目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第7話 8月8日の約束…

悠理と遥香は、二人でオリオン通り商店街に来ていた。


先日、綾乃といる時は、お互い用事があったので、軽い挨拶程度で別れてしまったが、今回は、二人で待ち合わせして遊びに来ていた。


悠理は、オリオン通り商店街の雰囲気が好きだった。


新しい感じの店も増えているが、レトロな感じもしっかり残っている…。


石畳独特の感覚も歩いていて心地良かった。


━━その時…。


一人の外国人が、困ったようにキョロキョロとしていた。


「あの人、何か困ってるのかな?」

と、遥香が言った。


「うん。」

と悠理は頷いた。


「でも私、英語苦手だしなぁ…。」

と遥香は悠理を見て、

「悠理は、英語話せる?」

と訊いた。


「少し…なら…。」

と、悠理は答えた。


「悠理、助けてあげたら?」

と、遥香が言った。


「うん。」

と悠理は頷いた。


━━二人は、その外国人に歩み寄った。

そして、悠理は流暢な英語で会話をした。


外国人は、問題が解決したらしくお礼を言って去って行った。


「……。」

遥香は、ポカンとしていた。


「どうしたの?」

と、悠理が訊いた。


「悠理、すごーい!!」

と、遥香は驚いていた。


「あ、ありがとう…。」

悠理は、照れ臭そうに答えた。


「あの人は何で困ってたの?」

と、遥香は訊いた。


「落し物をしたみたいで、近くの交番の場所が知りたかったみたい。」

と、悠理は答えた。


「悠理すごいね。

バイリンガルじゃん。」

と、遥香は感心していた。


「ありがとう。」

と悠理は言った。


「私、10歳くらいまで大阪に住んでたんだ。」

と、遥香が言った。


━━遥香は気付かなかったが、悠理は一瞬、ハッとした。


「だから私も、大阪弁と栃木弁のバイリンガルなんだ。」

と、遥香は悪戯っぽく笑った。


━━大阪弁と栃木弁ではバイリンガルとは言わない。


「バ、バイリンガルって…。」

悠理は苦笑した。



━━二人は、公園に場所を移した。

二人が出会った公園である。


その公園には、木製の屋根付きのベンチがあった。


二人は、そのベンチに腰掛けていた。


「私と悠理、同じ誕生日だよね?」

と、遥香が訊いた。


「うん。」

悠理は答えた。


「じゃ、その記念を残そうよ。」

と、思いついたように遥香が言った。


「記念…?」

と、悠理は訊いた。


「うん。」

と言って遥香は、バッグからサインペンを取り出した。


「それで何かするの?」

と、悠理は訊いた。


「ちょっとね。」

遥香は、悪戯っぽく笑って、柱へ何かを描き始めた。



【2001.8.8】と【YS & HI】と書いて、それをハートで囲んだ。


「落書きなんてして大丈夫?」

悠理は、心配そうに訊いた。


「ちょっとくらいなら平気でしょ。」

遥香は悪戯っぽく笑った。


「私達の誕生日だね。」

と、悠理は微笑した。


「うん。」

遥香は頷いた。


「でも、これだと…」

と悠理は言葉を濁した。


「どうしたの?」

遥香が訊いた。


「私達が…2001.8.8から…付き合い始めたみたい…かなぁ…」

って、悠理が言った。


「あ、ホントだ。」

と遥香は苦笑した。


━━それから二人は笑い出した。


「今年の8月8日、二人で出掛けない?」

と、遥香が訊いた。


「うん、いいよ。」

悠理は頷いた。


━━二人は8月8日に会う約束をした…。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?