ビルの非常階段を駆け下りる音が響く。
俺の手を引かれながら走るひかりの息遣いが荒い。
俺自身も呼吸が乱れていたが、止まるわけにはいかなかった。
「——このまま外に出れば、逃げられる!」
そう確信した瞬間、階段の踊り場に差しかかったところで——
「遅い」
鋭い声が響いた。
次の瞬間、俺たちの前に影が降ってきた。
「っ!?」
俺たちは急ブレーキをかける。
目の前に立っていたのは——
「白崎……先生……?」
けれど、何かがおかしい。
彼の周囲の空気が"揺らいで"いる。
まるで、熱で歪んだ景色のように——
「……残念だよ、佐倉」
静かにそう言うと、白崎先生は手を軽く振った。
——その瞬間、空気が"弾けた"。
「っ——!」
俺はとっさにひかりを抱き寄せる。
——ゴォォォォォッ!!
次の瞬間、俺たちの背後で爆風のような衝撃が走った。
(これは……能力か!?)
恐る恐る振り返ると、さっきまで俺たちがいた階段の壁がえぐれ、大きな穴が空いていた。
——これは、完全に"攻撃"だ。
「先生……本気で、俺を捕まえるつもりか……?」
そう呟くと、白崎先生は静かに目を細めた。
「最初から、そう言ったはずだ」
先生の足元が"揺れる"。
(……違う、あれは"浮いている"のか!?)
よく見ると、先生の足元の床がわずかに"浮遊"していた。
まるで、重力そのものを操っているかのように——
(……まさか、これが白崎先生の"能力"……?)
「これ以上、君の暴走を放置するわけにはいかない」
白崎先生が、手を軽く振る。
——その動きに合わせて、空間が歪んだ。
「——くるぞ!」
俺はひかりを引き寄せ、横に飛ぶ。
次の瞬間——
ズドォォォォォンッ!!
俺たちがいた場所の床が"押しつぶされた"。
いや、違う。
まるで、見えない"重圧"が一瞬でかかったように——
「これが……白崎先生の能力……?」
「その通り。『重力制御』だ」
静かに告げる白崎先生。
「この力の前では、君の逃走は不可能だ」
——そんなの、分からない。
俺は拳を握りしめた。
「……だったら、俺も"全力"でやるしかないよな」
そう言って、俺は意識を集中させる。
——頭の奥で"視界"が広がる。
(……見える……!)
白崎先生の動きが、"先読み"できる。
先生が次に"どこに重圧をかけるか"——
——分かる!
「——ひかり!」
「うん!」
ひかりが俺の合図に即座に反応し、俺たちは再び駆け出す。
白崎先生が再び手を振る——
その瞬間、俺はひかりを抱えて思いきり"跳んだ"。
——ドォンッ!!
直前までいた場所の床が"圧縮"される。
ギリギリの回避だった。
「……なるほど、やはり"覚醒"しつつあるな」
白崎先生が静かに言う。
俺は息を整えながら、先生を睨んだ。
「先生がどれだけ強かろうと、俺たちは絶対に"逃げる"」
その瞬間——
俺の中で、"新たな力"が目覚めるのを感じた。
これは、俺自身の"選択"の物語。
そして——
"次の一手"が、勝負を決める。