私たちが待ち構える中、通路の奥から現れたのは赤い肌をした小鬼の姿のモンスターたちだった。
「レッドゴブリンか。ちょっと数が多いけど、まぁ実力を試すにはちょうどいいわね」
ゴブリンの変異種であると考えられているレッドゴブリンは、一匹ずつなら
だけどうレッドゴブリンは普通のゴブリンに比べて知能が高い傾向があり、複数匹が集まればその脅威度は数段上がってしまう。
そして奴らは基本的に群れで行動していて、5匹以上の群れに遭遇してしまえばDランク探索者がパーティを組んでいても苦戦してしまう場合だってある。
そんなレッドゴブリン7匹が、私たちに向かって獰猛な笑みを浮かべながら対峙していた。
”やばっ、7匹もいるじゃん!”
”これはちょっとキツいんじゃない?”
”ゆうてゴブリンだろ? 雑魚モンスターじゃん”
”ゴブリンでも7匹相手はキツいって”
”リンリンちゃん無理しないで”
コメント欄も盛り上がっているのを確認した私は、おもむろに凛子へと視線を向ける。
「どう? いけそう? 無理だっていうなら、ちょっと数を減らしてもいいけど」
「ううん、大丈夫。これでも私、ソロでDランクまでやってきたんだから」
どうやら、心配は無用だったみたいだ。
うっすら笑みを浮かべながらレッドゴブリンの群れに集中する凛子に頷きかけると、私は彼女の邪魔にならないように少し距離を取る。
「それじゃあ、いきますっ!」
一言、そう言った彼女の身体から魔力が溢れ出す。
立ち昇った魔力は空中でその姿を変えると、やがて彼女の周りには何本もの炎の矢が生まれる。
「行けっ! フレイムアロー!」
その叫びとともに炎の矢は一直線にレッドゴブリンへと飛んでいく。
突然の魔法に驚いた様子を見せたゴブリンたちは、しかし次の瞬間には2匹のゴブリンが仲間を守るように前へと飛び出してくる。
そのまま身体全体で炎の矢を受け止めると、残りのゴブリンは仲間を盾にするようにその後ろへと隠れる。
やがて穴だらけになった2匹のゴブリンが倒れるが、その後ろからは無傷のゴブリンたちが一斉に距離を詰めようと駆け寄ってきた。
”やばっ!?”
”危ないっ!”
”仲間を盾にするって、そんなのアリかよっ!?”
コメント欄は凛子を心配する声であふれているが、当の本人はいまだに余裕の表情を崩さない。
自らを害そうと駆け寄ってくるゴブリンたちを冷静に見つめながら、彼女はまた
「ウィンドカッター! ストーンバレット!!」
同時に発動された不可視の風の刃と、いくつもの石の銃弾。
それらが吸い込まれるようにゴブリンへと襲い掛かると、奴らはまた仲間を盾にしてそれを防ごうとする。
「させないけどねっ! アイスエッジ!」
魔法を防ごうと身を寄せ合ったゴブリンたちの足元から、氷の棘が伸びる。
間を置かずほぼ同時に襲い掛かってくる3つの魔法に、ゴブリンたちはなすすべもない。
ある者は風に裂かれ、ある者は石に撃ち抜かれ、そしてまたある者は氷に貫かれる。
そうして動く者が居なくなったことを確認して、凛子は私を見てにっこりと微笑んだ。
「こんな感じですけど、どうでしたか?」