の特訓相手を探しに行くわよ!」
これ以上スライムについて語ることもないし、私は気持ちを切り替えるように声を上げるとそのままダンジョンをさらに奥まで向かって進んでいった。