あの襲撃事件が起こってから数日。
私は久しぶりに穂花ちゃんと別れてひとりでダンジョンへとやって来ていた。
というのも、管理局から穂花ちゃんに対してとある依頼があったらしい。
なんでも、東北の方のダンジョンでイレギュラーの兆候があるため、その調査を依頼されたのだとか。
穂花ちゃんは嫌そうな顔をしていたけど、それはそれ。
なんだかんだ言って真面目で頼みごとを断れない性格の彼女は、渋々ながらその依頼を受けて当h区の方へと出張することになったのだとか。
「長くても一週間くらいで帰ってくるつもりだから、それまでひとりでおとなしくしてるのよ。危ないことしたら、ダメだからね」
出張に行く直前までそんな風に私を心配してくれる穂花ちゃんはなんだかお母さんみたいで、その言葉を聞いた私は思わず笑ってしまったほどだ。
今だってその時のことを思い出して笑顔を浮かべながら、私はひとり配信の準備を終わらせるとカメラを起動させる。
宙に浮いたカメラが目の前で配信を始めたのを確認して、私は満面の笑みを向けながら声を上げる。
「こんりんりーん! 今日は久しぶりのひとり配信だよー!」
”こんりんりーん!”
”穂花ちゃんは居ないの?”
”ついこの間までこれが普通だったはずなのに、もはや穂花ちゃんが居ないとちょっと物足りなくなってる自分がいる”
”慣れって怖いね”
「ホントだねー。私も、穂花ちゃんが居ないとなんだか心細い気がするよ」
コメントに同調するように頷きながらも、それではいけないと気合いを入れるように拳を握る。
「でも、それやダメだよね。私だって、いつまでも穂花ちゃんの後ろで守られてるわけにはいかないもん。隣に立って、一緒に戦えるくらい強くならなくっちゃ!」
そのための修行として、今日は一人でダンジョンにやってきたのだ。
腰に佩いた剣を抜きながら、私はさらに言葉を続ける。
「というわけで、今日はガンガン戦っていくよ! 目標は、今までできなかったソロで中層の突破。穂花ちゃんとの修行の成果を、みんなに見せてあげるね」
”頑張れー!”
”ソロで中層突破したら、ランクも上がるかな?”
”今日は穂花ちゃん居ないから、無理だけはしないでね”
”危なくなったら、ちゃんと逃げるんだよ”
コメントでは、私の活躍に期待する声と心配の声が半々くらい。
そんなコメントのみんなを安心させるように、私は努めて明るい声を上げる。
「大丈夫っ! 私だって強くなってるんだから、絶対にやり遂げてみせるよ!」
そのまま視線だけをカメラの外に向けると、そこから接近しようとしていたモンスターへと魔法を放つ。
直撃とともに霧となって消えるモンスターを眺めながら、私はカメラに向かって拳を突き立てる。
「さぁ、張り切って言ってみよー!!」