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第7話


***


 白髪の彼は、このよく分からない集団を纏めるリーダーらしいです。偉そうな部屋で、偉そうにふんぞり返っていました。彼らの計画を教えられました。よく喋る悪党は気持ち悪いですね。私は、その協力をしないといけないようですけどかなり嫌です。

悪党の言いそうな事ですが、協力を拒んだらどんな目に遭うか分からないそうです。脅迫です。最悪です。

 けれど、覚悟は決まりました。彼らが手段を選ばないなら、私も手段は選びません。私は、両親がどうなったのか、どうして私がこんな目に遭っているのか、それだけを知る事を最初の目的に設定します。その後の事は、その後に考えます。


***


 子供のころから、世界が滅びるだのなんだの、なんて話は何度も聞いた。まあ、実際のところ、前世紀末にも特別大きな事は、少なくとも身の回りでは起きなかったし、この先にもうじゃうじゃ用意されているらしい沢山の滅亡予言も、過ぎ去って見れば何て事ありませんでした、って事になるのだろう。勿論、先の事なんて誰にも分かりはしないのだからどうなるかなんて、未知だ。けれどそれは、滅亡予言をわざわざ世の中に提示してくれている人のいい予言者の皆さんだって同じであるはずで、やっぱり、明日、来年、十年後、何が起きるかなんか、誰にも分からないに決まっている。

 それはそれとして、俺達の現在進行形での目線におけるここから数日のうちに世界がどうこうなるって予言を残している予言者はいないのだろうか? そんな奴がいるとしたら、希望もせず、なされるがままに世界の命運に関わる事になってしまった、日本有数の不幸の持ち主、俺は聞きたい。俺は、一体どこに向かっている? ……なんて。いくら考えたところで、どうしようも無い事はどうしようも無いのだけれど。




「要するに、セイジ君。君にとってのベストは、不幸の引き金となり得る事態に触れない事。引き金さえ引かれなければ何も起こらない。いかに向こうさんが、不幸を連鎖させるために〝細い〟のを引き連れていても何も怖くない」

 とは言っても、公園の遊具に、セキュリティーばっちりのユカの家。隠れる作戦は二回とも敵方の襲撃を受ける、という最悪の形での失敗に終わっているのだ。前回まではユカが内通していたから、次は大丈夫、とも考えられるけれど、どうしたものか。

「動いても駄目な時は待つ。待ってても駄目な時は、動くんだ」

 それからおよそ一時間後、俺とサチは二人で、山梨方面へと向かう電車を駅のホームで待っていた。目的は、不幸が最も高まるその瞬間まで自由を維持しつつ、連中のアジト周辺をうろついて小規模の不幸を相手側にも押しつけ、その行動を制限すること。

 隠れてやり過ごせないのなら、こちらから打って出る。それは、確かに間違っていないような気がしないでもない。しないでもないけれど、これはかえって相手側の思うつぼなんじゃないか、と不安を覚える。手段を選ばないで取り押さえに来ている奴らの前に自分から出て行くなんて、仮に俺達が犯罪者だとしたら、単なる自首だ。

 反論だって勿論した。けれどエイタはこれがベストの案だと譲らなかった。運気の流れからして下手に逃げ回るよりも良いとか何とか。けれど、本当にこれでいいのか? エイタの部屋を出てから駅まで何度も思った。ここまでの道中だったら、ユカが、ふふん、怯えているのですか、だなんてちょっかいを出してくれたりして少しは気分も上向くものだけれど、今回はユカの同行無し。エイタによると、ユカの運気は人並みをやや下回るくらいらしく、その状況で付いて行くのはサチがカバーしなければいけない不幸の量が若干ではあるけれど上昇するから避けた方がいいのだと。そんな事言って、実際は単にユカを危険な場所に送り込む事が嫌なんだろうに、だなんて勘繰りたくなってくる。ユカ自身も最後まで抵抗していたし。そういう部分も含めて、俺は何度となく繰り返すのだ。

 本当にこれでいいのだろうか。 


「ねえ、セイジ。これはあたしからの教えです。心して聞きなさい」

 山梨に向かう電車の中、全員がそれぞれに思考の海を揺蕩っていると、不意にサチが俺の脛のあたりをつま先でコツン、コツンと蹴りながら言った。

「なんだよ、急に」

「自分はついてないから、とかさ、不幸だからどうせ、とか思っちゃ駄目だよ」

 サチの眼は一つだって笑っていなかった。

「そんなん……分かってるよ」

「絶対上手くいくっていつでも思ってないと駄目だよ。自分に出来る事全部やりきって、運を天に任すのなんかその後なんだから。自信あろうとなかろうと、全力出し切って、やりきってなんぼなんだからね」

「突然どうしたんだよ。そんなん、当り前だろ?」

「言うだけなら簡単。でも、実際セイジ......自分は不幸だって諦めている気がする」

「上手くいかせるよ。絶対諦めない。誓ってもいい」

「結構あんたの双肩にかかってるんだから、頼むよ、不幸少年」

「不幸言うな。サチの幸運が手伝ってくれるんだから、大丈夫だろ?」

「任せたまえ! とでも言っておかないと、セイジ耐えられなくなるでしょ。お腹痛いよーって」

「異議を申し立てる!」

「まあ、後で聞いてあげようかね……あ、そうだ、お守りつけておこっと」

 サチは、着ていたジャケットのポケットから携帯電話を取り出した。見るからに安っぽい、ゲームメーカーのロゴの入ったネックストラップがついている。過去に、メーカー主催のイベントでもらって来たらしい。

「お守りってそれかよ」

「このメーカーはあたしにとっての神様だし……ねえ知ってる? お守りって、目に触れるところに持ってると効力が下がっちゃうんだって」

 そう言うと、サチはネックストラップを首にかけ、ぶら下がった携帯電話をジャケットの下に着ていたTシャツの中にしまい込んだ。

「もしあいつらとまたケンカする事になったらこの方が邪魔にならないし、いい感じっしょ」

 満足したらしい。少し仮眠する、と宣言した後、隣からはすぐに寝息が聞こえてきた。もたれかかってくるサチを感じた。俺も寝ておこう。そう思ったけれど、その前に。駅で開かれた扉の、上三分の一くらいにみえる夕暮れ空に向かって、いつもの。

 何か良い事、ありますように。明日は良い事、ありますように。特に今回ばかりはマジで、冗談抜きで何とかお願いします力を貸して下さい。お願いします、お願いします、と。



 ガタコン、という音が振動を伴って聞こえてきた時、俺は眠りと覚醒のちょうど境目にいたらしい。電車の中でうたた寝をしていたとは思えない、心地よい目覚めの感覚だった。

「おはよう。手間ばかりかけさせてくれちゃうんだから、鍵君って本当に嫌な子供ね」

 背筋に寒気の走る声が最初に聞こえてきたその時、最初は何が何だか分らなかった。俺は左側に壁、右側にサチ、のポジションで眠りについていた筈なのに、まず、左側が壁では無く、やや懐かしさを覚える白衣の中年に変わっていた。こみ上げてくる暴力の衝動を何とか抑えつつも慌てて右側を確認。ショートデニムを履いたサチの脚はちゃんとそこにあったけれど、何故だろう、小刻みに震えているように見えないでも無い。ゆっくりと視界を動かしていくと、その更に右隣に、暗い色のストッキングで覆われた、スラリとした脚が組まれていた。

「前にも言ったでしょう。オオヌキはいつだって大人の手を煩わせるために存在しているような奴なんだから。とにかく、時間一杯で確保出来たんだからよかった」

「ああ、声はあんまり出さない方がいいよ。いくら騒いだところで、ひとつも鍵君の有利には運ばないからね」

 車内には他の乗客の姿は見当たらなかった。偶然とは考えづらいから、何かしらの方法で人を追い払ったのだろう。次の駅はまだか。確認する術なんかあるわけ無かった。正に、万事休す。

「オケダ……それに……組織の」

「サイジョウユイ。せっかく迎えに来てあげたんだから、忘れないでほしいんだけどな」

 語尾にハートマークでもついていそうな、薄気味の悪い笑顔を浮かべながらユイはそう言い、それから、俺の背に手を回してきた。硬くて、それほど太くはない、金属質の何らかが押しつけられている、物騒極まりない感覚。

「なんでここが分かったんだよ……?」

「足取りを追うのってね、そんなに難しくは無いのよ。最初のとっかかりさえあればね」

「我々は複数の人質を取ることに既に成功している。まず、オオヌキ。君のご家族の身柄はいつでも手の中に出来る状況だと認識したまえ。そして、コウダサチ君。君のご家族も同様。それに、もう一名、君たちの同行者も々の掌の上に置かれている。君達の対応次第では、何かしら面倒な事が起こる可能性があるよ」

「ほんとオケダ君、長い台詞の時に生き生きしてるよね。まあそういう事だから、諦めてね」

 ゆるやかに、世間話でもするかのような口調でユイが言い、オケダは、それがまるで与えられた役割ででもあるかのように大袈裟に頷いていた。どうする? どうすればいい?

「俺達に何をするつもりだ」

「一言では言えないわね。つまり、二人にはそれぞれの役割を担ってもらわないといけないって事」

「遠まわしにうだうだ言ってないではっきり言えっての……雑魚キャラのくせに!」

 並んだきり、忌々しそうにオケダとユイを睨みつけていたサチの一喝がその場を覆った。今まさに俺が言おうとしていた内容だけに、サチグッジョブ、よく言った。そんな、俺の心の中の喝采なんかまるで関係なくもたらされたユイ側の返答は、最悪、としか言い様が無いくらいにひどく暴力的なものだった。

「えうっ……!」

 ぱす、という乾いた音。横にいたサチがかすかな嗚咽を残してぐったりと倒れ伏すまでにかかった時間、およそ七秒。ちょっと待て。待て。なんだこれ。シャレにならん。

「サチ! おいサチ、マジか!」

「鎮静剤。テレビとかで見たこと無い? 山からうっかりやってきた猪を捕まえるために撃ったりするアレ。人道的で若干暴力的で、一応銃刀法違反な奴ね。まあ、骨にヒビくらいいくかもしれないけど、それはこの間のお礼……ねえ、このクソガキが」

 すらっしゅたいふーんは結構痛かったらしい。ユイが、電車の床に横たわるサチを足蹴にした。かすかなうめき声が漏れた。なんだこれ。なんだこの状況。全身が熱くなるのがはっきりと分かった。殴りかかろうとした。瞬間、オケダに腕を掴まれた。こんなの、間違っている。警察はどこだ。大声を上げてやった。何処からも誰からも返事なんか聞こえてこなかった。

「この子は最後の人質……。鍵君、全部ひっくるめて元通りにしたいなら、私達が指定する通りに行動しなさい……未来を、塗りつぶさないために」

「……すれば元通りになるのかよ」

「さあね……。でも、しなければ何も元通りにはならない。もっともっと悪くなる。それは確かだけど。鍵君さ、もう物事の分からない子供じゃないんだからさ。あんまりがっかりさせないでね」

「今、この世界は重大な岐路に立たされているんだ。今ならまだ間に合うかもしれない。このまま放置しておいて何もかもを駄目にするよりも、いくらかでも良く出来る方法がある。我々はそのために動いているんだ」

「オケダ君そのへんで。もう行くわよ」

「いや、これだけは言わせてもらう」

「……どうぞ。なるべく短めに」

「判断を誤って、大局を見失うような愚にだけは陥らないでくれ。何も我々は人類を根絶やしにしようとか、そういう組織では無い。全てを天に委ねてみようとしているだけだ。これまで悪かった。協力を求める。以上だ」

 そして、オケダとユイは去っていった。サチはオケダに担がれて連れ去られ、後に残されたのは今後の行動を指定する一枚の紙片と、強烈な自己嫌悪と混乱の中心で何をすべきか分からないままで硬直中の俺。こんなの、絶対に、断固として間違っている。絶対に。



 それから数十分後、俺は連中が用意したらしい車に乗せられていた。黒塗りの、何処にでもありそうなセダンだ。駅前に横づけされたかと思えば、その場で紙片を確認していた俺に一言、〝乗れ〟。

 紙片には、〝指定の駅で降りたら東口で迎えを待ち、到着後は一切喋らずに指示に従え〟と丁寧に明示されていた。後ろから首でも絞めて運転手をどうにかしてやりたいところだけど、そういうわけにもいかないのが本当に腹立たしい。

 車は穏やかに、法定速度でもって片側一車線の程よく流れている道を進んでいく。何処に連れていかれるのかは不明だ。紙片にも書いていなかった。

奴らは最終的にどうしようとしている? サチは、無事だろうか。ユカとエイタはどうしているだろう。そんな事をあれやこれや思っていると、流石俺だ。きちんと不幸がやってきた。

信号待ちで止まっている時の事だ。不意に感じた鈍い衝撃。車が大きく揺れ、前に押し出された。後ろを見てみると、軽自動車が見たことの無いような近さにまで近寄ってきていた、と言うか、めり込んでいた。いわゆる追突だ。

「くそ……こちら二号車です。追突されました。指示を」

 運転手が幾分慌てた口調でもって指示を仰いだ。どうやら、ハンズフリー通話がずっと繋がった状態になっていたらしい。紙片での指示を俺が守っているかどうかの確認用だとしたらご苦労な事だ。

「無視しなさい。何事も無かったかのように。追突程度なら自走可能でしょう」

 聞こえてきたのはユイの声だ。至って冷静そうな様子が何だか腹立たしい。俺が怪我しない程度にもう少し何か起れと願っておくことにする。

「了解……このまま向かいます」

 追突をしてきたのは買い物帰りらしいおばちゃんで、慌てて車から降りてきて俺たちの乗る車の運転席窓をノックしていた。大丈夫ですか、と口が動いているのが分かった。一つも大丈夫ではない。なぜ自走不能になるぐらいにぶつけてくれなかったのか。そんなことを思っていると車は発進した。後ろを振り返るとおばちゃんがその場に立ち尽くしていた。110番をお願いいたします。

 結局それ以降は何も起こらず、車は目的地に到着してしまった。所要時間三十分くらいの移動。そう長くない時間に追突事故一件呼び寄せるのだから、今更だけれど、俺の不幸の力は尋常じゃない。ちょっとめげそうになる瞬間だ。

 その場所。まだ忘れるほどの時間は経っていない。白髪男一味が俺やユカを閉じ込めていた、何処かの工場のような建物。どうせ目的地だったんだ、だなんて開き直るほどの根性は俺には備わっていない。動揺と、混乱と、その他色々。紙片には〝入って、入口で待機している担当の案内を受けろ〟とあったけれど、中々足が前に進んでいかなかった。


一〇


***


 もう飽きました。この場所。日記に書くことも何も無いです。放せ、だとか、帰らせろ、だとか、時々そんな声が聞こえます。私はどうなっていくんでしょうか。

 唯一の支えは、本です。この場所の、奇妙な長所。望めば望むだけ世界中の名作が運ばれてきます。だからと言って、長居したいとは思いませんが。早く出たい。


***


「ようこそ。全てが終わり、そして始まる場所へ」

 中に入ってすぐの場所。軽自動車くらいならば走りまわれそうな広い廊下の入口。待っていた〝担当〟は、予想外。白髪男本人だった。手には頑丈そうなアタッシュケースが一つ。紺色のスーツ姿。そんな、青年実業家風悪党の横には、パイプ椅子に座らされてぐったりとしているユカ。

「サチはどうした……? 無事なんだろうな?」

 思ったことを言ったまでだけれど、なんだかヒーローっぽいな、俺。

「勿論無事だよ。みんな等しく審判を受ける権利があるからね。本当に必要なのは誰なのか、それを確認したいだけなんだ」

「知らねえよ! よく分からんことに巻き込みやがって!」

「やめてよ。騒ぐと、ただでさえ細いのに……吹き飛んで行っちゃいそうだ……しかし、残念だよ。こんな場所、全然絵にならない。何とか急ごしらえしたけれどね。ユカ君がせっかく広島まで運んで行ってくれたのに、どうして戻ってきちゃったわけ?」

 白髪男はアタッシュケースを床に置き、その蓋を開き何かを取り出した。具体的な正体は不明だけれど断言出来る。絶対にろくでもない物だ。物騒な物、と言い換えてもいい。俺が心安らぐような可能性なんか皆無。わざわざタオルでくるむとか、そんな演出必要無いのだ。

「広島は幾つかある候補地の一つだったんだよ。他にも、神戸とか、長崎とか、幾つかのポイントはあったんだけどね。かつて災禍に見舞われた土地には不幸が暴発しやすい傾向があるんだ。ざっと調べたけど、実際、細い奴らが多かった……それをこんな中途半端な……君の不幸と連動する予定だった奴らも運ぶ予定で準備してたのに全部無駄になったじゃないの」

 どうやら、よほどこの場所が気に入らないらしい。俺に言える事なんか一つだけだ。

「そんな事知るか」

「まあいいさ……君がいれば、ちょっとやそっとの事なんかものともせずに、審判は執り行われる。我慢するよ」

「協力なんか絶対にしないからな!」

「前にも言ったろう? そんなもの必要無い。勝手に転がり出すんだ。君は、ここにいればいい……まあ、動くな、とは言わないけどね」

 そして外された、物体を覆うタオル。現れたのは小さな小箱だった。

「まず、君の同類……細い奴らはこの建物の地下五階にある一室に集められている。部屋には外から鍵がかけられており、彼らが自力で脱出する事は不可能だ。そこに……一つ。次に君が連れていた女の子。彼女もまた同様、この建物の……そうだな、階層は秘密にしておこう。そこに閉じ込めている。最大限に達した君の不幸ならば問題にならないだろうが……それでも彼女は太すぎるからね……何かがあるといけないから、縛りあげている。そこにも一つ……その他にも、全部は紹介しきれないくらいに沢山用意させてもらったよ」

 閉じ込められていた時と同じ、機械の唸り声がかすかに響いていた。空気が、奥からこちら側に向って流れてくる。生暖かい、匂いのある不愉快な風。俺も、白髪男も、眠ったままのユカも関係無く包み込んで、通り過ぎていく。注意喚起を促す電子音とともに、入口のシャッターが降り始めた。どの道このまま逃げ帰るわけにはいかないから、そんなの無視だ。

「仕掛けられているのは爆弾だ。起動のスイッチから信号を送って、実際に爆発するのは一番遅い物で四時間後……とは言っても、君が鮮やかな手並みで爆弾解体に臨めるようなスキルを持っていない事は承知の上……ちゃんと仕掛けもしてある」

 白髪男は淡々とした口調で、自らが持っている小箱を俺の方に見せた。バラエティ番組の小道具のような、いかにもプラスチックな、安っぽい小箱だ。大きさは、ラジコンなんかを操縦するプロポくらいで、一つの面には、赤いボタンと緑のボタンと白いボタン。

「これが、起動スイッチであり、解除スイッチでもある……まあ、全ての爆弾にこれを用意しているわけじゃない。致命的な物に関しては用意したがね。上手くコレを見つけられたら、好きなボタンを押すがいい」

 言いながら男は赤いボタンをプッシュ。

「正解を押せば、時限装置を解除出来る……さあ、僕のところまでおいで。この施設のほぼ全ての部屋のロックを開く事が出来る、管理職権限のカードキーを渡そう。地上三階、地下五階、部屋数はさて、幾つかな。結構時間かかると思うよ」

「意味分からねえ……くだらない事しないでさっさと馬鹿な事やめろよ! こんなの、上手くいくわけねえだろ!」

「意味なんか、一つだよ……運を試される中で、どんどん不幸を呼び込むんだ。君が呼び込んだ不幸が、地下にいる同類によって増幅され、カタストロフィにまで発展するんだよ。追加のルールだ。何処の階層にいるかは分からない君の彼女が救出されるまで、君は地下に行ってはいけない。また、地下五階まで到達し、僕から、君の同類達が捕まっている部屋の鍵を受け取り、彼らを救助するまで君たちは表に出られない。僕のところにカードキーを受け取りに来る事も含め、あらゆるルールが破られれば、即座に全ての爆弾を起爆する……これでどうかな?」

「…………」

「せいぜい、すごい不幸を呼び込んでくれ……期待している」

 そして、世界の命運がかかっているはずの奇妙なゲームは、微妙極まりない空気の中で始まったのだ。白髪男の去った後で、縛られていたユカをたたき起すと、何ともバツの悪そうな顔で、エイタの部屋への進入を許し、強引に誘拐されてこの場所まで連れてこられたこと、エイタがいつの間にかいなくなってしまっていた事を説明してくれ、それから、〝状況を説明してください〟。さっくりと説明してやったら、戻ってきた一言。

「冗談ですねもはや……」

 だと。全面的に同意する。同意するけれど、厄介な事に多分あの白髪男とその一味は大真面目だ。

「行きましょう。脱出だけでは済ませません。あの首領を捕まえて、きっちりと落し前をつけさせるのです。そこまで出来てようやくこの一件は完了と呼べるでしょう……しかし、馬鹿げています。どこのバラエティ番組ですか……」

「そこらへんの詰問は当人に後でたっぷりしてやるのが一番だろ」

「言われるまでもないです。全てが始まり、終わる場所だとあの男が言ったのだとしたら、終わるべきなのは奴らの命運です」



 幅の広い廊下を真っすぐに。スプリンクラーやら何やらに追い詰められながら逃げていいた時にはもっと狭くて雑然とした廊下をイメージしていたけれど、こうして蛍光灯の下に見てみれば、整然とした、落ち着いた雰囲気すら感じさせる廊下だった。

 壁には首くらいの高さまで養生がなされていて、それより上はコンクリート打ちっぱなし。プラスティックタイルの床が、規則正しく並ぶ蛍光灯の灯りを受けてぬめぬめとした輝きを放っていた。

 歩いて二分くらい。表でなら大した距離に感じなくても、屋内だと随分歩いた気分になる。上と下、それぞれの階層へと続く階段が、のっそりと伸びていた。

「階段ですね……」

「まずは上に行け、とか言っていたな」

下へと続く階段は、中腹辺りにシャッターが降りていて通行出来なくなっていた。何だか、本当にゲームみたいだ。条件を満たせば開くのだろう。馬鹿にしやがって。

「このまま一階での捜索を続けるのも手ですが、上から一部屋ずつ潰して進んだ方が効率は良さそうです」

 そのまま三階へ。階段と廊下の間に鍵のかかった扉。幸い、ユカ宅とは違いパスワードだのなんだの、という面倒な事は無かった。渡されたカードキーで一発だ。まあ、そのカードキーの使い方はユカが教えてくれたのだけれど。

「物を知らない子供ですね」

 ふふふ、と笑いながらこんな状況下でも変わらず人を小馬鹿に出来る辺り、ユカはユカで結構な悪党な気がしてくる。

「カードキーって普通、ピピっとくっつけるだろ? 俺が前に泊まったことあるホテルとかそうだったぞ」

「磁気ストライプをスリットに通すタイプですね。紛らわしいのは、非接触タイプの読み取り機が一緒に設置されているせいですね。おそらく、ゲスト来館時には解錠可能な扉を限定する意図で非接触タイプのカードを渡しているのでしょう。無駄の多い仕組みです」

「悪い。理解することを諦める」

「最初から期待してはいませんがね……転びますよ」

 転びはしなかったけれど、余所見をしていたせいで扉を抜け、廊下を横切った先の壁に激突した。俺の不幸、相変わらず、出来る。

「ただドジで愚かなだけです……貴方が行動不能になった場合のルールまではさすがに用意されていないでしょうよ」

 とにかく、捜索すべき最初のフロアに到達。ぶつけたところがすさまじく痛い。全部がきちんと終わったら一回病院に行こう、なんて思えてくるくらいの痛みだ。

「やあ、始まったみたいだな」

「うわあ……」

 三階廊下を歩き始めた俺達の目の前に颯爽と現れたのは、白衣が似合ううざい奴こと、オケダだった。もううんざりだ。二度と見たくない顔がこうも何度も登場してくるこの状況だけでも十分俺は不幸だ。間違いない。

「教師を前にして嫌そうな顔をするとは何事だ」

「進みたければ俺を倒していくがいい、とか言うんじゃないだろうな……つか、もう教師じゃないですよね?」

「細かな事を言うもんじゃない。それに、僕を倒す必要など何処にあるものか。もう、審判は始まっているんだからね。僕にも、それに他のメンバーにも、今日一日の自由行動が言い渡されている。不幸の高まりが想定よりも早いと社長は言っていた......おそらく今日、この場に君がいるのならば今日一日で決着がつくということなのだろうね」

「はぁ……それで?」

「あるメンバーは審判の無事を祈るために家族の元へ帰ったし、別の者はこの施設内の一室で成り行きを見守っている。僕は、君と話がしたくて最初に君がやって来るであろうと想定される場所で待機をしていた」

 どうだ、参ったか、とでも言わんばかりにふんぞりかえって楽しそうな顔だ。それはまるで、本当にゲームに興じているかのような、邪気のない笑顔。案外、こいつは本気でこの状況を楽しんでいるのかもしれない。自分は世界を変えるための正義の味方で、俺はそれを阻止しようと動く邪魔者。それくらいの妄想をしている可能性はある。

「僕は君の邪魔をするつもりはないさ。ただ、君に知っておいて欲しい事があってね」

「時間が無いんで」

「爆弾の正確な威力だが、決してこの施設を吹き飛ばすほどの物は用意出来ていない。全部揃って爆発したとしてもせいぜい半壊くらいか。勿論、爆発によって発生する可能性のある火災や、柱などに損害が及ぶ事による自重崩壊は考慮しなければいけないけどね。そう、爆破と言えば、モンロー/ノイマン効果を知っているかね?」

「知りませんけど結構です」

「社長は……君によって爆弾の威力が向上する事を望んでおられる」

「そんな魔法は使えないんだけど?」

「もう分かるだろう? オオヌキが呼び込む不幸が、爆弾なんか比較にならない効果を生み出すんだ。爆弾なんてね、飾り……あるいは、君を走らせる人参でしかない」

「何が言いたいんだよ……?」 

「ここまで来たらもう、後はどうなってもいいのだよ。全ては運命として既に決している事だ。僕は決定論者なんだ。既に出来る限りの事はした。もう手札は無い。一方で君にはまだ手札が残っている。フェアな勝負をしよう。君が全てをやり切り、それで何も起きないのなら、その時は甘んじて敗北を受け入れよう」

 気持ちよさそうに言い切ると、健闘を祈る、だとか何とか言って、オケダは登場した時と同じように颯爽と歩き去って行った。

「足止めですね……少しでも時間を稼ぎたかったのでしょう」

 ユカは、そう評価した。けれど、実際に停滞した時間なんかほんの三分程度だ。四時間のタイムリミットのうち三分の停滞がどのくらいのリスクかなんか、俺には分からない。大したものでは無い気はするが。

「いや、多分違うだろ」

「……ほう」

「たぶん、言葉通り、フェアに勝負させたかっただけだと思うぞ」

「人が好いにも程があります。あれらは皆、私達にとって敵と定義すべき相手です」

「分かってるよ……ただ、そんな気がしただけだ」

 そう、深い意味なんか一つも無い。オケダはこれまでもこれからも、俺にとっては最悪な奴。天敵。好意的解釈なんかしてやる必要は皆無。それでも、そう思ったって事は、きっと、本当にそうなのだ。俺はそう思う。

「一部屋ずつ確認していくしか無いか」

「そう時間はかかりません。私の知る限り、このフロアには会議室と、応接室しか無かった筈です」

「そっか、歩きまわった事あるんだっけ」

「さあ、物知らぬ子よ。私に付いて来なさい。ふふふ」

 実際、ユカの言う通り。最初のフロアには〝会議室(大)〟と書かれたプレートがはまっている部屋が二つに〝応接室〟が四つ。その先には、〝会議室(小)〟が幾つも並んでいた。

 どの部屋も似たようなものだった。人の気配が無くて、カタログか何かの撮影の為に用意したかのような、静止画めいた静けさ。何枚部屋の扉を開いても、どれもこれも同じ部屋だ。一部屋を確認するのに二分とかからない。

「良いペース、かな」

「です。とは言っても、先ほどみたいに邪魔が現れないとは限りません。二階、一階は部屋数も多いですし、地下は私も未知です。急ぎましょう」

「邪魔が入らないゲームって、すごくつまんないと思うんだけどな」

 不意に聞こえてきた女性の声。振り返る気力すら若干失せる。七つめか八つ目の会議室を確認中、部屋の扉方面。サイジョウユイがいかにも悪役そうな声色で挑発を飛ばしてきていた。

「このペースでずっと交代で現れ続けるんじゃないだろうな……」

「そんなの、クソゲーです」

「何の話? まさかまたオケダ君? 本当にもう……でしゃばりというか目立ちたがり屋というか。あっ……もし良かったら、一時間後くらいにもう一回出直そうか?」

さすがオケダ。これは勿論、あまり良くない意味で。

「で、あんたは一体どんな訓示をしにきたんだよ?」

「訓示って別に大した事じゃ……。ただ、この施設に仕掛けられている爆弾の威力は……」

「吹き飛ばすほどじゃないらしいですね。さっき、白衣の中年が言ってましたよ」

 ユカがぼそりと一言突き刺すと、ユイの表情は面白いように落胆のそれへと塗り替えられ、そしてそのまま静止した。

「……オケダ……ま、まあいいわ。爆弾の事も勿論含めて、いくらか背景を教えておいてあげたかったの。鍵君がこのゲームに挑むにあたってね」

「セイジさん。ぼさっとしないでください。時間がもったいないので遠慮しましょう。急ぐのです」

「ユカは黙ってなさい。鍵君。君の意見を聞かせてちょうだい」

 〝聞かない〟を選択すると、延々ループしたりするのだろうか。或いは、聞かないとこの先のイベントが進まない、とか。山ほど、とはとても言えないけれど、人並みに話題作のRPGなんかはやっているのだ。似たような仕掛けに出くわした事はあるわけで、こういう場合の選択肢が実は一択である事くらい知っている。

「聞きます。まさか、一時間も二時間もかからないだろうし」

「アホですね。サチさんは今でも助けを待っていますよ」

「はい正解。まあ、聞かないって言ったらこのままこの部屋に鍵かけてやるところだった……って言ったらユカも少しは諦めつくでしょ? なんにしても、悔い残したままは嫌だと思うんだけどな」

「知りませんからね……」

 ユカのその一言を合図にしたかのように、ユイは喋り始めた。すっきりとした表情に、爽やかな声色。まるで、もう何もかもが済んでしまったかのようだ。不愉快過ぎる。俺からしてみたら、まだ何も終わっちゃいないのだ。わざと、挑発でやっているとしたら見事なものだけれど、悔しい事にそうは見えなかった。

「大した話じゃないんだけど、まあ、一応ね。あたし達の組織がそもそもどういう集まりなのか、それを知っておいて欲しいだけ……まあ、大方想像つくでしょ? みんながみんな、ろくでもない不幸を拾いあげて、こんな世界どうにでもなれって思っている……オケダ君もあたしも、勿論社長もね」

「それで、どうにでもなれ、と思って、いろんな人を巻き込み始めた、と。迷惑極り無いです」

 ユカが、眉間に深く縦じわを刻みつつ言った。いろいろと言いたい事がある、その気持ちはよく分かる。よく分かるけれど、俺は何も言えなかった。何を言うのが一番適切なのか、さっぱり分からなかったのだ。苦情と文句と恨み節とクレームが八割がたを占めているのは確かだとして、残り二割。何かがすっきりしないで残っているのだ。

「ある人は自身を必要としない世界の在り方に。別の人は、先行きに希望を抱けない現状に。他にも沢山……病気、失業、災害、事故、裏切り、嫉妬、自己嫌悪……人って、結構簡単に絶望するのよ」

「私には理解できません。セイジさんは……?」

「俺だって分からねえよ……だって、俺絶望してねえもん」

「分かってくれなんて言わない。これが選んだ道だから」

「分からねえけど、だからって、じゃあ世界滅ぼしますって極端すぎるだろどう考えても。おかしいって。絶望したいなら勝手にしてりゃいいじゃねえか」

「社長は言ったわ。この世界に絶望したのなら、世界を変えてしまえばいいって。数十年に一度のチャンスが、もうすぐ巡ってくるんだって……絶望している側からすれば、神様からの福音のように聞こえる言葉だと思わない?」

 ユイの言葉を聞きながら、俺はただ考えていた。世界に、何もかもに絶望するほどの不幸ってどんなモノだ? 何が起きたら……何を失えば、世界中を憎めるようになる? 俺は人よりついてない。それでも、そんな気持ちは分からない。ならば、俺は実は、不幸でも何でも無い? そうも思わない。途切れない思考をユイの言葉が更に掻き乱していく。

「塗りつぶされた未来……鍵君はもう覚えてないかもね。でも、まだ六年しか経ってない」

「何の話を……」

「可哀想にね……心筋梗塞からようやく立ち直ったと思ったら、今度は酷いスランプでね。〝彼〟は二度と戻れなかった。今じゃ、もういい年なのにアルバイトで食い繋いでる。今でも復活を遂げようとして、足掻き続けている。鍵君の目の前で不幸側にたたき落とされた可哀想な人……それがあたしの父親」

 書店の行列が脳裏に浮かんだ。目の前で苦しむ漫画家の表情が、駆け寄ってくるスーツ姿の大人が、うめき声が、人々のざわめきが、順番に通り過ぎて行った。

「あれは俺のせいじゃ……」

「誰も鍵君のせいだなんて言ってないよ。そこに君がいて、君が人の運を食らい尽くすくらいの不幸を持っていた。それが、あの人にとっての不幸の始まり。そして、あたしにとってもね」

「そんな偶然なんてあるかよ……そんなん聞いた事ねえ……ありえねえだろ!」

 ユイは、その表情を穏やかそうな笑顔にして俺の方に近づいてきた。優しそうな顔だ。何もかもを諦めきっているようにも見える。何を言えばいいのか、俺はますます見失う。

「三年くらい前、かな。社長に声をかけてもらったの。そして、あたしは知った。不幸の力は世界すらも変える可能性を持っている事をね。あたしは、その可能性を信じて今日まで生きてきた。塗りつぶされてない、新しい未来が必要だったから……話は終わりよ。せいぜい頑張りなさい。オケダも同じような事言ってたんでしょうけど、妨害するつもりはないわ」

 ユイが部屋を出て行って、本当だったら俺達もすぐに動き出さなければいけない状況だった。思考が止まらなくて、歩き出す気になれなくて、俺は立ち止まっていた。

「行きますよ。サチさんが待っています」

「分かってるよ……」

「既に起きてしまった出来事に対して責任を取れる人間などいません。過程に非があって、その罪を償う必要性があったとしても、それは変わらないです。似たような事は前にも言いましたね。今回のケース、どう考えてもセイジさんには非がありません。しかし、今この場で愚図ついて、サチさんの身に何かがあったとしたら、それは責め立てられ得る罪です。最悪の結果を招きかねない、最悪の過程となり得ます」

 部屋の入口でユカが俯きつつそう言った。俺は、相変わらず部屋の真ん中あたり。けれど、ちゃんと言葉は届いた。歩きだすきっかけとしては十分だ。

「……悪い。急ごう」

「先ほどからそう申し上げています」

「ありがとな」

「苦言を申し上げたまでです。何も気にせず、振り返らず、今は目の前の事にのみ集中するのです。後々に考え事をしたいのなら、そのための時間を手にするための努力を惜しまない事です」

 見たことも無いほどに多弁なユカに俺が言える事は、やっぱり〝ありがとう〟くらいなものだったからもう一回言った。物凄い目つきで睨まれた。全部終わってここからきちんと帰れたらもう一回言ってみようと思う。とりあえず、全部後回しに決定。


一一


***


 あと三日程度で本命の鍵が来るらしいです。もう勝手にしてください。そんな事は、今の私にはどうでもいいです。もっと、大事な事があるから。あいつらの事なんか日記に書いてやりません。

大事な事。嬉しかった事。エイちゃんから手紙が来ました。どういう経路でここの住所なんか知ったんでしょうね、彼は。とにかく、生きているようでなによりでした。

手紙の内容によると彼は占い師の真似事をして生計を立てていたけれど、今は休業しているとか何とか。細かい事情までは書かれていませんでしたが、ただ、印象的な一言。〝今は、良くない〟。なんだか、しばらく頭から離れなかったです。でも、思います。〝今が良くない〟なら、いつかは〝良くなる〟可能性だって、きっとあるはず。自分を騙しているみたいで嫌だけれど、そんな思いつきは、少しですけど私の力になったようです。手紙を読む前よりも元気になりましたから、きっと。

封筒の裏には、丁寧に、エイちゃんが今住んでいる場所の住所まで書いてありました。かつて私達が過ごしたあの施設からそう遠くない、多分、行けばすぐ分かる場所。行きたい。心からそう思います。

けど、まだ無理です。全部、何もかも解決したら。色々な事がすっきりして、あの頃の事を気持ち良く思い出せるようになるその時までは我慢です。まだ今は、振り返る時じゃない。そう思うから。それに、どうせ全部が解決するまでは出られない。それを思うと、本気で白髪どもの死を望みたくなってきます。

 どうでも良いことですが、彼らは自分達の組織に〝黄昏社〟とかいう名前をつけたそうです。本当に、心の底からどうでも良いですね。書いて後悔しているぐらいですが、消しゴムが勿体ないのでこのまま文章を閉じます。


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