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エコーズ・オブ・リベリオン ~ 反逆者達の夜明け
エコーズ・オブ・リベリオン ~ 反逆者達の夜明け
鳴海真央
SFSFコレクション
2025年02月24日
公開日
3.4万字
完結済
ドーム都市「ノヴァ・シティ」。人工的な光や人工的な自然をもたらすネオン街を見下ろす超高層ビル群の中、巨大複合企業が全てを支配する世界。

アンドロイド技師の二神ハルトは、彼の工房で働く女性型アンドロイド・セラフィナと共に、企業の下請けとして静かに暮らしていた。
しかしある日、彼のもとに少女の肉体を持つ特殊なアンドロイド・アリアの修理依頼が舞い込む。
だが、そのアンドロイドの奥深くに隠されたプログラムには、ノヴァ・シティをより強く支配するための企業の恐るべき計画が刻まれていた。

企業の陰謀を知ったハルトは、地下に潜むレジスタンスと接触し、シティの解放を目指す戦いに身を投じる。
しかし、企業側もまた、人々を支配するためのプログラムを組み込まれたアンドロイドと電脳の監視網で彼らを追い詰めていく。
やがて明らかになるアリアの正体。レジスタンスたちはハルト、セラフィナ、そしてアリアの力を持ってそんな企業に対抗していく。
アリアは自身の力を理解したことで、勢いづいたレジスタンスたちは一大攻勢に出る。それは都市の未来を左右する大きな出来事であった。

ネオンが照らす戦場で、ハルトたちはシティの運命をかけた最後の戦いに挑む――。

1.序章 - 1

 辺りを照らすネオンの光がくすんだ金属壁に反射し、工房内を蒼白く染めていた。

 工房内には、様々な工具やデスクトップパソコン、ノートパソコン、量子回線が置いてあり、様々な機械部品も置かれている。

 二神にかみハルトは旧式のドローン修理に勤しんでいた。


「ったく。こんな時代にまだこんな骨董品アンティークを使っているなんてな。

 感心するしかないな。その粘り強さにはな」


 工具を握る彼の指先は煤で黒く汚れていたが、その動きに無駄はなかった。

 不意に、作業台の隅でセラフィナの声が響く。


「でも、こんな骨董品でも動けば誰かが助かるんでしょ?」

「そりゃそうだ。俺の手で動くなら、その価値はある」


 ハルトは苦笑いしながら言葉を返すと、再びドローンの中に視線を戻した。

 修理を終えたドローンのスイッチを入れて、工房内でドローンを浮かせてみる。

 ブーンという音を立てながら、垂直に飛び上がり、周囲を旋回するように動き出した。


「よし、終わり! セラフィナ、依頼主に修理が終わったと伝えてくれるか?」

了解ヤー


 量子回線で依頼主に連絡をいれるセラフィナ。


「さてっと……。他の依頼は……残ってないよな」

「そうね。これで最後よ」

「っはー……」


 大きなため息をつくハルト。


「ハイペリオンの傘下に入らないだけでこんなに待遇って悪くなるんかね?」


 ハルトの工房はノヴァ・シティの下層階層にほど近い上層階層の場所に構えている。

 二神家は祖先のケンイチが良心的なアンドロイド技師として有名だったため、ハルトもその例に及ばず、アンドロイド技師としてハイペリオン・グループ傘下の企業に招聘しょうへいされた。

 だが、二神家の家訓と彼自身の信念が理由でハイペリオン・グループ傘下企業から追い出されてしまう。

 なんとか上層階層に踏みとどまることができたが、扱いは下層階層の人間とあまり変わらない。


「その方が気楽なんじゃないかしら。自分の意志を曲げてまで機械人間ぎせいしゃを作らなくて済むんだから」

「それはそうだが。あまり迂闊なことを言うと、ハイペリオンから粛清されるからな」

「おっと。そうだったわね」


 ハイペリオン・グループ。

 ただのドーム都市の一つだったノヴァ・シティを発展させた巨大複合企業であり絶対的な支配者である。

 人工知能による監視システムが常に目を光らせているのだ。

 上層階層はそうでもないが、下層階層は地下に追いやられたことで憤りを感じる住民が多く、抵抗活動が盛んであることを、ハルトはニュースで知っていた。


「とはいえ、別に俺はセラフィナが組んでくれたプログラムのお陰で、スリアラーの目を逃れられている部分もあるがな」


 ハイペリオン・グループの監視システム『スリアラー』。

 ノヴァ・シティ全体を監視する人工知能であるが、ハルトの工房はスリアラーからすれば不明な場所という認識を持っているため、気づかれることはあまりない。


「――あら?」

「どうした、セラフィナ?」

「久しぶりにアンドロイドの修理依頼が来たわ」


 セラフィナが送られてきたメールをハルトに『投げて渡した』。


「……なんともまあ、きな臭いところからだぞ」

「……あぁ、たしかにそうね」


 ハルトとセラフィナが目にした宛先。

 それはハイペリオン・グループ傘下の企業『シンセノヴァ・バイオテック』からであり、依頼内容は女性型アンドロイドの感情プログラムに異常をきたしたので修復してほしいというものだった。


「んー……修復依頼の相場、わかってんのか、こいつら?」

「どういうこと?」

「報酬額が頭おかしいんだよ。なんだよ、このクレジット量。おかしいだろ」


 セラフィナがメールに書かれた報酬額を見つめる。


「ええ。そうね。ただの修復にこんなにクレジットをくれるのかしら」

「それに依頼内容もな。なんだかなって思うんだよ。読み上げるぞ」


『女性型アンドロイドの感情プログラムに異常を検知しました。

 ですが、こちらでは修復することができないと判断したため、上に判断を仰ぐと二神ハルト様に依頼せよとの通達で送らせていただきました。

 物品はこのメールの発信後、専用ドローンで数時間後にお届けする予定です。何卒よろしくお願いします』


「……ってな。ハイペリオン傘下の企業がアンドロイド修理できんから民間に依頼するっておかしくねぇか?」

「そうよね。なにかおかしいわね」


 ジリリ、とアラーム音が工房内に鳴り響く。


「――あれか?」


 アラーム音に気づき、工房の外に出たハルトが見ると、ドローンがなにかの荷物をぶら下げていた。


「こいつか。ありがとよ」


 荷物を受け取ったことを確認したドローンは、ブーンと何処かへ去っていく。


「セラフィナ! 手伝ってくれるか!」

了解ヤー


 セラフィナとともに荷物を運び出すハルト。

 工房内でその包みを開けると、確かに女性型アンドロイドだったが……。


「おい! これ、まだ子供じゃねえか!!」

「ハルト、どうしたの、大声を上げて……」


 ハルトの怒りの声が気になり、包みの中を見たセラフィナの顔が険しくなっていく。


「なんてこと……。こんな少女をアンドロイドにするなんて……」

「通りでおかしいと思った! クソッタレ共奴どもめ!! セラフィナ、俺の口座どうなってる!?」


 彼の怒号を聞いたセラフィナが、ハルトの口座を確認した。


「……支払われてる」


 セラフィナの青ざめたような言葉に、舌打ちを打つハルト。


「まあいい。報酬があるなら修復してやるよ。――セラフィナ、行くぞ」

了解ヤー

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