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第16話 語られる真実…

「去年の誕生日…。」

未央奈は悠理を見て、

「遥香と約束したけど、会えなくなったでしょ?」

と訊いた。


「は、はい…。

未央奈さん達と旅行に行ったんですよね?」

悠理は、未央奈を見た。


「実は、あの日、遥香は手術をしたの…。

手術をすれば半年くらいは長生き出来るから…。」

と言った。


「えっ…でも、お土産…貰いました…。」

と、悠理は言った。


「岡山のトマトのゼリーの事?」

と、未央奈は訊いた。


「はい。」

悠理は頷いた。


「ごめんなさい…。」

未央奈は頭を下げて、

「あれ、私がネットで買ったの…。」

と言った。


「み、未央奈さんが?」

と、悠理は訊いた。


「ええ、悠理ちゃんとの電話で遥香が咄嗟に【岡山に旅行に行く】って言ったから。」

と、未央奈は答えた。



━━2018年の7月のある日…。


「みなみさん…」

と、遥香はみなみに声を掛けた。


「どうしたの?」

みなみが遥香を見た。


━━ここは、みなみが勤務している宇都宮市内の総合病院の個室…。


遥香は、ベッドの上で身体を起こして座っていた。


部屋には、みなみと未央奈もいる。


「私…。」

遥香は二人を見て、

「手術…したい…。」

と言った。


「ほ、本当に…。」

未央奈は遥香を見た。


「うん…。」

遥香は頷いた。


「でも、どうして…?」

みなみは遥香を見て、

「あんなに手術を嫌がっていたのに…。」

と言った。


「うん…。」

遥香は頷くと、

「どうせ手術してもほんの数ヶ月長生き出来るだけだから…。

手術するだけ無駄だって思ってた…。」

と言った。


━━遥香は、自分が心臓病である事を知っていた。

手術しても治らない、悪性である事も知っていた。

ただ、手術をすれば、数ヶ月くらいは長生き出来るという、延命治療的な手術を勧められていた。


遥香は、

『どうせ助からないのなら、手術をするだけ時間と費用の無駄』

と、手術を拒んでいた。


━━それが急に『手術を受けたい』と言い出したから、二人は驚きを隠せなかった。


「もしかして…。」

未央奈は、

「この前会った、悠理ちゃんって子がきっかけ?」

と訊いた。


━━そう、悠理達と遥香達がオリオン商店街で会った数日後の事である。


「うん。」

遥香は頷いて、

「すっごく、可愛くていい子なんだ…。」

と言った。


「可愛い子だったね。」

未央奈が答えた。


「私…。」

遥香は少し間を置いて、

「悠理と…一秒でも多く…一緒にいたいって…思ったんだ…。」

と言った。


「遥香ちゃん…。」

みなみは、遥香を見つめた。


「だから…いいかな…?」

と言って、遥香は未央奈を見た。


「ん?」

未央奈も遥香を見た。


「お姉ちゃん…。」

遥香は薄ら涙を浮かべながら、

「私…もう少しだけ…長生き…しても…いいかな…?」

と未央奈を見つめた。


「あ、当たり前でしょ!」

と、未央奈は言った。


「手術の費用とか色々掛かって、迷惑掛けちゃうけど…。

それでも…いいの…?」

と、遥香は泣きながら言った。


「迷惑な訳ないでしょ!

そんな事言ってると本気で怒るよ…。」

と、未央奈は言った。


「ありがとう…お姉ちゃん…。」

遥香は、涙を拭って言った。


「わ、私…ちょっと、飲み物買って来るね…。」

未央奈はみなみを見て、

「みなみ、ちょっと、遥香の事を…お願いね…。」

と言った。


「うん、分かった。」

みなみが答えた。



━━病院内、自動販売機コーナーにあるソファー。


「ごめんね…遥香…。」

未央奈は泣いていた。


「私には…手術を受けさせてあげるくらいしか出来ない…。

それも…少し余命が延びるだけの…。

もっと…もっと…長生き…して欲しいのに…。」

未央奈は泣きながら言った。


まだ17歳の妹に、

『長生きしてもいいかな?』

と、申し訳なさそうに言わせてしまった自分が情けなかった。

不甲斐ないと思った。

自分が無力でちっぽけな人間に思えてきた。

泣いても泣いても、涙が止まらなかった。



━━そして、2018年8月8日。

遥香は手術を受けた。


延命治療的な手術は成功して、半年くらいだが、遥香の余命は伸びた。


━━悠理は未央奈から、遥香の手術の話を聴いた。


「遥香はね…。」

未央奈は悠理を見て、

「手術をしなかったら、去年のクリスマスまで、生きられるか…分からなかったの…。」

と言った。


「え?」

悠理は驚きを隠せなかった。


「でも、悠理ちゃんと一秒でも多く一緒にいたいっていう想いが…。」

未央奈は再び涙目になりながら、

「遥香を…今日まで生かしてくれたの…。」


「は、遥香…。」

悠理は、未央奈から話を聴いて、涙が止まらなかった。

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