目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第2話 地獄少女

地獄少女…。


いつからか悠理は、【地獄少女】と陰口を叩かれるようになっていた。


これは少女漫画のタイトルだ。

━━実際の漫画の地獄少女は、地獄少女と呼ばれる主人公が、怨みを持った人間と契約を結んで、代わりに怨みを晴らすという、ホラー要素の強い物語である。


━━悠理の場合は少し違う。


【地獄の使いのような少女】という意味から来ていた。


何故、そのような陰口を叩かれるようになったのか?



━━2018年4月のある日…。


東京都内にある私立乃木のぎ学園。


悠理は2年生になったばかりだった。


突然、3年生の先輩男子生徒から交際を申し込まれた。


相手は、野球部のエースで4番。

勉強も出来てルックスも良く、学園中の女子生徒から憧れの的の生徒だった。


しかし悠理は、断ってしまった。


別に、彼の事が嫌いな訳ではなかった。


理由は他に色々あった。


悠理は入学時にある出来事があって、それ以来、人と関わる事に消極的だった。



━━数日後…。


その先輩は、学校の屋上から身を投げた…。


乃木学園の野球部は強豪だったが、エースと4番打者を同時に失った損害は大きく、甲子園どころではなくなった。


その直後から、悠理が先輩を振った事が噂され始めた。


「先輩、自殺する数日前に2年4組の鈴本悠理って子に振られたらしいよ…。」


「えーっ!!」


「あんな格好良い先輩振るとか、頭おかしいんじゃないの?」


「絶対、変な子だよ。」


「何か暗いし。」


と、好き勝手言われ始めた。


特に相手が校内一の人気生徒だった為に、物凄い勢いで校内で噂され始めたのだ。


悠理が悪者という前提で噂された。


━━そして更に追い討ちをかけるように、

「あの子と一緒に乃木受けた友達、受験に失敗して自殺したらしいよ。」

とまで言われた。


━━事実だった。

悠理は、その事が原因で人と関わる事に恐怖を抱くようになったのだ。


「あの子に関わったら、死ぬんじゃないの?」

と、誰からともなく言われるようになった。


【関わった人を不幸にする女】


【地獄の使いみたいな子】


【地獄少女】


そんな流れで悠理は、いつの間にか【地獄少女】と陰口を言われるようになったのだ。


親友を失った哀しみは、一年経っても消えるはずもなく、悠理の心を蝕んでいた。


そこに追い討ちをかけるような、先輩の自殺に対する誹謗中傷…。


高校2年生になったばかりの16歳の少女には、残酷過ぎる程の学園生活だった…。


やがて悠理は不登校になり、部屋に引こもるようになった。


両親にも理由は言えなかった…。


━━2018年5月。

ゴールデンウィークの時に、栃木から従姉妹の綾乃が悠理の家に来た。


綾乃は、悠理の両親から不登校について相談を受けていた。


それで心配になった綾乃は、様子を見る為に悠理の家に来たのだ。


エステティシャンなので、祝日はなかなか休めなかったが、どうにか調整して一日だけ休みを貰って来た。


そこで、綾乃が悠理の両親にある提案をした。


「悠理ちゃんくらいの年頃は、学校で色々あると、行きたくなくなったりするから、いっその事、学校を変えたらどうかしら?」


「私が借りてるアパート、3LDKで一部屋空いてるから、悠理ちゃん一人ぐらいなら、私と一緒に住めますよ。」


という提案だった。


━━悠理と両親は、その提案を受け入れた。


乃木学園は倍率も高く、やっと合格できた学校なので、両親の本音は辞めて欲しくはなかったが、不登校になってしまっては仕方がない。


娘の将来を考えれば、取り敢えず高校だけは卒業して欲しかった。


「学校の手続きとか、色々準備とかもあるから、6月になったらおいで。」

と悠理に伝えると、綾乃は栃木へと帰って行った…。


これが、悠理が宇都宮に来た理由である。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?