「それで、いったいどういうつもりで私に会いに来たの?」
あの後、周囲から浴びせられる多種多様な視線に耐えながら学校を飛び出した私たちは喫茶店で向かい合っていた。
適当に注文を済ませた私が問いかけると、彼女は少し気まずそうに私を見つめてくる。
「えっと、そのぉ……。まずは、ごめんなさい! やっと出会えた喜びで、私ちょっとテンションがおかしくなっちゃって……」
店員の持ってきたコーヒーを受け取りながら、彼女は申し訳なさそうに頭を下げる。
「まぁ、確かにかなり興奮してたみたいだったわね」
同じように店員からコーヒーを受け取って、私は教室でのやり取りを思い出す。
同時にあの時のクラスメイトからの視線を思い出して、明日からの学校生活にいくばくかの不安を覚えてしまう。
そうやって遠い目をしていると、目の前で美味しそうにコーヒーを飲んだ少女は再び私を見つめながら口を開く。
「その、そういえば自己紹介がまだでしたね。
「へぇ、凛子だからリンリンなのね」
「あはは……、ちょっと安直ですよね」
そう言って照れくさそうに笑みを浮かべる彼女──凛子に、私はゆっくりコーヒーを味わいながら答える。
「別にいいんじゃない。むしろそれくらい安直なほうが、私としては親しみがあって好きよ」
「そ、そうですか? そう言ってもらえると嬉しいです!」
本当に嬉しそうに笑う彼女を見ていると、こっちも自然と笑みがこぼれてしまう。
きっとこう言うところが、彼女の魅力なのだろう。
「私の名前はもう知ってると思うけど、一応改めて自己紹介ね。不知火穂花、これでもSランク探索者やってるわ」
「はい! 知ってます! 助けてもらった後、管理局のサイトを見て確認しました!」
そう言いながら、凛子は瞳をキラキラと輝かせながら身を乗り出してくる。
「私と同い年なのにSランクで、しかもめっちゃ強いなんて。私、不知火さんのことすっごく尊敬します!」
「そ、そう……。それはありがとう……」
あまりの勢いに少し引き気味に答えると、ハッとした表情を浮かべた彼女は慌てて椅子に座りなおす。
「……ごめんなさい。また興奮しちゃってました」
頬を赤く染めながら小さく謝る彼女だったけど、しかしすぐに顔を上げるとまっすぐに私を見つめる。
「でも、それくらい私は感動したんです。不知火さんの強さに憧れて……。私もあんな風になりたいって、そう思ったんです」
そこで一度言葉を切ると、彼女はその瞳に決意の火を宿しながら再び口を開いた。
「だから、私を不知火さんの弟子にしてください!!」