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14.第三幕 - 3

 廃工場の薄暗いアジト。

 冷え切った空気がノイズ混じりのモニターの光で一瞬だけ温かみを帯びる。

 セイレーン・ガイノイドたちに紛れるように潜入したアンドロイド、ヴァレリアから送られてくるデータが、アウローラ・エコーのメインPCに次々と送られてきていた。


「アストラ・エンターテインメント社内の潜入に成功。アクセスコード確認。セキュリティシステムの概要を転送する。

 防御プロトコルの解析に……ウウッ」


 パソコンに送られていたデータとヴァレリアの通信が途絶えた。


「ヴァレリアの通信ロスト」

「――ダリウス。君がリーダーとなってヴァレリア救出チームを直ちに編成してくれ」


 オペレーターの言葉にエルスは、ダリウスを呼び、命令する。


了解ヤー。エルス殿は?」

「悪いがここで待機する。イゾルテ、引き続いてヴァレリアとの通信を試みてくれ」

了解ヤー


 エルスの言葉に、イゾルテはレジスタンスのオペレーターと共にヴァレリアとの通信が再開できないか、探ることになった。


「――諸君。これから、同志ヴァレリアの救出作戦を決行する。場所はアストラ・エンターテインメント社ビルだ」

「参加メンバーは?」

「都市中心部でのデモンストレーションの妨害に成功したメンバーを中心にする」


 ミーティングルームでダリウスは言う。


「そうなると、二神ハルト、セラフィナ、アリアがコアメンバーとなるのですね」

「左様。二神ハルト殿、お願いしても構わないか?」

「もちろんですとも。アリアの修復も無事終わりました。あなたたちのおかげです」


 ダリウスの言葉に立ち上がって答えるハルト。


「他にもハルトたちに同行するメンバーを募りたい」

「それなら、僕も行こう」


 ノアが立ち上がった。彼の言葉に続いて、数人が名乗りを上げた。


「――よし。ならば行こう。セイレーン対策を忘れないように」


 □ ■ □ ■ □ ■


 ダリウス率いるレジスタンスメンバーは、アストラ・エンターテインメント社ビルの前に到着した。


「ヴァレリアのお陰で、アストラ・エンターテインメントのセキュリティがどうなっているのかは解析済みであるが、問題は侵入経路だ」

「ノア、どうなっている?」

「こちらを」


 ノアはダリウスたちに見えるようにアストラ社のセキュリティの様子を見せた。


「いくつか侵入経路はあるが、どこもかなり賢いAIを搭載したドローンが待ち構えている。

 手薄であると考えられるのは、裏口ぐらいなものだろう」

「ならば、私が裏口からの侵入経路を確保しよう。それぐらいならば、できるはずだ」


 戦闘形態になっているセラフィナは、同じガイノイドや強化サイボーグと共に、アストラ社の裏口へ回った。


『ハルト、やはりキハールが待ち構えていた。私たちがキハールを引き付ける。その間にハルトたちは裏口から侵入してほしい』

了解ヤー。頼んだぞ、セラフィナ」


 ハルトが耳元の通信デバイスでセラフィナに言う。


『私にお任せあれ』


 セラフィナたちがドローンを引き付けている間に、ハルトたちはアストラ社の裏口へと回る。

 アストラ社の外観はガラスと鋼鉄のタワーで、空中に浮かぶ青いホログラムの広告がノヴァ・シティの栄光を象徴しているかのようだった。しかし、内部は違う。


「ミッション――スタート」


 ダリウスの号令に、レジスタンスメンバーは険しい表情で応じ、突入を開始した。

 ハルト、ノア、ダリウスはハルトが開発したノイズを発生させる小型器具でドローンの動きを惑わせ、歩みを進めていく。


『ハルト、聞こえるか』


 ハルトの耳元の通信デバイスから、エルスの声が聞こえた。


『ヴァレリアの位置情報を特定することができた。これから端末に転送する』


 彼の小型端末に、ヴァレリアの位置情報が送られていた。


「レッスンルーム……か」

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