奥出雲に、その神社はあった。
『ようするに、だ』
『信心が集まればよいのであろう?』
『つまり誰もが訪れたくなるようにする、ということだな』
『ならば答えは一つよ』
『いやあ、我々らしさも出さねばならないと言っても、なあ』
げらげらげらと、八つの首を持つ大蛇は笑った。
というわけで、八岐大蛇は同じ境内に生息しているキツネの
ただ。
人の手を借りないと、実現が不可だというだけだ。
「ではまずダンジョン作りましょう。アスレチックのダンジョンを作って。で、それから酒屋さんにお話を持って行きましょう」
『そうなるよな』
『しかしなあ』
『こんな山奥まで配達に来てくれるかね』
キョトンとした顔で、清涼は首をひねった。確かにこの社は山の上にあると言っていい。まず長い長い階段を登る必要があるからだ。近所に酒屋はない。
「階段の下に、露店を出して貰えばいいじゃないですか」
『出して貰えるかねぇ』
「それなりの売り上げになるころには、出して貰えるようになると思いますよ」
そのそれなりの売り上げになるころ、が、問題だというのに。
「というわけでまずダンジョンを作ります。ダンジョンが出来上がった頃、天狗をお呼びして、動画を撮ります」
『ああ、あれか』
『まあ確かに内容分かっても困らんわな』
「はい。何ならアスレチック自体は簡単で構いません」
『構わんのかの?』
「かまいません。簡単に名剣を手に入れることが出来る、ということが大事なのです」
人間という生き物は、こちらが思っているほど難題が好きではない。簡単に名剣が手に入るのであれば、全力を注ぐだろう。
『お主がそういうならそうだろうがな』
『いやまあ我らも酒が飲めればそれでいいかと思っているから、同じでは?』
『……同じだわな』
『利害の一致! 利害の一致と言い換えるのだ!』
「あとはそうですね」
さらりと、清涼は大蛇たちのやり取りを受け流した。キツネは兄弟も家族も多いから、大人数のやり取りに慣れている。話を進めたいときは、ぶった切って進めてしまうに限るのだ。俺の話を聞け。
「SNSで、本日作った剣、を、アップしていきましょう」
『そんなことしてよいのか』
「良いと思います。まあ、何と言いますか。当たりくじの内容は伝えておくべきではないか、と」
そうして。
着々と準備は整っていった。