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第16話 特別なチョイ能力者

「特別って……どういうことですか?」


俺は先生の言葉の意味を理解できずにいた。


「普通の超能力者は、生まれたときからその力を持っている。しかし、"進化したチョイ能力者"は後天的に能力を拡張していく……つまり、自分の意思次第で能力の限界を超えていく可能性があるんだ」


「限界を超える……?」


「そう。例えば、今の君の能力は"目が合った相手の心を読める"というものだった。でも、今は"選んで"読むことができるようになったんだろう?」


「……はい」


「なら、次にできることは何だと思う?」


「……次?」


俺は考え込んだ。


選んで心を読むことができるようになった。


じゃあ次は……


「……もっと長い時間、心を読めるようになる?」


「正解だ」


先生は静かに微笑んだ。


「チョイ能力は"制限"があるからチョイ能力と呼ばれている。でも、その制限が一つずつ外れていくとどうなると思う?」


俺は息をのんだ。


それってつまり……


「俺は"完全な読心能力者"になる……?」


「いや、それだけじゃない」


先生の声が、急に低くなった。


「君が進化を続ければ、"心を読む"だけじゃなく、"心を操る"こともできるようになるかもしれない」


「!!!」


心を操る……?


「そんなこと、本当に……?」


「可能性はある。実際、過去に進化したチョイ能力者の中には、"洗脳"のようなことができるようになった者もいる」


俺はゾッとした。


心を操る……?


それって、もう"チョイ"どころじゃない。


「……俺がそんな力を手に入れたら、どうなるんですか?」


「さあね」


先生は少し寂しそうな顔をした。


「ただ……"進化しすぎたチョイ能力者"は、例外なく世界から消えている」


「……消えてる?」


俺は思わずごくりと唾を飲み込んだ。


「どういうことですか?」


「つまり——"管理"される、ということだよ」


先生の言葉に、ひかりが小さく悲鳴を上げた。


「……そんな……」


「進化しすぎたチョイ能力者は、政府や秘密機関に目をつけられる。そして、ある日突然"行方不明"になる」


「……殺されるってことですか?」


「さあ、それは分からない。でも、一つだけ確かなのは……"彼らは二度と戻ってこない"ということだ」


俺は背筋が凍るのを感じた。


(もし俺がこのまま進化し続けたら……)


(いつか、俺も"消える"のか?)


「……だったら、進化しなければいいんじゃ?」


ひかりが不安そうに俺を見た。


「能力を抑えれば、目をつけられずに済むかもしれないよ?」


「……そうかもしれない」


でも——


「……でも、それって俺が"俺であること"を否定するってことだろ?」


俺は自分の手を見つめた。


「能力が進化し始めているのに、それを無理やり止めるなんて……そんなこと、できるのか?」


先生はじっと俺を見つめていた。


「君が選べる道は二つだ」


「二つ?」


「一つは、能力を制御し、進化を止めて"普通のチョイ能力者"として生きる道」


「……」


「もう一つは、進化を受け入れ、"完全な能力者"になる道だ」


「でも、それって……」


「そう。"完全な能力者"になれば、君は"管理"される可能性が高くなる」


先生は静かに言った。


「君は、どちらの道を選ぶ?」


俺は答えられなかった。


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