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第13話 チョイじゃなくなる日

「……なんか、怖くなってきた」


自分で言っておいてアレだけど、マジでゾッとする。

目が合っただけで、"選んで"人の心を読めるなんて、もはや"チョイ能力"とは言えない。


「ねえ佐倉くん、これってさ……もし先生にバレたらやばくない?」


ひかりが真剣な顔で言った。


「……確かに」


白崎先生は"チョイ能力者の進化"について何か知っている。俺がこのまま能力を伸ばしたら、確実に目をつけられる。


「でも、抑えることもできないんだよな……」


能力が"目覚める"って、こういうことなのかもしれない。

自分じゃ制御できないまま、勝手に力が育っていく。


「どうしよう……」


「うーん、まずは白崎先生について、もうちょっと詳しく調べたほうがいいよね」


「だな。……って、授業始まるぞ!」


俺たちは慌てて席についた。


《昼休み》


昼休みになると、ひかりが俺の腕を引っ張った。


「佐倉くん、ちょっと屋上行こ!」


「え、なんで?」


「人が少ないところで話したほうがいいでしょ!」


ひかりの勢いに押されて、俺は仕方なく屋上へ向かった。幸い、誰もいなかった。


「で? なんかいい案でも思いついたのか?」


「うん。さっきの授業中に考えてたんだけどさ、佐倉くんの能力が進化した理由って、何かきっかけがあったんじゃない?」


「きっかけ?」


「例えば、最近になって誰か特別な人と接触したとか、変な事件に巻き込まれたとか……」


「……変な事件って、俺、ほぼ毎回巻き込まれてるんだが?」


「そ、それはそうだけど! なんかいつもと違う感じのことなかった?」


うーん……いつもと違うこと。

最近で言えば……


「白崎先生が俺に"進化の兆し"があるって言ってきたことか?」


「それだよ!」


ひかりが勢いよく指をさしてくる。


「先生、絶対何か知ってるよ! しかも、佐倉くんの能力の進化が関係してるんじゃない?」


「まぁ、そうだとは思うけど……どうやって調べるんだ?」


「うーん……」


ひかりが腕を組んで考え込む。


「やっぱり……尾行とか?」


「いや、バレるだろ」


「でも、直接聞いたら絶対はぐらかされるし……」


「それもそうだけど……」


俺たちがどうするか考えていると、屋上のドアがギィッと開いた。


「おい、なにしてんだよ」


現れたのは風間だった。


「げっ、風間……」


「なんだその反応」


風間は軽くため息をつきながら、俺たちの隣に来る。


「さっきからこそこそ話してたろ。なんか面白いことでも企んでんのか?」


「いや、別に……」


適当に誤魔化そうとしたが、ひかりがすかさず口を開いた。


「佐倉くんの能力が進化したんだよ!」


「お、おい!」


「は?」


風間は眉をひそめた。


「進化って、どういうことだよ?」


「目が合ったら心が読めるだけだったのに、"選んで"読めるようになったんだって!」


「……お前、それもう普通にヤバいやつじゃね?」


「俺もそう思う……」


風間は腕を組んで考え込んだ。


「で、それが白崎先生と関係あるって?」


「うん。でも証拠はないし、どう調べるか迷ってて……」


「だったら、シンプルに探れよ」


風間が言う。


「探るって、どうやって?」


「白崎先生の授業中、"試しに"心を読んでみろよ」


「えっ……?」


俺は言葉を詰まらせる。


「いやいやいや、無理だろ!」


「なんで?」


「だって先生だぞ!? もしバレたら——」


「そもそも、先生の心を読めるかどうかすら分かってねえんだろ? だったら、試すしかねえじゃん」


「それは……そうだけど……」


「授業中なら、先生はお前に集中してない。逆に今がチャンスだろ」


「……確かに」


ひかりも頷いた。


「うーん……」


俺は頭を抱える。


白崎先生の心を読む——

それは、俺にとって未知の領域だ。


でも、このまま何もしなかったら、先生が何を知っているのか永遠に分からない。


「……分かった。次の授業、試してみる」


「よし、それでこそ主人公!」


ひかりが満面の笑みで親指を立てた。


風間は無言で頷く。


……やるしかない。


俺はゆっくりと息を吸った。


次の授業、白崎先生の心を"読んで"みる——!

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