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第29話 目覚め

「——起きろ」


頭がズキズキと痛む。


目を開けようとするが、まぶたが鉛のように重い。全身が軋み、呼吸するだけでも肺が痛んだ。


「おい、いつまで寝てるつもりだ?」


聞き覚えのある声——白崎先生だ。


俺はゆっくりと目を開けた。視界がぼやけ、光がまぶしい。ここは……?


「気がついたか」


視界が徐々にクリアになり、目の前には白崎先生が立っていた。腕を組み、呆れたように俺を見下ろしている。


「……俺、どうなったんですか」


「ぶっ倒れたんだよ。完全に意識を飛ばしてな」


白崎先生は溜息をつきながら、俺の前にしゃがんだ。


「だが、よく立ち上がったな。あそこで完全に心が折れる奴も多い」


「……」


俺はゆっくりと上体を起こそうとするが、体が思うように動かない。


「無理するな。お前は今、限界ギリギリだ。だが——」


白崎先生はニヤリと笑った。


「ここからが本番だ」


俺の背筋にゾクッとした感覚が走る。


「……本番?」


「そうだ。お前は今、一つの壁を超えかけてる。そのまま行けば、次のステージに進める」


白崎先生の言葉に、俺はゴクリと喉を鳴らす。


「次の……ステージ?」


「そうだ。今までのお前は、ただの"基礎"を積み上げてきただけにすぎない。でもな——」


白崎先生の目が鋭く光る。


「ここから先は、"才能"と"覚悟"の世界だ」


俺は思わず息をのんだ。


「……どういう意味ですか?」


「シンプルな話だ」


白崎先生は立ち上がり、俺を見下ろす。


「お前がここで諦めるなら、それまでの男だ。でも、もし"覚悟"があるなら——」


白崎先生の拳が、バチッと鳴る。


「ここから先は、"本物の戦い"を教えてやる」


俺の中で、何かが燃え上がった。


「……やります」


体はボロボロだった。それでも——


「どんな地獄でも、乗り越えてみせます」


俺は歯を食いしばり、立ち上がった。


白崎先生はニヤリと笑った。


「いい目になったな」


そして——


「じゃあ、地獄の扉を開けるぞ」


俺の"本当の戦い"が、今始まる。


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