天井の照明はまるで、列車の乗客が眠気に耐えてはまた目を開くかのように、光の強弱を繰り返しました。
イエドは窓の外を眺めていました。
コドが降りた今、船はどこへ向かうかを考えました。いつも同じ時間に浮いていたというこの飛行船は、イエドが来たとき動き出しましたが、
イエドは思いました。
どこへ行くんだ。おれをどこかへ連れて行こうとしているんだろうか。
イエドは、不安になりました。その目は
ボクは外を見つめ続けていました。その横顔も不安そうでした。
明暗の
イエドは暗さが
ところが、
「電球が切れたのかな?」イエドは言いました。
「え? 今、何て言ったの?」ボクは振り向いて
「電球。明かりが消えてるだろ」
「……あれのこと?」ボクは天井を指差しました。「あれは、コドおじいさんが取り付けてくれた
「コドさんが――」
イエドの目は、その
電灯は石油灯に形を変え、コドが腕を伸ばして石油灯を取り付ける光景がかすかに見えました。
「……ただの明かりにしか見えなかった。本当は石油灯だったのか」
「知ったらそう見えたでしょ?」ボクは言いました。「それに、明かりが消えたのは、おじいさんが降りたからだよ。もう油を足す人――灯火を守る人が居ないから、消えたんだね」
「そうなら、コドさんが取り付ける前はこんなに暗かったのか」イエドは見渡しながら囁きました。
「ううん、そうでもなかったよ。今だって、ほら――」ボクは窓の外に向きました。「あの星が、あんなに明るい。光がここへ向いているよ」
イエドは、どれがその星か見付けられませんでしたが、おそらくその星の光によって、ボクの後ろの壁はぼんやりと照らされていました。しかしイエドには、ボクが言うほど明るくは感じませんでした。
イエドはそれを不思議に思い、目を
「……あれ? ボク――きみの後ろ、
ボクは後ろを振り向きました。
「ボクには見えないよ。輪の形って具体的には?」ボクは目をきょろきょろさせて壁を見ました。
イエドは目を凝らすというより、何かを思い出そうとしながら光の輪を見続けました。
――小雨が降り続けるなか、陽が差している堤防の上に、誰かは座っています。
両足を堤防の
空には、その誰かを虹が
見えるはずのない真下から、虹が見えます。
そのままで誰かは、対岸の堤防に向かって呼びかけます。
「おうい、そっちはどうだあ?」と。
そして対岸の誰かは、同じように両足をぶら下げて、身を
その川には、虹が沈んでいます。
遠目で見ると、
そのままで対岸の誰かは、向こう岸の誰かに答えて言います。
「はあい、見えるよ」と。
片岸は虹を見て「綺麗な虹だ」と、もう
「虹なのに、随分と上まで
そして、「虹なのに、風に靡いている」――「虹なのに、水に揺らいでいる」と、それぞれ思います。
そして、互いに顔を正面を向き、顔を合わせるや
二人は意気投合を感じて笑い合います。
二人は、互いが同じ虹を見たのだと思い込み、同じような感想を持ったと感じたのでした。
結果として口をついて出た言葉は、首が凝ったことだったため、そして互いの心を確認しなかったため、その二人は真相を知ることなく、本当は大きな
どこを見て、本当は何を見て、何を思ったのかを知らないままなのでした――
イエドが昔どこかで、何度か
それを映している
「……互いに
何の
「……それとは