「それで、もうひとつの嬉しいお知らせなんだけど……」
しばらく褒め合いを続けた私たちは、改めて視聴者に向かって話を再開した。
もったいぶるような態度で画面の外に手を伸ばした凛子は、そこに置いてあった剣を掴むと見せつけるようにカメラへと差し出した。
「じゃーんっ!! なんと私、自分専用の武器を買っちゃいましたー!!」
”おぉーーっ!!”
”リンリンちゃん、武器も使うようになるのか!?”
”魔法だけじゃなくて剣まで使えるなんて、ついにパーフェクトリンリンになるって、こと!?”
”専用ってことは、鍛冶師に頼んで打ってもらったってことでしょ? お高かったんじゃない?”
「まぁ、正直に言って今まで見たことないくらいの値段で目玉が飛び出すかと思ったけど……。でも、後悔はしてません! だって、私専用の剣だものっ!」
どうやら彼女にとって専用と言う響きがかなり琴線に触れたらしく、剣を手にしてからというもの執拗に連呼している節がある。
もちろん彼女にはそんな自覚はないようで、今も楽しそうにカメラに向かって自慢を続けている。
「どうどう? 見てよ、この刀身。すっごく綺麗じゃない?」
鞘から抜けばその刀身はうっすらと青白く染まっていて、それがダンジョンのわずかな光を反射してキラリと光っていた。
”なんか、素人目に見ても普通じゃない雰囲気なんだけど……”
”おい、それってまさか……”
”絶対に普通の金属じゃない色合いしてる件について”
「ふっふっふっ、やっぱり分かっちゃうかぁ。みんなも言ってる通り、実はこれって普通の金属じゃありません! なんとこの刀身には、ミスリルが混ぜこんであるらしいんですっ!」
”ミスリルッ!?”
”ダンジョン産の希少金属じゃん! 確か、金より高値で取引されてるって聞くけど”
”そんな貴重な物が使われてるなんて、マジでいくら掛かったんだよ”
”どう考えてもDランクが買えるような武器じゃなくて草”
「まぁ、お金の件はね。この間のイレギュラーの臨時収入が全部吹き飛んだってくらい、かな。それ以外にも最近はちょっと入り用だから、頑張って稼がないと……」
「こらこら。それは配信で言うようなことじゃないでしょ。視聴者に集ってるみたいで、みっともないから止めなさい」
剣の値段のことを思い出したのか急にテンションが下がってしまった凛子に思わず注意すると、ハッとした表情を浮かべた凛子は気を取り直して笑顔を浮かべた。
「そ、そうだよね。ごめんね、みんな。今のはそういう意味で言ったんじゃなくて、探索者として頑張らなくちゃって意思表示だから!」
”大丈夫、分かってるよ”
”むしろリンリンちゃんのためなら、いくらだって払いますけどね”
”俺たちがリンリンちゃんと、ついでの穂花ちゃんも養ってると思うとちょっと興奮するよね”
”↑さすがにキモすぎだろw”
「養ってもらわなくてもけっこうよ。私は自分で稼いでるし、いざとなったら私が凛子を責任もって養うから」
「穂花ちゃん……。ありがとうっ! 大好きっ!!」
コメントの冗談に冗談で返すと、それに乗っかった凛子は嬉しそうに抱きついてくる。
”リンホノてぇてぇ”
”俺はこの光景を見るために生まれてきたのかもしれない”
”もう付き合ってるだろ、これ”
”むしろ俺たちのためにも付き合っていてくれ”
”穂花ちゃんになら安心して俺たちのリンリンを任せられるわ”
そしてそんな私たちのやり取りを見て、コメントたちもさらに盛り上がっていった。