目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第18話 変化の兆し

「よし、とりあえずいつも通り学校行こっか!」


ひかりが明るく言い、俺は小さく頷いた。


(今まで通り……か)


何も考えずに過ごすのは無理かもしれないが、必要以上に悩むのはやめよう。そう思いながら、俺は教室に向かった。


しかし——


教室に入った瞬間、妙な違和感があった。


(ん? なんだこの感じ……?)


ざわ……


周りのクラスメイトたちの心の声が、これまでとは違う響き方をしていた。


——佐倉、大丈夫かな……


——なんか最近、雰囲気変わったよな……


——もしかしてアイツ、能力が進化してるんじゃ……?


(!?)


俺は思わず立ち止まった。


(どういうことだ? なんでみんな俺のことをそんな風に……?)


今までなら、クラスメイトの心の声はもっとぼんやりしていた。


それが今は、まるで俺に直接語りかけるみたいにはっきり聞こえる。


「……佐倉?」


ひかりが不安そうに俺を見た。


「お前、顔色悪いよ?」


「いや、ちょっと……」


俺は深呼吸した。


(落ち着け、俺。考えすぎかもしれない……)


「おはよー!」


そんな俺の思考を遮るように、クラスのムードメーカー・石田が俺の肩を叩いた。


「佐倉、最近ちょっとカッコよくなったんじゃね?」


「……は?」


「なんか、オーラが変わったっていうかさ、前より自信ある感じ?」


「そ、そうか?」


「うん、なんか"デキる男"の雰囲気出てきたよなー」


("デキる男"ってなんだよ……)


俺が困惑していると、別のクラスメイトも話に加わった。


「確かに、最近ちょっと雰囲気違うよな」


「前より落ち着いてるっていうか……」


「なんか目つきも鋭くなったよね」


「もしかして、能力が強くなったとか?」


最後の言葉に、俺はビクリと反応した。


「え、いや……そんなことは……」


「でも、ほら、超能力って進化することあるらしいじゃん? チョイ能力者でも、たまにすごい力を持つやつが出るとか……」


(こいつら、どこでそんな話を……)


俺は平静を装おうとしたが、内心焦っていた。


「な、なんだよ。俺が進化したらなんか問題あるのか?」


「いや、そういうわけじゃないけどさ……」


「……でも、進化しすぎると"消える"って噂もあるよな?」


「!!!」


誰かが呟いたその言葉に、教室の空気が一瞬ピリッと張り詰めた。


(なんでそんな話が広まってるんだ……?)


「まぁまぁ、佐倉はそんな危ないやつじゃないだろ!」


石田が場を和ませるように笑ったが、俺は気が気じゃなかった。


(このままじゃ、俺……マジで"目をつけられる"んじゃ……)


「……ちょっと、外の空気吸ってくる」


俺はそう言い残し、教室を飛び出した。


屋上のフェンスにもたれかかりながら、俺は息を整えた。


(やっぱり、能力の進化が進んでる……)


心の声が前よりも鮮明に聞こえる。


それに、"俺の変化"が周りに伝わり始めている。


(このままだと、本当に危ないかもしれない……)


「——やっぱり、お前も気づいてたか」


突然、背後から声がした。


「……!!」


振り返ると、そこには黒髪の長身男子——風間が立っていた。


風間は、クラスでも一匹狼タイプの男だ。無口で、他人とあまり関わろうとしない。


「風間……?」


「お前、最近"聞こえる範囲"が広がっただろ?」


「!!!」


俺は息をのんだ。


「……どうしてそれを?」


「俺も、お前と同じ"進化するチョイ能力者"だからな」


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?