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第31話 試練の始まり

白崎先生の拳が迫る。

俺はその動きを見極め、必死に反応した。


「来るっ!」


俺は全身を使って避けるべく、右へと飛び退いた。しかし、先生の拳はそれを予測していたかのように、俺の体にぴったりと追いすがる。


ガシッ!


その瞬間、俺は腕を掴まれ、無理やりリングの中央に引き戻された。


「どうした? 逃げるつもりか?」


白崎先生の声が冷たい。

それでも俺は負けるわけにはいかない。


「逃げません! 俺は——!」


その言葉と共に、全力で膝を突き出す。

だが、白崎先生はそれすらも読んでいたかのように、軽々とその攻撃をかわし、俺の背中に手を当てた。


「——ッ!」


俺の体が一瞬で宙に浮き、勢いよく床に叩きつけられる。

ドン!


「うっ……」


痛みが全身を駆け巡る。

だが、それでも俺は立ち上がろうと必死に体を起こす。


「まだ終わってない!」


立ち上がり、足元をしっかりと踏みしめた。

どんなに痛くても、この試練から逃げることはできない。


「いい根性だ」


白崎先生は少しだけ歩み寄り、俺の肩に手を置いた。

その手は優しさを感じさせるものではなく、まるで「覚悟」を試すかのように重かった。


「だが、そう簡単にはいかない。お前の限界を、知るべきだ」


その言葉と共に、白崎先生は再び拳を振り上げた。


「来い!」


俺はその瞬間、意識を一点に集中させた。

無駄な思考を排除し、白崎先生の動きに全神経を注ぐ。


——くる。

拳が俺の顔を狙って迫る。

その速度は尋常ではないが、俺はその一瞬を見逃さない。


「今だ!」


俺は身を低くして、白崎先生の足元を狙って滑り込んだ。


その瞬間、先生の足元がわずかに崩れる。


「来た!」


俺はその隙をついて、一気に体重を乗せた膝蹴りを放つ。

だが、白崎先生は軽く体をひねり、その攻撃をかわした。


「お前はまだ甘いな」


白崎先生の言葉が耳に届いた瞬間、俺の心臓が激しく鼓動を打つ。

まだ終わりではない——そう、自分に言い聞かせた。


「俺は、まだ終わらない!」


その叫び声が、何かを変えるように感じた。

少なくとも、俺の中に新たな力が湧き上がってきた。


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