イエドはその声の
すぐ横の通路には、大きな目をした猫のような顔の大人が、イエドを見下ろして立っていました。
船長は目を細め、横目でボクを
「きみは〝あの星〟を、イエドくんに見えるようになってもらうまで、しっかり教えなければ駄目だ。まあ、それはさておき、ボク。石油灯を
ボクは恐れていたことを聞いて、
「……船長。全部?」ボクは、ようやく声を
「コドさんが
イエドは、その猫顔が窓から射すような光に照らされていることに気付きました。舞台で集中照明を
「あなたが、この船の船長なんだ……」イエドは言いました。
船長は振り向きました。
「役目はそうだ。が、すまない、
イエドはリオノ船長と――確かに、人の手と握手をしました。
「さっきの声は、わたしの
「船長……」ボクは
ボクに背を向けたリオノ船長は聞こえず、あるいは聞こえないふりをして、言いました。
「手助けを頼もう、イエドくん。この部屋以外の器具の取り外しは
「船長、船長」ボクは弱く繰り返し、リオノ船長の外套をつまみました。
「何かね?」リオノ船長は振り向かず、例の細目でボクのその手を
「一つだけでもいい。ボクに譲って?」
「取り損ねたらもう手に入らない。そう教えたはずだがね。まあ、良しとしよう。イエドくん、石油灯を一つ取り外したまえ」
イエドはリオノ船長に言われるまま、通路で作業に取り掛かりました。
「これを取るぞ」イエドはボクに言い、ボクが
石油灯に届いているにも関わらず、手はその空間を掻き回すだけでした。
「しっかり
ボクはそわそわと困りました。目を閉じて思い出そうとしました。
「ご
リオノ船長は、ボクに聞こえる程度の声で言いました。
「ボク。〝あの星〟についても、納得できる表現で伝えることだ」
ボクは後ろめたそうに
そのとき、イエドの声が聞こえました。
「……取れた」
「……あっ、本当に?」
ボクは一気に喜び、立ち上がりました。
「ああ、良かった。早く渡して」
リオノ船長は、今度はイエドに
「見えてきたんだよ。これだ」イエドは、駆け寄るボクに差し出しました。
それは、まさにボクが知るコドの石油灯そのものでした。
ボクはそれを受け取ると、自分の
「ボク。確実に覚えて忘れるな」リオノ船長は、変わらない顔で言いました。
「うん、もうできたよ」ボクは手を後ろに組み、リオノ船長に振り向いて
「何をしたんだ? 消えてしまったじゃないか」イエドは、眉を寄せました。「もしかして、きみが取り込んだ?」
「ご名答だ。が、惜しい水準のものだ」リオノ船長は言いました。「ボクの言う〝
ボクは、元の席に座りました。
「おじいさんは、見方を変えてくれたの。それまで、明かりは一つ。おじいさんが少しずつ増やしてくれた」
ボクは星空を見ながら言いました。
「最初、あの星しかよく見えなかったけれど、周りを見るようになったのは、それからだったんだよ」
「さて、残りは取り払って構わないな?」リオノ船長は言いました。
石油灯は、
「良し。わたしは戻る。まもなく、
リオノ船長は扉を閉め、操舵室へ行きました。
イエドはそのまま通路に
船長であるリオノ・エノ――ここの物事を
「……イエド。座って、聞いてくれる?」ボクは言いました。
イエドが歩み寄りながら、ボクはようやく自分について話し始めるのでした。