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第15話

「コラボって言っても、私は配信のことなんてまったく分からないわよ。それに、前にも言ったと思うけど私の戦い方は配信向きじゃないし……」

「そんなことないよ! あのイレギュラー配信の時も視聴者さんたちはかなり盛り上がってましたし、チャンネルBANもされてないんでサイト的にも無問題です」

「そりゃあ、そうかもしれないけど……」

 そもそも危険なダンジョンでの戦いを配信する以上、ある程度のグロは許容されているみたいだ。

 それにしたって私の戦い方は異常だと思うけど、むしろそういう普通じゃないところが配信に慣れた視聴者には受けるのかもしれない。

 そういう意味では、私を公式配信者にしようとした管理局の見る目は確かだったのかもしれない。

「いや、でもなぁ……。殴るだけじゃ魔法に比べて地味だし、すぐに飽きられちゃいそう」

「そこは私に任せて! なにを隠そう、私ってば魔法主体のアタッカーなんで!」

「なるほど。画面映えはそっちが受け持ってくれるってわけね」

 ……だったら、別に私は要らなくない?

 そんな疑問を、凛子は大きく首を振って否定する。

「いいえ! 穂花ちゃんは絶対必要です! 視聴者さんから待ち望まれてますし、そもそも魔法なんて使えなくても穂花ちゃんはめちゃくちゃ可愛いので立ってるだけで画面映え抜群だから!」

「はいはい。お世辞でも嬉しいわ」

 目の前に居るアイドル級に可愛い女の子からそう言われても、どう考えてもお世辞にしか聞こえない。

 凛子は頬を膨らませながら「お世辞じゃないのに……」なんて呟いてるけど、話が進まないから聞こえなかったことにしよう。

「ともかく、凛子としてはどうしても私を配信に引きずり出したいってことね」

「言い方が悪い……。けど、おおむね間違ってないかな。最低でも一回はコラボしてほしいし、できればそのまま新メンバーとして一緒に配信を続けてほしいと思ってるよ」

 自分の希望を言い切った凛子は、真剣な表情を浮かべながら私の答えを待っている。

 その視線には期待と不安が入り混じっていて、しばらく無言で考えを巡らせた私は小さくため息を吐いて口を開いた。

「……はぁ、分かったわ。とりあえず一回だけ、コラボしてあげる。その後どうするかは終わってから考えることにしましょう」

 なんだかんだ言って、どうやら私は彼女のこういう顔に弱いらしい。

 私の了承の言葉を聞いてぱぁっと花が咲いたように笑顔を浮かべる彼女を見ていると、私も自然と笑みがこぼれてしまう。

「やったぁ! ありがとう!!」

 全身で喜びを表現しながら手を握ってくる彼女を見て、私はただしょうがないと苦笑するのだった。


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