「じゃあかしいわ! てめぇは戦闘じゃ役に立たねぇんだからさっさとどっかに隠れてろ三下!」
両手に手にした
「聞いてんのか! てめぇの首の上にあんのは
再度少女が叫ぶ。ようやく事態が飲み込めたのか、青年は狼狽えながらも立ち上がり逃げようと動き出そうとした刹那。青年の横には金髪の優男が
「逃がさないよ」
王子がその
「ちっ! もたもたしてんじゃねえぞ
苛立ちながら少女が三度青年へと叫ぶ。しかし、青年の視界には少女は映っていなかった。その視線の先には一人の黄金のドレスを着た女。
「ダメだ赤ずきん。シンデレラに追いつかれた」
その言葉に赤ずきんと言われた少女はドレスの女……シンデレラを一瞥した後、有無を言わさず
銃弾がシンデレラに届くその瞬間にどこかから白い鳩が飛び出し、その銃弾を悉く弾き飛ばしていた。その白い鳩は広げた翼を器用に折りたたむとシンデレラの肩へととまった。いつの間にか彼女の横には先程の王子も立っていた。
「
赤ずきんの挑発に意も解さぬようにいたって冷静な声が響く。
「品性がないわね
「けっ。てめぇはあたし以下の奴隷生まれじゃねぇか。品性以前に学すらねぇだろうが。玉の輿に乗っただけの売女風情が!」
そう言うと赤ずきんの手にした
「
シンデレラがそう叫ぶと、大地から白い巨大な壁が彼女の眼前を覆い、王子と共に二人の姿をその内へと隠した。赤ずきんの放った銃弾は悉くをその壁に防がれる。
「ちっ。
中指を立てるかの如く悪態をつきながら絶えず銃撃を浴びせている赤ずきんではあるが、白亜の城に守られたシンデレラには一発の銃弾すらも届くことはなかった。
「おい、
赤ずきんは隣に立っている青年の顔を覗き込む。一四〇センチ程しかない赤ずきんと青年の身長差では上目遣いになるしかなかった。口は悪いが赤ずきんは紛れもない美少女であり、その上目遣いは庇護欲を掻き立てる。
その視線にも青年はお構いなしに、頭を抱えながらも応える。
「銃器でなくちゃダメなんだよな? 確か
「いいんだよそれで。お前の記憶はあたしの記憶だ。思い描け! あとは勝手に読み取る!」
青年は言われた通り
すると赤ずきんの持っていた
「ひゅー。いい
そう言うと赤ずきんは腹這いになりながらその大型の銃を構える。
刹那。
爆音とともに
壁の後ろにいたシンデレラと王子もまさか破られるとは思っておらず、崩れかけた白壁の向こうで驚愕の表情を浮かべていた。
間髪入れず二射目に入ろうとする赤ずきんより先に、シンデレラはその手から白い光を出したかと思うと、あたりは一瞬のうちに霧のような灰に包まれた。その灰は赤ずきんたちをも飲み込み周囲の視界を完全に奪っていた。
「げっほ、げほっ……、赤……ずきん! 大丈夫か!」
視界が灰に染まる中、青年が咳き込みながらもすぐ横にいたはずの赤ずきんに声を掛ける。
「ちっ。灰被りが! 本当に灰を被りやがった! 有視界も感知も効かねぇ。離れんじゃねぇぞ
辺りを静寂が支配し、やがて段々と視界が開けていく。その後には無残にもボロボロに穿かれた城壁の残骸のみが残されており、
「逃がしたか。まあいい。今日の所は格の差だけ見せつけられればな。ちっ、身体中が灰塗れだぜ。おい、