「よし、これで終わりっと」
最後のモンスターの脳天を叩き潰した私は、一息吐くようにそう呟いた。
「なんだか、いつもよりモンスターが多くなってる気がする。もしかしなくても、これってイレギュラーの影響よね」
だとしたら、少し急がないとまずいかもしれない。
なんとなく嫌な気配を感じる方向へ向かって、私は道中のモンスターを叩き潰しながら進んでいった。
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どんどん増えてくるモンスターを適当に駆除しながらダンジョンを進んでいると、不意に遠くから話し声のようなものが聞こえてきた。
「もしかして、まだ探索者が残ってる? ……面倒だけど、避難するように伝えなきゃ」
管理局からも避難誘導してくれと頼まれているし、なによりあっちはイレギュラーの発生源だと思われる方向だ。
万が一ここでスルーしてしまえば、あの声の主たちが危険に晒されてしまうかもしれない。
いくら探索者の身の安全なんて自己責任だとはいえ、気付いてしまった以上は見捨ててなにかあっては寝覚めが悪い。
「まぁ、声を掛けるくらいはしておきましょうか」
あまり気は進まないけど、諦めたように小さく頷いた私は声のする方向へと歩を進める。
やがて見えてきたのは、ダンジョンにはあまり似つかわない派手な格好をした二人の男と、そんな彼らとは対照的にしっかりと装備を整えた私と同じくらいの歳の女の子だった。
「いやぁ、それにしても今日はなんだかモンスターが多いねぇ。まっ、その分リンリンちゃんにカッコいいところをアピールできて、俺たちは助かるけど」
「だよなぁ。中層のモンスターなんて、いくら束になって来ても俺たち
「は、はーい。でも、私もそろそろ戦いたいなぁって……」
なにやら、宙に浮かんでいるカメラに向かってキメ顔で笑う男二人と、そんな彼らに若干ひきつった顔で笑う女の子。
どう考えても女の子は彼らの言動に引いてしまっているのに、どうやら男たちは気付いていないらしい。
個人的にはあまり関り合いたくない感じの集団だけど、ここまで来てやっぱり放置する訳にはいかない。
「すいません。ちょっといいですか?」
できるだけ穏やかな口調で声をかけると、男の一人が私に視線を向けた。
「はぁ、なに? ……って、可愛い女の子じゃん! もしかして、俺たちのファンかな?」
「いや、全然。あなたたちのこと、そもそも全く知りませんし」
なにやら妙なことを言い出した男の言葉を否定すると、彼らは露骨に表情を歪めた。
「なんだよ、それ。俺たちを知らないとか、もしかして流行とか興味ない感じ? 今時流行らないよ、そういうの」
なんだか機嫌の悪くなった男たちの馴れ馴れしい態度に、私は思わず眉をひそめる。
マジでなんなんだ、コイツら。
声をかけたことを少し後悔した私は、ともかく話を切り上げるためにさっさと用件を伝えることにした。