『みね屋』へと一緒に武器を買いに行った日からさらに一週間後。
私と凛子は二人揃ってダンジョンへとやって来ていた。
と言うのも、つい先日になって凛子のための剣が完成したのだ。
「ふへへ、嬉しいなぁ……。早く試したいなぁ……」
そして凛子はと言うと、さっきから剣の鞘を愛おしそうに撫でながらニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「凛子。嬉しいのは分かるけど、少し落ち着きなさい。なんだか変態っぽいわよ」
「だって、初めての私専用の武器だよ! これが落ち着いていられるわけないでしょ!」
私の苦言もどこ吹く風。
興奮冷めやらない様子の凛子は、なおも嬉しそうに剣を見つめながら声を上げる。
「はいはい、分かったから。これから配信で、その剣をお披露目するんでしょ? だったら早く準備しちゃいなさい」
このままでは、いつまで経っても配信が始まらない。
そう考えて急かすように言葉を掛けると、はっとした表情を浮かべた凛子は大きく頷いた。
「そ、そうだね! みんなにも早く見せてあげたいし、急いで準備するね!」
慌てた様子でテキパキと配信の準備を始めた凛子に、私は思わず苦笑を浮かべてしまう。
「本当に、あなたって面白い子ね」
「えへへ、そうかなぁ?」
カメラの設定をしながら、私の呟きを聞いた凛子は嬉しそうに笑う。
その姿がまた可愛らしくて、思わず私の口角も緩んでいく。
「ええ、本当に可愛いわよ。私、あなたのそういうこところ好きだわ」
緩んだ口元とともに思わずそんな言葉が漏れてしまうと、凛子の身体がビクッと震える。
「すっ!? えっと、その……。私も、穂花ちゃんのことは好きだよっ!」
顔を真っ赤に染めながら大きな声でそう答えた凛子は、すぐに私から視線を逸らすと手のひらで自分の顔を仰ぐ。
「うぅ……。私ってば、なに言ってんだろ。絶対そういう意味じゃないって、分かってるのに……」
どうやら混乱してしまったらしい凛子は、しばらくひとりでブツブツとなにかを呟いた後で落ち着くためにか小さく深呼吸を始めた。
なんどかそれを繰り返した後、やがてこっちを振り返った凛子の顔はもういつもの彼女に戻ってた。
「よしっ、切り替えてこう! カメラの準備も終わったし、すぐに配信を始めちゃっても大丈夫かな?」
「ええ、私はいつでも大丈夫よ」
私の肯定に頷きで答えた凛子は、カメラの電源を入れると急いで私の隣まで駆け寄ってくる。
その間にカメラはいつも通り空中へと飛び上がり、そして私たちの正面で動きを止めた。
そんなカメラがきちんと配信中になっていることを確認して、凛子はカメラに向かっていつも通りの配信スマイルを浮かべながら口を開いた。
「こんりんりーん! さぁ、今日も配信を始めていこうと思いますっ!!」