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第4話


***


 急展開。この場所、無くなるらしいです。運営者の都合、とか理解できないです。私やエイちゃんのような、そこそこの年齢に達している人間はそのまま出され、まだどうにもしがたい子供は、他所の、似たような施設に移されるらしいです。無責任です。最後までやり遂げろ、と言ってやりたくなります。なりますけど、最後って、何処にあるんでしょう。それは、私には分からないです。エイちゃんに話してみたら、なるようになる、とまた笑われました。私よりずっと長い時間を過ごしてきたのに、どうして笑えるんでしょう? 聞いてもちゃんと答えてなんかくれないでしょうから、聞きませんけど。


***


 時間の長短を評価するのはなかなか難しい。望んで手にした時間ならば短いだろう。逆に、意図せずして穿たれた穴とでも言うべき時間ならば、それは気が遠くなるほどに、長い。俺にとってのここ数日は言うまでも無く後者だ。地元の駅、通い慣れた道、見飽きた広告看板。何もかもが懐かしかったし、何だか嬉しかった。これはちょっと味わった事の無い感覚だ。

「小さな町ですね」

「何もかもがそれなりな町だ」

「気取ってないで、早く用事済ませて行きますよ」

「まだ十日あるんだろ?」

「〝もう〟十日しかありませんし実際にどんな事が起こるか分からない上に、お忘れなく。我々は追われているのです。向こうはこちらの動向をどこまで把握できているかは不明ですが迅速な行動が求められる事は明白です」

 ユカが呆れ顔でやれやれ、と顔をしかめたその直後、それは、ある種運命的な出来事だった。一個の生命が左右された。幸運と不幸が、少なくとも俺の目には見えない世界でぶつかり合い、火花を散らし、かろうじて幸運が勝利……そんな出来事。

 発生した場所は、土手沿いの道だ。俺の家は、駅から川沿いの道をしばらく歩いて、土手沿いを走る片側一車線の道を横切って、住宅が密集しているエリアに入ってすぐ、といった立地で、一か所、信号も何も無い場所を横断しなければならないポイントがある。調子に乗った車がいつも法定速度を頭から無視したような速度で通り過ぎていくこの場所はかなりの危険地帯で、俺は小学生のころ、絶対に一人で渡らないように、と厳命されていた。

家から、駅とは逆方向に一キロくらい行った場所に信号つき横断歩道はあるけれど、そんな遠回りを選択できる時間的余裕がある事なんか、皆無。俺だけではなく、このエリアに住まう住民の大半はこの場所を横切っている状態で、要するに悪いのは行政だ。そんな危険地帯に俺達がさしかかったその直後、一つの黒い影が足元を素早く横切った。

 俺達がずかずかと歩いてきた事に驚いたのか、それとも何か別の要因があったのか。その黒い影は猫だった。左手側から猛烈な勢いで軽自動車が突っ込んでくるのが見えた。早く行け、とか思っていたら、あろうことか、猫は何かに躊躇ってでもいるかのように、道の中央付近で速度を落とした。俺が慌ててもどうする事も出来ない状況。軽自動車のドライバーも気づいたらしく減速を開始したが間に合いそうも無い。その上不幸の震源地同然の俺がこの場に居る以上、間に合うわけがないのだ。ユカからも、ああ、とかすかな声が漏れた。

猫が、何かに憑依でもされたかのように急速に駆け出したのは、俺が目を背けようとしたタイミングとほぼ同時の事だった。減速に入っていた軽自動車は安堵したかのように再びアクセルを踏み込み、騒音とともに走り去っていった。静けさを取り戻した現場には安堵した表情のユカと俺、窮地を脱した事に気づいているのかいないのか、さっさと何処かへと歩き去ろうとしている猫、それに、道路の対岸、驚きに眼を見開いている、サチ。猫の命を何も知らないままに救った、我が幼馴染。サチは俺の姿を確認すると、驚きの表情のまま、車の流れが途切れた道路を立ち止まることなく猛然と渡ってきた。

「よかった……生きてた……無事?」

「あんまり無事……とは言えないかもしれん」

「です。有事を目前に控えています、この人」

「どういう事? あと……どちら様?」

「私はユカ……この不幸男の保護者みたいなものです」

「保護者……あんた……こっちが心配してたってのに他所でなに他人の保護下に入ってるのかな?」

 さて、どこから説明したものか。



 住宅の密集しているエリアを歩いて、ひとまずサチの家に俺達は避難した。引きずり込まれたと言った方がより適切かもしれないけれど、紗知の家は両親共働きで、明るい時間に家に居るのはサチだけ。母親が専業主婦の我が家よりは話がしやすい事は確かだった。

サチの部屋でテーブルを挟んで、俺とユカ、それにサチが着席。数日前にサチと並んでゲームをした日常と現段階のギャップが、悲しさを通り越して笑えてくるくらいだった。本当に、俺は一体、ここで今何をやっているんだろう。

サチが説明してくれたところによると、少なくともこの近辺において俺の行方不明はそこそこな事件になってしまっているらしい。テレビやら新聞やらが大騒ぎするようなところまでは至っていないものの、捜索やら、聞きこみやら、物騒で非日常的な単語が並ぶ程度にはなっているらしく、心配されている身であるはずの俺の方がいろいろと不安になったぐらいだ。いっそ、このまま行方不明になっていたほうが色々と座りがいいんじゃないか、とすら思えてくるくらいだ。

「で、何がどうしてどうなったわけ?」

 そう問われても、俺としても困るのだ。ありのままを話すとしても、俺自身がその全体像をいまいち掴みかねる状況だし、そもそも相手の目的が常識の範囲をわざととしか思えない勢いでぶっちぎっているのだから、俺がそれを仔細に説明する事なんか不可能と言える。

「いろいろとわけのわからない事になってるんだ」

「だから、何が、どうして、どうなった、のかを説明しろって言ってるんだけど?」

「ん……と、とにかく、俺は連れ去られたんだ。変な秘密結社みたいな奴ら。そいつらは、俺の不幸なところが世界をどうこうするための鍵なんだーとか言ってた。たまたまそいつらの隠れ家で事故があって、それで逃げてきたんだ。この小さいのは、その時一緒に逃げてきた人」

 かなり端折って説明してみた。俺による紹介が気に入らなかったらしいユカは、忌々しそうに俺の顔を見上げていた。

「何より無事で良かったけど……なんなのそれ? 本当に冗談で言ってるんじゃないの?」

「残念ですけど、この不幸男の言うところは概ね正しいです。敢えて言い添えるならば、まだ何も終わっていないという事です。これからもうしばらくこの人は行方不明でなければいけないです」

「なんでよ? 帰ってきたんだから家に帰れるでしょ? どっか行かなきゃいけないなら、ちゃんと行き先を周りに行ってから行けば行方不明にはならないじゃん」

「そのような猶予はないです……それに、もし万が一その手順を踏むことによって何らかの不都合が発生し、出発出来なかったとしたら一大事です。本来、ここにも立ち寄るべきではありませんでした」

「どうなるってのよ?」

「さあ、或いは……世界そのものがあり方を変えてしまう、そのトリガーになるかもです」

「保護者さんはこう言ってるわけだ……」

「貴方がオオヌキセイジの友人として色々と思うところがある事には一定の理解を示しますが、現在状況では私の判断がより正しい事を、この若干理解力や想像力に乏しい男も理解せざるを得ないはずです。残念ですけどまだお返しする事はできません」

 はっきりとした断言が部屋中に広がった。それから、三人分の沈黙。静かな部屋に時計が一秒おきにかすかな音を刻みつけていく。きっと、サチは、ユカのそんな言い草が気に入らなかったのだろう。顔を紅潮させていたし、大づくりな目には幾分の充血と潤みが見られた。

「返せませんじゃないよ……。何なの……どんだけみんな心配してたと思ってるの? 何? 身勝手な事ばっか言ってさ。大体、何処の誰とも分からない人がなんで保護者とか言っちゃってるわけ? それとも何? セイジが望んでそうしてるってわけなの?」

「用さえ済めば、きちんとお返しします。その為に私はやむなく同行しているだけです。好きでやっているわけではないです。あと私は、小さい子ではないです」

「あんたね、さっきからモノみたいにセイジの事言うけどさ」

「私にとっては、モノも人も興味の対象として同じ範疇に属します。それに、前述の通り、私はこの状況に好きで置かれているわけではないですから、貴方が心配しているような事は何もありません。極力無傷でお返しします。貴方の所有権を侵害するような事はしません」

「所有権も占有権もいらないけど変な悪ふざけにしか見えないって言ってるの」

 話が少しずつずれてきている気がしないでもないけれど、ここで口を挟んだりするような愚かな真似はしない。それよりも俺は、果たしてもう一度無事で見られるか分からないサチの部屋を記憶にとどめることに忙しかったのだ。カーペットの色はダークグレーで、ガラステーブルの付近だけ、赤い円形のカーペットを敷いている。テレビは結構大きめで、テレビ台の中にはゲーム機に、ソフト。壁には昨年行われたゲームイベントの公式ポスターと、サチが好きなゲームメーカーのオフィシャルカレンダー。そんな一つずつを頭の中に刻み込む作業に没頭していた。

そんな俺の感傷なんか全く関係なく、ユカとサチは何だかよく分からないいがみ合いを依然として続行していた。サチがいくら不満を言い募ろうと、ユカはマイペースに自身の状況のみを説明するばかりだから一向に終わる気配を見せない。サチはあちらこちらに矛先を見つけて責め立てるけれど、全く通じないものだから、最早単なる感情論だ

「そんな言い方で人一人の運命を左右しようとしているの、おかしいから! どう考えてもあんたのやり方じゃ誰も幸せにならないって、そんなの誰が聞いてもそう思うでしょ普通!」

「誰かを幸せにしようとやってるつもりは毛頭ないです」

「他人がそれで不幸せになっても関係ないって事?」

「そうです。最終結果として得られるものが最大限救われたものになるのが私の目的です」

「セイジをそんな理由で行かせるの、あたしは反対。あんたが正しいとも思えない」

「本人は、行かざるを得ないと理解しているはずです。いかがです? 本人様」

 いかに傍観を決め込んでいたところでそのうち回ってくるとは思っていたけれど、とうとう俺も話題に再度加わらなければいけないその時がやってきたようだった。ユカの方から振りが来たのは少し意外ではあったけれど。案外、サチの食い下がりに対する、ユカなりのギブアップだったのかもしれない。

「行こうと思ってる」

「なんで……あのさ、ひとまず話聞いて思った事だけど、この子の言ってる事、おかしいじゃん。間違ってないかもだけど、何て言うのかな……そう、人間として間違ってる気がする」

「俺が変な組織に拉致されたのは事実なんだ。そんで、あいつらがやろうとしている事はともかくとして手段を選んでいないのも見ちゃったし……もしさ、俺がこのまま家に帰ったりしたらあいつらはそのタイミングを見計らって家まで来るかもしれない。冗談じゃなく、家族人質に取りかねない奴らなんだよな……」

 正直、そこまで具体的には考えていなかったけれど、状況に応じて、口ってやつは適当に動くものだなと我ながら感心するくらいだ。嘘を言っているわけではないから心は別に痛まない。むしろ、口にしてそのリスクを自分で再確認しているくらいだ。

「うん、やっぱ行かないといけないっぽいわ、俺」

「……OK、分かった、了解、あたしも行く。時期的にばっちりだし」

「は?」

「前に、言わなかったっけ? 全国大会、明後日からなんだよね。そんで、会場が他県なわけ」

「つまり?」

「ちったあ頭使いなさいよ……外泊許可はもう取ってるから、海外とかでもなければ見届けについて行けるわけ。一日早く出掛けるくらい、何とでも言い訳できるでしょ」

「大会、どうすんだよ? そのために色んなモノ犠牲にして練習してたんだろうに」

 俺がそう言ったのは、何も同行の申し出を疎ましがっての事では無い。割と状況に流されがちな俺でもこれは断言出来る。幸運と不幸の干渉がどうたら、の理論で行くと、サチがいればちょっとやそっとの不幸なら弾き返せることになるだろうし。

「そんなの、どっちが大切かなんて考えるまでも無いし。もしこれであたしがおめおめ大会に行って、戻ってきたらやっぱりあんたが行方不明でした、なんて寝覚め悪すぎ」

「勝手に話しを進められているようですが……そんなの困ります」

「なんでよ? 別に、あたしの切符代奢れとか、そんな事言わないよ?」

「それでも……駄目です。容認出来ないです」

「だから、はっきりと理由を言いなさいよ。泊まるとこも別に自分で手配できるし」

 詰め寄られて、言葉を探すユカ。前にも一度こんな表情を見た。確か、俺が警察に相談を持ちかけよう、と言った時だ。いつでも冷静な誘導者を気取っているくせに、予定外な事が起こると分かりやすく混乱を始める。もうちょっとこの状態になるハードルが低ければ普通に可愛い女の子なのに勿体ない。

「む……無関係な人にも危害を加えるのが我々の関与している組織です。もし何かがあった時に対応致しかねます」

「自由意思であたしがついて行くのにどうして貴方が責任を取る必要があるわけ?」

「貴方は甘く見ています。可能性の話ですが、現地で奴らは邪魔な貴方を抹殺しようとするかもしれません。それでも、そのような事が言えますか? 貴方はオオヌキセイジの安否を気遣いながら、自身が血溜まりの中に沈むかもしれないのです。逆の立場からすれば、それによってオオヌキセイジは寝覚めが悪くなるのではないですか? 貴方の我儘がリスクを拡大させる事になる事は明らかなのです。その覚悟はあるのですか?」

「分からないよ……だけど、こんな話聞いちゃって、行ってらっしゃいなんて、出来るわけないじゃない! 行きます……勝手について行きます! 最悪、見つからないように尾行しますからそのつもりで!」

「……知りませんからね?」

 ユカがいかにも、仕方無い、といった顔つきでそう呟き、俺達の話し合いは終わった。



 この日は何処か様子が違う、施設の奥深く、彼が支配する部屋。時折、電話が鳴ったり、誰かが何かを告げにやってくる事はいつもと変わらない。ただ部屋の主だけが、いつもとは違う様相を呈していた。

「死ねばいいのに……どいつもこいつも……役に立たない……」

「社長……どうか、今しばらくお待ちを。必ず私が鍵を連れ戻します」

「そんな事を言ってるんじゃないんだよ! そっちは既に別の手を打ってるんだ……」

「申し訳ありません……」

「ユイ……すまない。君が悪いんじゃないよ……ねえ、もうさあ、オケダ君とか殺しちゃってもいいんじゃないかと思うんだけど、どう思う?」

「……私は、マスターのおっしゃる通りに行動します……全ては審判のために」

「じゃあ、オケダ君呼んで来て。行くところがもう無いとか言って転がりこんで来てたよね」

 やがて、部屋の扉がノックされ、彼の返事の後に開かれた。

「起死回生のチャンスってのをあげるよ。但し、これは君から他の人間に下ろす事は許されない。君自身の手で蹴りをつけなければいけない問題だよ」

 オケダは緊張と恐怖が支配しているらしい表情をなんとか平常に保とうとしているのだろう。口元を戦慄かせながら、擦れた声で、はい、とだけ返事をする。それを見た事によって満足したらしい彼は、自らの執務デスクのチェストから掌に乗る大きさの端末を取り出し、それを机の上に置く。コトリ、と軽い音が室内に浮かびあがり、消える。

「行くべき場所に向かい、全てを迅速に行うんだよ。ユイ、悪いけど手伝ってあげてくれる?」

 受け取ったオケダは緊張した面持ちのまま部屋から去り、それに付いてユイも部屋の外へ。

 指示を一通り出した事が、彼にいつもどおりの平常心を取り戻させたのだろう。もう、そこはいつもどおりの部屋へと戻っていた。静かで、冷たい部屋だ。彼は静かに独り言を呟く。誰に聞かせるでも無い独り言。彼が、彼自身に告げる、始まりの言葉。

「さあ……行こうか」

 そして彼は出て行き、部屋は主を失った。電話が、六回の呼び出し音の後に切れた。



 サチが荷物をまとめる間に、俺は自分の家へと一度戻る事にした。とは言っても中には入れない。扉を開いた瞬間きっと、二度と外に出たくなくなる。遠くからほんの少し見るだけだ。渋っていたユカも、それだけなら、と許してくれた。

 電柱二本分離れて見る我が家は、相変わらずの我が家だった。白髪一味の手はまだここまで及んでいないらしい。無事を確認出来ただけでも、来て良かった。

 二階建てのシンプルな一戸建て。アイボリーカラーの外壁と、暗いグレーの屋根。改めて観察するようなものでもないけれど、こうして見ていると心の底から帰りたいと思うのだから、やっぱり、育った我が家って偉大だなと思う。

「そうですか。私にはその感覚はよく分かりません」

「そうか……」

「私にとっての家はちょっと感覚が異なるのです。少なくとも現在両親は行方が知れませんし、このような事が無ければ訪れる事も無い、捨て去った場所と言うのが近いかもです」

「そっか……なんかすまんな、余計な話になったみたいで」

「事実について誰かが謝罪する必要は何処にもないです。事実に至るまでの過程においては非を持つ人間もいるのでしょうが、少なくともこの話題において貴方に非はありません。私が勝手に話しただけです」

「でもさ、親御さんがいないのは前にも聞いてたじゃん。俺が不用意だったわ、悪い。もう行こうぜ」

「時々、貴方のその善人ぶりが本気で腹立たしくなります。私に取り入ったところで何も得はありません。むしろそれは不幸な結果しか生まないですよ」

「悪いと思ったから悪いって言っただけで他意はねえよ別に」

「…………」

 踵を返して俺達はサチの家へと戻った。ユカはずっと不機嫌そうな表情をしていた。何か言いたげにも見えるけれど、敢えて俺からは何も言わない。どうせ何かを俺が言ったところでこいつは、小難しい屁理屈でもって俺を煙に巻くに決まっているのだ。それこそ、俺が何かしらの下心をもって気をつかっているみたいな構図になりかねないし、それは俺としては却下だ。あったとしてもせいぜいミジンコやゾウリムシほどでしかないであろう下心に関してあれやこれや言われるなんて、それこそ不幸以外の何物でも無いのだ。

 サチ宅前に戻ると、既に準備完了したらしいサチが、黒くて地味な旅行鞄一つを提げて待機していた。あまり季節感の感じられない黒いジャケットに、白地、英語でなにがしか書いてあるシンプルなTシャツ、やや短めのデニムスカート。サチ曰く、コンセプトは格好良くて可愛らしい、との事だけれど、俺にはよく分からない。せいぜい、暑そうだなってくらいだ。そしてユカは、サチのその姿だけでかなりの御立腹らしかった。眉間に深い皺がくっきり。

「ただの旅行じゃないんですよ。本当にもう……」

「ユカちゃんにも何か服、貸してあげようか? そのスウェット、酷過ぎ」

「……放っておいて下さい。出発します」

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