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第50話

 ”ところで、リンリンって剣はどれくらい使えるの?”


 一通り盛り上がりも落ち着いたところで、ふとそんなコメントが私たちの目に留まった。

「……実は、今まで剣どころか武器を使って戦ったこともほとんどないんだよね。だから、これから配信を通して私の成長を楽しんでもらえると嬉しいかな」

 少し照れくさそうにはにかみながら、凛子はそう言って私の方へ向き直る。

「なんと言っても、私には穂花ちゃんっていう最高の師匠がいるからね! 剣も買っちゃってもう後戻りもできないし、一生懸命頑張るよ!!」

「まぁ、私もあんまり剣は扱ったことないけど、それでも基礎くらいは教えられるからね。その後のことは、ちょっと私に考えがあるから」

「考え? それって私にも秘密なやつかな?」

 そう言って首を傾げる凛子に、私は軽く微笑みながら答える。

「うーん、別に言っちゃっても良いんだけど……。でも、秘密にしておいた方が面白いかな」

「そっか。じゃあ聞かないでおくね。リスナーさんたちも、私と一緒に楽しみにしておこうね」


 ”楽しみに了解”

 ”Sランクが考えることとか、想像できなくてちょっと怖いな”


「怖くなんてないでしょ。別に普通よ、普通」

 心外なコメントに言い返した後、私は気を取り直して凛子へと視線を向ける。

「それじゃ、雑談はこの辺にしてさっそく訓練を始めましょうか。最初は安全に配慮して、上層のモンスターを中心に狩っていくわよ」

「うん! よろしくお願いしますっ!」


 ”さすがに最初は上層からなのね”

 ”穂花ちゃんのことだから、普通に中層とか下層に連れて行くのかと思ってた”


「あのねぇ……。いくらなんでも、そこまでスパルタじゃないわよ。死んじゃうような難易度の訓練は、初心者のリンにはまだ早いわ」


 ”『まだ』早いのね”

 ”まだってことは、いずれは……”

 ”リンリン、強く生きて……”

 ”というか、そもそも死んじゃうような難易度って……。それはもはや実戦っていうんじゃないの?”


 好き勝手に騒ぐコメントたちを見ない振りしながら、私は意識を集中させて周辺を索敵する。

 そうして気配のする方へと進んでいくと、そこには三匹のコボルトが居た。

「うん、あれならちょうどいいわね。それじゃまずは、あの三匹と戦ってみなさい。もちろん、魔法はなしよ」

「えっ!? いきなり三匹同時に相手するの?」


 ”やっぱりスパルタじゃねぇか”

 ”そりゃあリンリンちゃんだってびっくりするよね”

 ”コボルト三匹とか、普通にちょっと厄介だろ。あいつら連携して襲ってくるし”


「大丈夫よ。三匹程度なら連携されても大したことないから。それに、万が一危なくなったらちゃんと助けてあげるわ」

 驚く凛子と心配するコメントたちを安心させるように答えると、しばらく逡巡した凛子はやがて決心したように大きく頷いた。

「……分かった。やってみるよ!」


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