「あっ、そういえば配信に映っちゃってますけど大丈夫ですか? もしダメなんだったら、すぐに切りますけど……」
「いえ、全然大丈夫ですよ。リンリンちゃんの配信に出られるなんて、光栄です!」
「むしろ、俺みたいなむさ苦しい男が映っちゃって申し訳ないくらいですよ!」
そう言いながら、男性は少しでもが書くから外れようとするみたいに私たちから距離を取っていく。
「いや、別に私の配信って男子禁制なわけじゃないですよ」
アイドル売りしてるわけでもないし、それに穂花ちゃんと出会う前にも何度か男性とコラボしたりもしていた。
その時だってコメントはそれほど荒れてなかったし、問題ないだろう。
そう考えながらも、少し心配になった私は視線だけをコメントへ向ける。
”まぁ、今さらやね”
”羨ましいっちゃ羨ましいけど、だからってダンジョンの中層まで凸しようとは思わないよね”
”むしろ俺的には、中層の奥に行けるくらいの探索者がリンリンのファンだってことに感動してる”
”とは言え、ハーレムパーティみたいになってる男くんはクソ腹立つ”
どうやら、コメントもおおむね好意的に受け入れてくれているみたいだ。
一部に過激な発言がある気がするけど、それは見なかったことにしよう。
と思っていたら、むしろ張本人である男性がそのコメントに対して口を開いた。
「いやいや、勘違いしないで! こいつらとはただの幼馴染で、そんな関係じゃないから!」
「そうそう! 私たち、ただ腐れ縁が続いてるだけなの。ねぇ?」
「う、うん。そうだね!」
三人そろってなにやら弁明しているみたいだけど、なんとなく甘酸っぱい雰囲気を感じるのは私だけだろうか。
”許せんな、これは”
”うーん、
”そもそもこんなに可愛い異性の幼馴染がふたりも居る時点で勝ち組なんだよなぁ”
「いや、マジでそんなんじゃないんですって!」
なおも否定を続ける三人を、ただただ温かい目で眺める私とコメントたち。
そうやって朗らかな空気に和んでいると、不意に私の背筋を嫌な予感が走る。
「っ!?」
その予感に弾かれるようにその場を飛びのくと、さっきまで私の立っていた場所へなにかが勢いよく突き刺さった。
”危なっ!?”
”なんだあれ? 黒い槍?”
”あんな攻撃するようなモンスター、中層に居たっけ?”
視界の端でコメントを確認しながら、私は驚きで高鳴る胸を落ち着かせるように小さく深呼吸をする。
「なんだっ!? モンスターかっ!?」
一瞬遅れて襲撃に気づいた三人が臨戦態勢に入り、それに合わせるように私も攻撃が放たれた方向へと視線を向ける。
「あれって……。もしかしてこの間の……?」
私たちから少し離れた、通路の先。
そこには、数日前に見たのと同じ黒い人影が立っていた。