イエドは居間と
イエドは振り向き、部屋の入り口に目を向けました。
そこに立っていたユウエリマは、イエドの
「……誰だ」イエドは、かすかに
イエドにとって、ユウエリマが来ることは、ありえないことでした。
「ぼくはユウエリマだよ」ユウエリマは、朗朗とイエドへ歩み寄りました。
「な――なんの用で来たんだ」イエドは庭へ顔を向けました。
「何って、
「わざわざこれを?」それを見て、イエドは嫌そうに言いました。
「うん。届けるって言わなかったか?」
「随分前にだろ? それに、文集は……余計じゃないか」
「あ」ユウエリマはしまったと思いました。
イエドは大きな溜め息をつきましたが、黙っていました。
「でもね、イエドが書かなかった部分には、みんなにイエドへの伝言を書いてもらったし……」
ユウエリマはイエドの持つ封筒から文集を取り出し、細かな字で埋まった項目を開きました。
イエドへの寄せ書きでした。
ユウエリマはそれをイエドに見せましたが、イエドは目を封筒に移しました。
「ところでおまえ、どこに
「え。
「そうか。……じゃあ、グダサは?」少し声が大きくなりました。
「グダサくんは、サリ市の国立演劇座らしいよ」
「あーやっぱり、そこかあ」声を押し込めながら叫びました。
イエドは、封筒を卓の上に放り投げました。
「こっちは去年からそこに……。ああ、そうだ、卒業祝いの集まりはどうだった?」
ユウエリマは何も言わず、文集を閉じて卓上の封筒に目をやるだけでした。
「……ユウエリマ。もしもおれが学校に居たら、みんなは気分が良くなかったに違いないぞ」イエドは嘲るように言いました。
「そんなふうに言うと、イエドが居なくて、みんな良い気分で卒業したようじゃないか?」ユウエリマはこう言ってすぐに、――そんなことないと思って言ったけれど、もしかしたら、ラヘナさんたちは、イエドが居なかったから機嫌が良かったのかもしれない――と思いました。
ユウエリマの様子を見たイエドは、咳をして言いました。
「ふん、やっぱりそうだったんだろ? それに、おれが学校に来れば、先生はこう言ったはずだ」
イエドは先生の真似をしました。
「イエドくんの卒業は去年から確定
「イエド。そんなことばかり考えて過ごしてたのか?」ユウエリマは強く言いました。「先生はそんなこと言わない。
「どうして、そんなことを先生が言ったんだ?」
「わ――ぼくが、先生からその卒業証書を渡すようにと言われた後、イエドへ伝言はありませんかって
「また余計なことを……」イエドはそう言いながらも、先生の言ったことを考えていました。
イエドは、しばらく黙り込みました。
その目線は、裏庭の暗がりへ向いていました。
ユウエリマもそこを見て立っていましたが、ふと、寂しさを感じるのでした。
それは、イエドと自分が離れている感覚でした。
ここに来るとき、綺麗な夕焼け空を見ていた自分と、暗い裏庭をただ見つめていたイエド。まるで、古代伝承劇の登場人物たちに重なるような気がしました。
「いや、その望んだ所は、今は夢の、また夢の先にあるとしか……」イエドはまだ考え事の中にいるのか、言葉を
「どうしようもない……今は、ここを見るだけでいい」
ユウエリマは、心配そうにイエドを見つめました。すると、イエドの目に涙が
「イエド? その、サリ市の大きい病院で
何か