「——起きろ」
頭がズキズキと痛む。
目を開けようとするが、まぶたが鉛のように重い。全身が軋み、呼吸するだけでも肺が痛んだ。
「おい、いつまで寝てるつもりだ?」
聞き覚えのある声——白崎先生だ。
俺はゆっくりと目を開けた。視界がぼやけ、光がまぶしい。ここは……?
「気がついたか」
視界が徐々にクリアになり、目の前には白崎先生が立っていた。腕を組み、呆れたように俺を見下ろしている。
「……俺、どうなったんですか」
「ぶっ倒れたんだよ。完全に意識を飛ばしてな」
白崎先生は溜息をつきながら、俺の前にしゃがんだ。
「だが、よく立ち上がったな。あそこで完全に心が折れる奴も多い」
「……」
俺はゆっくりと上体を起こそうとするが、体が思うように動かない。
「無理するな。お前は今、限界ギリギリだ。だが——」
白崎先生はニヤリと笑った。
「ここからが本番だ」
俺の背筋にゾクッとした感覚が走る。
「……本番?」
「そうだ。お前は今、一つの壁を超えかけてる。そのまま行けば、次のステージに進める」
白崎先生の言葉に、俺はゴクリと喉を鳴らす。
「次の……ステージ?」
「そうだ。今までのお前は、ただの"基礎"を積み上げてきただけにすぎない。でもな——」
白崎先生の目が鋭く光る。
「ここから先は、"才能"と"覚悟"の世界だ」
俺は思わず息をのんだ。
「……どういう意味ですか?」
「シンプルな話だ」
白崎先生は立ち上がり、俺を見下ろす。
「お前がここで諦めるなら、それまでの男だ。でも、もし"覚悟"があるなら——」
白崎先生の拳が、バチッと鳴る。
「ここから先は、"本物の戦い"を教えてやる」
俺の中で、何かが燃え上がった。
「……やります」
体はボロボロだった。それでも——
「どんな地獄でも、乗り越えてみせます」
俺は歯を食いしばり、立ち上がった。
白崎先生はニヤリと笑った。
「いい目になったな」
そして——
「じゃあ、地獄の扉を開けるぞ」
俺の"本当の戦い"が、今始まる。