イエドは、自分がどこで何をしていたのか、それすらもわかりませんでした。
夢のまた夢の中に落ちてしまったのでしょうか。
暗くもなく、明るくもなく、白黒の
その中で、幼い子の声が聞こえてきました。
誰も、
誰もが遠くから見るだけで、どうしても本当の姿を見たい、とまでは思っていないさ。
本当の姿を見ようと近付けば、多分、焼かれてしまうから……。
そんなに近くでは恐ろしい星が、どうして遠くでは水晶のように綺麗な姿なのか。
これは何かに似ているかもしれない。
例えば、生きること……?
誰も、死んでまで本当のことを見ようとはしないよね。
本当に生きているときは、死を本気で考えられないかもしれない。
本当の死を見るというのは、実際に死ぬことをいうのだろうから……。
それじゃあ、死を本当には見ないで遠くで見ると、水晶星のように、それも綺麗に見えるのかな。
……ああ、死を遠くで見るということは、そうか、生きていることをいうんだ。
生きている今が、水晶のように綺麗——ということ?
遠くから見るんだから、
それでいいんだ、そうだよね……?
だから、死ぬことなんて考えないで、生きるんだ。
きっと、遠くにあるその星は、みんなが意識せずに行き着く何かなんだ。
ただ、その星を感じることが大事なんじゃないかな。
でも、感じ取るのは求めるものだけじゃない。
苦しんで恐れるのは、生きているから分かるんだ。
ああそうか、生きているときが苦しかったり恐ろしかったり……。
それじゃあ、みんなはいつもその星に近付いているんじゃないかな。
でも、生きているとき、何かを苦しませたり、
それも、生きている同士だから、苦しむ同士、
……あ、船長が言っていたこと、今なら分かる気がする。
自分が他の生命を食べることは、他の生命を苦しませることだ。
でも、そのおかげで生きる自分は、いつ苦しんだって
だって自業自得なのだから、苦しませた生命を食べたら、自分もいつか苦しむに決まってる。
何かに求めれば――たとえ意識してなかったとしても――、何かに起こったことが、自分にも求められているんだ。
食べられたりされなくても、自分が必ずいつか死ぬのは、いつか自分が何かに求めたことだから、いつか自分にも求められるのかもしれない。
みんなは何かのために苦しんで、自分のために生きて、生きるために何かを苦しませる……?
でも、善と悪のことは、分からないよ……。
何も食べるなとは、言えない。
脅しは悪だなんて……。
……あーあ……
いつも考えが、同じ所に行き着くよ。
こんな問いに、答えなんか求められない。
区別は要らない……ここには、要らないんだ。
ここからの眺めしか見えないせいかな。
……他には何も、分からない。
……だから、誰か、教えてほしい。
……誰か、起こしてほしい。
……誰か……どこかの――
誰か――
声は突然に、
イエドは、普段の夢から覚める時の、
イエドは座席で
「イエド。目が覚めた?」
ボクの声でした。
夢ではなく、夢のまた夢から覚めたのでした。
「……コドさんは?」イエドは目を開けて言いました。
ボクが微笑んで座っているのが見えました。
「うん、帰った」
ボクは、少し
「……でも、どこに帰ったんだろうね、おじいさん。……今、それを考えていたの。本を繰り返し見て、どこかに
イエドは、見覚えのある本に気付きました。しかし、その本は
「ああっ、分からない。おじいさんはどうして降りたんだろう……」ボクは頭を抱えました。