「私はSランク探索者の
胸ポケットからライセンスを取り出しながら用件を告げると、男たちは小さく首を傾げる。
「はぁ? なに言ってんの?」
そのまま私のライセンスを覗き込むようにして確認すると、男たちは薄ら笑いを浮かべながら口を開く。
「いやいや、嘘つくなよ。イレギュラーなんて、そうそう起こるもんじゃないだろ。なにこれ? もしかして、ドッキリとか?」
明らかに私のことを馬鹿にした様子の男たちは、そのまま近くに浮かぶカメラに向かって笑いかける。
「リスナーのみんなも、ビックリだよなぁ。まさか、いきなり飛び入りでドッキリを仕掛けてくる女が居るなんて思わないもん。言っとくけどこれ、仕込みなんかじゃないからね」
勝手に喋って勝手に盛り上がる男たち。
ひとしきり盛り上がった彼らは、やがて改めて私へと視線を向ける。
「そもそもさぁ、アンタ本当にSランクなのか? ランク偽装は重罪だぜ?」
……こいつら、馬鹿なんだろうか?
わざわざライセンスまで提示して声をかけているのにそんなことを言われるなんて考えてもいなかったせいで、私は思わず絶句してしまった。
そんな私の様子をどう都合良く解釈したのか、男たちは勝ち誇ったような表情を浮かべる。
「ほら、図星をつかれたから黙っちゃった。駄目だよ、ランク詐称なんかしたら。管理局に通報されたら、ライセンス剥奪されちゃうんだから」
「いや、私は別にランク詐称なんて……」
「はいはい、言い訳は要らないから。これ配信してるし、証拠はしっかり残ってるからね」
こちらの言い分など聞こうともせず、一方的に捲し立てた男たちはそう言ってゲラゲラと笑う。
どうやら彼らの中で、もう私がランク詐称をしていることは確定しているみたいだ。
「アホらし……。ともかく、警告はしましたからね。これでなにかあったとしても、それは自己責任ってことでよろしく」
もうなんだか面倒臭くなった私はそっけなくそう告げると、彼らから少し離れた場所にいる少女へと視線を向ける。
「それで、あなたはどうする?」
「あ、私はすぐ避難しようと思います。配信も、切った方がいいですよね?」
どうやら彼女もダンジョン配信をしていたらしく、その手にはカメラが握られていた。
「そうね、そうしてくれると助かる……っ!?」
そう言い終わるより早く、突如として襲ってきた嫌な予感に私の身体は反射的に動いた。
少女を守るように背中に隠しながら、両手で近くにいた男たちの首根っこを掴むとそのまま背後に向かって投げ捨てる。
次の瞬間、突然現れた巨大なカマキリの鎌がさっきまで男たちの立っていた地面に突き刺さっていた。