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第25話 交錯する思惑

ビルの非常階段を駆け下りる音が響く。


俺の手を引かれながら走るひかりの息遣いが荒い。


俺自身も呼吸が乱れていたが、止まるわけにはいかなかった。


「——このまま外に出れば、逃げられる!」


そう確信した瞬間、階段の踊り場に差しかかったところで——


「遅い」


鋭い声が響いた。


次の瞬間、俺たちの前に影が降ってきた。


「っ!?」


俺たちは急ブレーキをかける。


目の前に立っていたのは——


「白崎……先生……?」


けれど、何かがおかしい。


彼の周囲の空気が"揺らいで"いる。


まるで、熱で歪んだ景色のように——


「……残念だよ、佐倉」


静かにそう言うと、白崎先生は手を軽く振った。


——その瞬間、空気が"弾けた"。


「っ——!」


俺はとっさにひかりを抱き寄せる。


——ゴォォォォォッ!!


次の瞬間、俺たちの背後で爆風のような衝撃が走った。


(これは……能力か!?)


恐る恐る振り返ると、さっきまで俺たちがいた階段の壁がえぐれ、大きな穴が空いていた。


——これは、完全に"攻撃"だ。


「先生……本気で、俺を捕まえるつもりか……?」


そう呟くと、白崎先生は静かに目を細めた。


「最初から、そう言ったはずだ」


先生の足元が"揺れる"。


(……違う、あれは"浮いている"のか!?)


よく見ると、先生の足元の床がわずかに"浮遊"していた。


まるで、重力そのものを操っているかのように——


(……まさか、これが白崎先生の"能力"……?)


「これ以上、君の暴走を放置するわけにはいかない」


白崎先生が、手を軽く振る。


——その動きに合わせて、空間が歪んだ。


「——くるぞ!」


俺はひかりを引き寄せ、横に飛ぶ。


次の瞬間——


ズドォォォォォンッ!!


俺たちがいた場所の床が"押しつぶされた"。


いや、違う。


まるで、見えない"重圧"が一瞬でかかったように——


「これが……白崎先生の能力……?」


「その通り。『重力制御』だ」


静かに告げる白崎先生。


「この力の前では、君の逃走は不可能だ」


——そんなの、分からない。


俺は拳を握りしめた。


「……だったら、俺も"全力"でやるしかないよな」


そう言って、俺は意識を集中させる。


——頭の奥で"視界"が広がる。


(……見える……!)


白崎先生の動きが、"先読み"できる。


先生が次に"どこに重圧をかけるか"——


——分かる!


「——ひかり!」


「うん!」


ひかりが俺の合図に即座に反応し、俺たちは再び駆け出す。


白崎先生が再び手を振る——


その瞬間、俺はひかりを抱えて思いきり"跳んだ"。


——ドォンッ!!


直前までいた場所の床が"圧縮"される。


ギリギリの回避だった。


「……なるほど、やはり"覚醒"しつつあるな」


白崎先生が静かに言う。


俺は息を整えながら、先生を睨んだ。


「先生がどれだけ強かろうと、俺たちは絶対に"逃げる"」


その瞬間——


俺の中で、"新たな力"が目覚めるのを感じた。


これは、俺自身の"選択"の物語。


そして——


"次の一手"が、勝負を決める。

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