放課後、俺とひかりは再び白崎先生の動きを探るために校内を歩き回った。
「でもさ、先生が何者か分かったところで、どうするの?」
「……分からん。でも、俺の能力が"チョイ"じゃなくなってるって話を聞いたら、何か反応するかもしれない」
「なるほどね。でも先生、そんな簡単にボロ出すかな?」
「……分からんけど、やるしかない」
そうして職員室の前にたどり着くと、ちょうど白崎先生が出てくるところだった。
「……おや、君たち。何か用かい?」
「……先生に聞きたいことがあるんです」
「ふむ、いいだろう。場所を変えようか」
そう言って、先生は俺たちを資料室へと案内した。
「で?聞きたいこととは?」
白崎先生は腕を組んで俺を見つめた。
俺は一瞬ためらったが、意を決して言った。
「……俺の能力が進化してるみたいなんです」
「……ほう?」
「今まで目が合った瞬間に"勝手に"心を読んでしまっていたのが、今は"選んで"読むことができるようになりました」
先生の表情が少し変わった。
「……それは興味深い話だね」
「先生は……この"チョイ能力"が進化することを知っていたんですか?」
先生はしばらく黙った後、静かに言った。
「……ああ、知っていたとも」
「……やっぱり」
俺の直感は当たっていた。
「どうして黙っていたんですか?」
「君たちに余計な心配をさせたくなかった。それに、"進化"するチョイ能力者はごくわずかだ。まさか、君がその一人だとは思わなかったよ」
「じゃあ先生は、俺たちを監視してたんですか?」
先生は少し考えた後、小さく笑った。
「……監視、というよりは"観察"だな」
「……違いがあるんですか?」
「もちろん。私は君たちをどうこうしようとは思っていない。ただ、"見届ける"だけだ」
「……何を?」
「チョイ能力者が"真の能力者"へと進化する瞬間を、だよ」
俺とひかりは顔を見合わせた。
「……つまり、俺は"チョイ能力者"じゃなくなるってことですか?」
「……その可能性は高いね」
先生の言葉を聞いた瞬間、俺はゾクッとした。
自分が何者か分からなくなるような……そんな感覚。
「……でも、それってつまり"普通の超能力者"になるってことですよね?」
「いや、違う」
先生は静かに首を振った。
「進化したチョイ能力者は、普通の超能力者よりも"特別"なんだよ」
俺の背中に、冷たい汗が流れた。
(……特別?)
俺は一体、何になろうとしているんだ?