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1.トラブル

 セーラー服の少女は車窓から河川を眺めながら欠伸をした。まだ昼の電車の中。ポツポツとサラリーマンとマダムが乗るだけで、座る席も空いていた。高校は気まぐれで早退して来た。

(眠い……)

 イヤホンで歌を聴きながら、目を閉じる。

 ♪〜♪♪〜──

 プツンッ『本日も加速する戦火の中、大統領は「降伏はしない」と意思表明を改めて発表しました』

 突如耳に流れるニュース。無料視聴アプリだ。こうして時折ニュースが流れる。

 現在、先進国の三割が既に戦争を初めていた。

(日本が平和っていつまでなんだろ ? 自衛隊は既に海外支援に行ってるのに……ま、わたしには関係ないけど)

 スマートフォンを取り出し、スキップボタンを押そうとした時、微弱な振動を感じた。

 顔を上げた瞬間、大きな異音をあげて列車が脱線した。

「きゃっ !! 」

 横倒しになりそのまま滑る車体。

 少女は運良く背もたれに丸まり、必死でしがみついていた。

 ゴ……ウン……

 大きな砂煙を上げながら、列車は止まった。衝突を回避したのは運が良かったが、少女が身を起こすと突然、上側になってしまったドアが開いた。

「シルバーのビジネスバッグだ。後ろ見てこい」

「了解」

「目撃者は殺れ」

 数人の武装兵が侵入してきた。ドアから中に飛び降りた所で、少女と早々に視線が合ってしまった。

「……痛っ……何…… ? 」

「こいつ……隊長 ! 女が ! 」

「殺せ」

 兵が無情にも銃口を向けた。

「すまんな」

 トリガーが引かれる直前。少女のプリーツスカートがひらりと舞う。

「ゴハッ !! 」

 思い切り腹に沈む蹴り。

「何やってんだ ! さっさと殺せ……ウガァ !! 」

 よろけた兵の太腿からナイフを抜き、思い切り投げつける。運良くだ。運良くナイフは男の首を貫く。

 侵入してきた男たちは、予想外の少女の存在と手馴れた動きに混乱していた。

「早く殺れ ! 」

「こいつが先だ ! 」

 およそ十人。

 少女一人で対抗できる訳もなく。

 ドボッ !!

 大きな膝蹴りがセーラー服にくい込んだ。

「くっ……」

 少女は割れたガラス片の上に沈んだ。

「エルザスタードの奴か ? 」

「いや、資料にもいない顔ですね」

「飼いならせれば力になるかもしれん。縛っておけ。連れて帰る」

 少女の側に転がったバッグの中身もめちゃくちゃに散乱していた。その中には生徒手帳も。

『日々川高校 三年 星野 美玲』

 季節は冬。

 この列車事故は雪とバラストの整備不良による事故と報道された。

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