「武器? でも、私って魔法使いだよ?」
私の質問に、凛子は不思議そうに首を傾げながら尋ね返してくる。
それは普通の探索者であれば当然に思えるような問いだけど、残念ながら彼女の目の前に居る
「魔法使いとはいえ、凛子は今までソロでダンジョンに潜ってたんでしょ? むしろ私としては、今までなんの武器も使ってこなかった方が信じられないんだけど」
常に前衛が一緒に居るならともかく、ソロなんだったらモンスターに接近されることだってあるだろう。
そういう時に、武器を持っていなくてどうやって対処してたのか不思議でならない。
「えっと、できるだけそういう展開にはならないように気を付けてたよ。それでもどうしようもない時はまぁ……。魔法で無理やりぶっ飛ばす、とか……?」
「力技すぎるでしょ。上層や中層の上部ならともかく、下層より下に潜るつもりならそんな危ない考えは止めなさい」
なんだ、魔法で無理やりぶっ飛ばすって。
いったいどういう思考回路をしていたら、そんなイカレタ発想を思いつくんだ。
「ともかく、凛子は魔法以外の攻撃方法を作るべきだわ。モンスターの中には魔法の効かない奴だっているし、それにこの間のイレギュラーだって最後は危なかったじゃない」
あの時、凛子の手元に武器があれば私の手助けがなくても自分だけでなんとかできたかもしれない。
「私が守ってあげられる時はもちろん全力で守るつもりだけど、いつだってそばに居てあげられるわけじゃないから。そんな時に、少しでも生存率を上げるためにも武器の扱いに慣れておいて損はないわ」
「うーん、それはそうだけど……。でも、前に挑戦した時に散々だったんだよねぇ。教えてくれた人が、から、『お前は才能がない』なんて言われちゃったし……」
「なにそれ、酷いわね」
どうやらそのせいで、彼女は武器に対して苦手意識を持ってしまったらしい。
「そんなの、自分の教え方が悪いのを凛子のせいにしただけでしょ。そこまで不器用って感じでもないし、そんな風に断言されるようなことにはならないと思うわよ」
「えへへ、そうかな……?」
予想外に褒められて少し照れくさそうにはにかむ凛子に対して、私はさらにその背中を押すための一言を付け加える。
「配信の視聴者たちだって、きっと凛子が武器を使ったら驚くわよ。最初は不格好でも、一生懸命に練習する姿を見せれば好感を持ってもらえるし、勇気だって与えられるかもしれないわ」
最後の一押しとばかりに声を掛けると、そんな私の言葉を聞いた凛子は長い逡巡の末に静かに首を縦に振った。
「……うん、分かった。やってみるよ!」
むんっと両手を握って気合いを入れた凛子に、私は思わず笑みを零してしまう。
「そうそう、その意気よ。頑張って練習して、才能がないなんて言った奴を見返してやりましょう!」