体育祭が終わり、クラスメイトたちは盛り上がりながら打ち上げを開いていた。しかし、佐倉迅はそのことをまったく知らず、普段通り家で過ごしていた。
家に帰ると、天王寺リナこと妹の佐倉楓がスマホをいじっている姿が目に入った。リナはあまりにもスムーズにSNSを使いこなしており、その様子を見ると、さすがに12歳とは思えないほどだ。驚きつつ、佐倉は声をかける。
「おい、何見てんだ?」
リナはスマホを佐倉に向けて見せた。画面には、クラスメイトたちが楽しそうに打ち上げをしている写真がいくつも並んでいる。その中には、佐倉が知っている顔も多く見られた。
「これ、みんなの打ち上げの写真だよ!楽しそう!」
「なんでそんなの知ってんだよ、行ってないだろ?」
リナは少し不満そうに、でもニコニコしながら返す。
「だって、SNSで見たもん。みんながアップしてるからさ。あ、お兄ちゃんのクラスメイトも写ってるよ。白崎先生もいたよ!」
佐倉はその名前にピクリと反応する。まさか、白崎先生も来ていたとは。以前、先生がリナ推しているのを見かけたことがあり、ますますそのことが気になった。
「白崎先生も…?お前、SNSで何を見てるんだよ。」
「まぁね、今の時代、SNSなんてすぐに情報が回るから。お兄ちゃんが知らないだけで、みんな知ってるよ。」
リナの言葉に、佐倉はやや動揺しつつも、無理に冷静を装う。
「でもお前、クラスメイトとも面識ないだろ?なんでそんなの知ってるんだよ。」
リナはお兄ちゃんの反応に笑みを浮かべ、少しからかうように答える。
「だって、12歳でもSNSくらい使いこなせるもん。お兄ちゃんだって知ってるでしょ?」
その言葉に、佐倉は一瞬、言葉に詰まった。確かにリナはSNSを使いこなしている。自分が知らないところで、こんなに情報を得ていたことに少し驚いていた。
そして、リナが突然、意味深に続けた。
「でもさ、先生、やっぱり変だよね。12歳の私にそんなに優しくして、どう見ても変な感じ。ロリコン教師なんじゃないの?」
その言葉に、佐倉は真っ赤になった。思わず手で顔を覆い、どう反応すればいいのか分からない。
「おい、そういうこと言うなよ…」
リナは少しからかうように笑ったが、佐倉の気まずさを気にする様子はなかった。
「だって、先生、ちょっと変だったもん。お兄ちゃん、気をつけたほうがいいよ。」
リナが無邪気に言う言葉に、佐倉は心の中で深くため息をついた。やはり、白崎先生のことが気になって仕方がない。