とはいえ、私も完全に無傷というわけにはいかなかった。
風圧で吹き飛んだスライムの身体や振り払った触手の残骸が触れたことによって、私の身体はところどころ焼けたように溶けて煙を上げている。
特に制服なんかは、スカートやブラウスの裾なんかが激しく溶けて穴が開いてしまっていた。
”えっっっど”
”肌が白くていいっすねぇ……”
”お前ら、キモすぎだろw”
”真剣に戦ってる女の子をそんな目で見るなよな”
盛り上がるコメントとそれを諫めるようなコメントが、なんだか半ば口論みたいになっている。
そんな風に言い争うコメントたちに、私は少し冷めた表情で呟く。
「盛り上がってるとこ悪いんだけど、私は別に気にしないわよ。見られても減るもんじゃないし……」
全裸を見られてしまったとかなら話は別だけど、せいぜいお腹や下着の一部くらいである。
そもそも、見られて気にするようならこんなミニスカートでダンジョンに潜ったりしないわけで。
「だから、コメントのみんなも別に気にせず見てくれて構わないわよ。あっ、でも見たなら責任もってチャンネル登録はしなさいね」
”軽すぎだろ……”
”なんというか、もっとこう……。乙女の恥じらいとかはない感じですか……?”
「いや、だって……。これまでだってダンジョン攻略中に異性の前で平気で着替えたりもしてたし。今更じゃない?」
ダンジョンによっては、攻略するのに数日かかる場所もある。
そんな時はダンジョン内で休憩することもあるけど、そこに更衣室なんてものはない。
常にモンスターの襲撃に備えなければならない状況で目隠しを立てるのも面倒で、私の周りの女性は割と男性の前でも平気で着替えたりしていた。
むしろ、男性の方が気を使って見ないようにしてくれていた気さえするくらいだ。
「まぁ、私の恥じらいについては今はどうでもいいのよ。それより、まずはあのスライムをどうにかしましょう」
実際、見られても平気とはいえ制服を溶かされたのは割とムカついた。
修復スキルですぐに直せるとはいえ、可愛くて意外とお気に入りの一着なのだ。
「というわけで、修行は一時中断してこいつをぶっ飛ばします。みんなも、今後の参考になるかもしれないからよく見てなさい」
”絶対参考にはならないけど、分かりました!”
”そもそもこんなデカいスライムと戦う機会なんてないと思うけど、覚えておきます”
含みのある言い方のコメントを一瞬だけ睨みつけると、私はその視線をスライムへと向ける。
「さて、それじゃあ覚悟しなさい」
それだけ言って、私はさっきまでと同じようにまたしてもスライムに向かってまっすぐ駆け出した。
さっきまでと違うところといえば、迫りくる触手を
どれだけ絡まれて肌を溶かされようと意に介さず、ただひたすら前に向かって進み続ける。
溶けては修復し、修復しては溶かされてを繰り返しながらスライムの身体に肉薄した私は、そのままその身体の中へと自らの意思で飛び込んでいった。