目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
8月8日の約束…
8月8日の約束…
笹美月
現実世界青春学園
2025年02月24日
公開日
2.9万字
完結済
2018年6月のある日…。

二人の少女が出会った。


心に傷を負い、逃げるように東京から栃木に来た高校2年生の少女、鈴本悠理(すずもと・ゆり)。

そんな彼女が出会った少女、石森遥香(いしもり・はるか)

遥香と出会って、悠理の心に…。

第1話 プロローグ

「本当に…来ちゃった…。」

一人の少女は呟くように言った。


━━少女といってもそこまで幼くはない。

彼女は16歳で、高校2年生である。


ここは栃木県宇都宮市。

宇都宮駅の改札を出た所。

ある理由があって、その少女━━鈴本悠理すずもと・ゆりは宇都宮駅に来ていた。


2018年6月の事である。


━━鈴本悠理、16歳。

肩までの黒髪のショートがよく似合っている、身長163cmのスラッとした美少女だ。

アメリカのカリフォルニア州で生まれて、2歳頃までアメリカに住んでいた。

一度日本に戻ったが、両親の仕事の関係でまた、小学2年生から5年生までアメリカに住んでいたので英語はペラペラだ。


━━悠理は、宇都宮駅を出て西口広場へと向かった。

西口広場には、車で送り迎え出来るような車寄せのスペースがある。


そこで、悠理はしばらく待っていた。


《プップー!!》


突然、クラクションが鳴ったので、悠理は音のした方を見た。


パールホワイトのプジョー308CCが止まっていた。


左側のドアが開いて、中から女性が降りて来た。


「悠理ちゃん、こっちだよ。」

と降りて来た女性、菅井綾乃すがい・あやのは笑顔で声を掛けた。


━━菅井綾乃、22歳。

肩よりも長めの茶髪のストレートが似合う美女で、職業はエステティシャンをしている。

身長は161cm。悠理の従姉妹だ。


「綾乃ちゃん。」

と、悠理は綾乃の方へと向かって歩いた。


「いらっしゃい。」

綾乃は悠理に言った。


「お願い…します…。」

悠理は頭を下げた。


そして二人は車に乗り込んだ。



車は走り出した。


2012年式のプジョー308CC。

6速ATの左ハンドル。

今はルーフを閉じているが、オープンにも出来るクーペカブリオレだ。

エンジンは1600ccとそこまで大きくはないが、横幅が1820mmと広めなので、ゆったりと座れる。


左ハンドルなので、助手席は当然右側だ。

アメリカに住んでいた時は車の右側に乗った事もあるが、日本に戻って来て久し振りに右側に乗った悠理は、何だか落ち着かない様子。


「エステティシャンって、そんなにお給料良いの?」

と、悠理は訊いた。

悠理は別に車に詳しい訳ではないが、この車が高そうなのは、何となく分かる。


「ううん、そんなに良くはないよ。

月給24万くらいだよ。」

綾乃は運転しているので、視線は前を見たままで、

「これ、中古車屋で見付けたの。

一目惚れしてローンで買っちゃった。」

と悪戯っぽく笑った。



━━10分くらい走っただろうか?


車は、あるアパートの駐車場に停った。


「悠理ちゃん、着いたわよ。」

綾乃が声を掛けた。


「…うん。」

悠理は、小さく頷いた。


三階建ての鉄筋のアパートで、

Cinq Etoilesサンクエトワール】と書かれていた。


「ここの三階だよ。」

と、綾乃が言った。


二人はエレベーターで三階へと上がった。


三階の【302号室】が綾乃の部屋のようだ。


綾乃が部屋の鍵を開ける。


「どうぞ。」

と綾乃は、悠理を招き入れた。


「お邪魔…します。」

悠理は中に入った。


「玄関のすぐ横の洋室を使っていいからね。」

と、綾乃が声を掛けた。


「ありがとう。」

悠理は頭を下げた。


悠理は、その部屋のドアを開けてみた。


━━八畳ほどの広さのフローリングの部屋に、パイプベットとデスク、そして衣類をしまえるチェストが置いてあった。

クローゼットも付いている、シンプルだが使い勝手の良さそうな部屋だった。


「ゴメンね、あまり良いの用意出来なくて。」

と、綾乃が謝って来た。


「ううん、ありがとう。

でも、こんな広い部屋、使ってもいいの?」

と、悠理は訊いた。


「うん、自由に使ってね。

今日からここが、悠理ちゃんの部屋なんだから。」

と、綾乃が笑顔で答える。


「綾乃ちゃん、ありがとう。」

悠理は頭を下げた。


━━綾乃は、密かに思っていた。

(また、悠理ちゃんの笑顔が見たいな…)

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?