悲しそうに一瞬だけ、ボクの目は
「夢だって何かになるよ、そう思わない?」ボクは優しく言いました。
「現実を見て感じたりする心も、夢を見て感じたりする心も、同じ一つの心なんだよ。ボクは思う。本当に現実の方が夢より大事なのかってね。目が覚めていると、探し求めなくても現実がある。眠っていると、考えなくても夢を見る。それにね、現実と夢のどっちでも忘れものがあるから、大事さに違いなんかないんだ。本当だよ」
イエドは目を
どこにも翳りのない、光をどこからでも受けるように、大きく
イエドは、その瞳に
「イエド。きみはこの夢の中で立った。きっと、本当に立つ。現実で立ちたいと願っていたから夢でそうなった、ていう
二人は何か、同じような〝
イエドはボクを見つめ続けながら、ボクの声による言葉を思い出していました。
ボクはイエドを見つめ続けながら、イエドの心に
イエドは、初めて夢の中の〝時〟を感じました。その
しばらくして、ボクは
本が消えた
二人の座席は客車の
そこから人の
「何が起こったか気になるでな、ちょっくら見て来る」その声は篭っていませんが、
イエドは、
足音が聞こえる間もなく、扉が引かれて開きました。
暗い通路から、老人が歩き出てきました。とても高齢に見えますが、背は高く伸びていました。
ボクは見上げて言いました。
「コドおじいさん。ほら、見て。めずらしい現象だよ。イエドの思い出が表現したんだ」
コドは、近くがはっきり見えるまで
「ああん? どれ、どれ。……おお? こりゃあなんと!」
コドは窓が枝と葉で
「これが、イエドの思い出が表現したと言った現象かい? この枝、この葉。こりゃあめずらしい、イエドの枝に葉ぢゃないかい」
「おれはこの
「ああん?」やっとコドの目に、はっきりと両方のイエドが見えました。
「コドおじいさん」ボクは席から
「イエドは、さっき来たばかりなの」
「ああ、そうなんかい」コドはボクを見て言いました。
「
そして、コドはボクの座っていた隣に腰を下ろしました。ボクはコドが座ってから、
「……ぢゃが、わしは図鑑の絵でしか、イエドを見たことがない」コドは枝と葉を見て言いました。
「さ、イエドっちゅう少年や。お?」
コドは、繰り返して枝と葉、イエドに目を向けるのでした。
「うーむ……紛らわしいぞ。