見送りの日。
車椅子のイエドは、まだ車輌が通らない早朝の道路を、自力で進んで港まで来ました。シノティラに付き添われながら東へ向かい、昇る朝陽を正面にして。
シェダフム港・西六番埠頭には、週一度の定期船、ムヘントバオル号が停泊していました。
その大きな船体の元に、フィサ、ユウエリマの二人は陽を背にして立っていました。
イエド、シノティラは二人の元に向かいました。
フィサは泰然と、そして何か言いたそうにイエドへ目を向けていました。すぐ横に立つユウエリマは、いつものように頭巾を
「来たか」フィサはイエドを見下ろして言いました。
イエドは何も言わず、強気な目つきで見返しました。
ユウエリマは
そして今度は、身を起こしてフィサに言い
「ぼくは困ったんだぞ。イエドに、『また来る』と言っていたんだから、嘘になったじゃないか」
すると、フィサは泰然と言い返しました。
「ユウエリマ。常時のイバ役は、もう止める
ユウエリマの表情は一転して
「
「……ぼく、そんなこと聞いてないぞ」ユウエリマは頭に手を当てながら言いました。
「ほれ、もうイバは止めだぞ? かれがそんな言い逃れをどうしてする。嘘を演じては、ならん! 作り話だろうと、それを
ユウエリマは、
頭巾に当てていた手で、そのまま頭巾を
「……
頭巾で
「ああ。でも、結構長く続けられた……。あんな冗談のような目標、とおっくに忘れていたぞ」イエドは言いました。
ユウエリマはまた
「登校できなくなったんだから、それは仕方ないわ。大変なことになって、それどころじゃなかったよ」ユウエリマは
「それはもう済んだんだ……だから、顔を上げろよ――!」
イエドが声を荒げて言いました。
それでもユウエリマは、顔を上げられませんでした。
イエドは、嘘でも芝居でもなく、本心からの思いを言いました。自分が目標を見失って
それだからこそ、ユウエリマの「それどころじゃなかった」という言葉が、イエドのことではなく、ユウエリマがイエドを心配して本人自身の目標どころではない、という言葉に聞こえたのでした。
ユウエリマには、自分を理由に後悔して欲しくありませんでした。
「……ユウエリマ。おれのことは心配するなって言ってるんだよ。おまえは本当の目標のために前進するんだ。ほら、思い出せるよ」イエドは
ユウエリマは、ゆっくりと顔を上げました。
そして前髪が海風に
フィサはその様子を見ていました。
「始めにっ、わしから発表しよう。わしの目標は、ユウエリマの主役の舞台で、共演をすることだ。それまでに、