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第24話 目覚めの先に

意識の奥で、声が聞こえた。


(……まだ終わってない……)


(……お前は、ここで倒れるべきじゃない……)


それは誰の声なのか分からなかった。


けれど、不思議と懐かしく、温かい響きを感じた。


——目を覚ませ。


その言葉とともに、俺の意識は引き戻された。


「……っ!」


目を開けた瞬間、俺は強烈な頭痛に襲われた。


けれど、今はそんなことを気にしている場合じゃない。


「佐倉くん!」


ひかりの声がすぐそばから聞こえた。


俺は地面に崩れ落ちていたらしく、ひかりが必死に俺を支えていた。


「……大丈夫か?」


声がかすれる。


けれど、なんとか立ち上がろうとすると——


「無理をするな」


白崎先生がすぐ目の前に立っていた。


冷静な目で俺を見下ろし、右手にはさっきの装置を握っている。


「君の能力は、すでに限界を迎えつつある」


「……限界?」


俺が聞き返すと、白崎先生はゆっくりと頷いた。


「君は"適応者"として覚醒し始めたが、その力を制御するにはまだ早すぎる。無理に能力を使おうとすれば、脳に過剰な負荷がかかり、最悪の場合——」


先生の言葉を待たずに、俺は自分の頭を押さえた。


(……確かに……最近、能力を使うたびに痛みが増していた……)


「そのまま使い続ければ、おそらく君は"暴走"する」


「暴走……?」


先生の言葉に、不吉な予感が走る。


「能力が制御不能に陥り、君自身の意思とは関係なく発動し続ける状態だ。その結果、周囲に甚大な影響を及ぼし、最悪の場合——君自身が崩壊する」


「……っ!」


俺は息をのんだ。


そんなこと、一度も考えたことがなかった。


「だからこそ、君を"確保"する必要があるんだ」


先生の言葉に、俺は拳を握りしめた。


「ふざけるな……!そんなの、俺が望んだことじゃない!」


「望んでいなくても、事実は変わらない」


白崎先生の声は淡々としていた。


まるで、すべてが決まっているかのように。


けれど——


(……俺は、本当にこのまま捕まるのか?)


いや、違う。


俺にはまだ、やるべきことがある。


——そうだ。俺は、この力を"誰かを守るため"に使うと決めたんだ。


「——ひかり、走れるか?」


「え?」


俺はひかりの手を強く握った。


「まだ終わってない。ここで捕まるわけにはいかないんだ」


ひかりは一瞬驚いたようだったが、すぐに力強く頷いた。


「……うん!」


その瞬間、俺の中で何かが弾けた。


——"能力を使うな"?


違う。


俺は"使わない"んじゃない。"使いこなす"んだ。

そう思った瞬間、俺の頭の中で世界が"広がった"。


白崎先生の思考が——一瞬だけ、"見えた"。


(——しまった、まさか……!)


先生の驚きが伝わる。


俺はその一瞬の隙を突き、ひかりの手を引いて走り出した。


「——待て!」


白崎先生の声が響くが、もう遅い。


俺たちは非常階段を駆け下り、一気に出口へ向かう。


——俺の戦いは、まだ終わらない。


これは、俺自身の"選択"の物語だ。


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