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第12話 進化の兆し

俺の"読心能力"は、確実に進化していた。

いや、もしかすると、最初から"強い力"を持っていて、今まで気づかなかっただけなのかもしれない。


「なあ、ひかり」

「ん?」

「この能力、もっといろんな人で試してみたい」


教室を見渡し、適当にクラスメイトの視線を探る。

そして、俺はふと——風間と目が合った。


(……こいつの心も読めるのか?)


試しに、ほんの少しだけ意識を向ける。


——だが、その瞬間、俺の頭に流れ込んできたのは、強烈な違和感だった。


(……え? な、何も聞こえない?)


いや、それだけじゃない。

何か、"ブロック"されてるような感覚。


「……風間、お前……」


俺が言いかけた瞬間、風間が鋭い目で俺を見た。


「……お前、今、何をしようとした?」


ドキッとする。

まるで、俺が能力を使おうとしたことを見抜かれていたかのような口ぶり。


「え、いや……別に?」

「嘘つけ。今、お前の視線、完全に"読もう"としてただろ」


やばい。バレてる。


「お前の能力、"変化"したな?」


風間は俺に詰め寄るように言った。


「そ、それは……」


誤魔化そうとしたが、ひかりが横から口を挟んだ。


「ちょっと待って風間くん! なんで佐倉くんの能力が変化したって分かるの?」

「……」


風間は少し考え込むように沈黙した後、ため息をついた。


「……まあ、ここまで来たなら隠してもしょうがねえか」


そう言って、風間はポケットから何かを取り出した。


小さな、銀色のコインのようなもの。


「これ……?」


俺が見つめると、風間はそれを軽く指で弾いた。


——その瞬間、俺の頭が"真っ白"になった。


「……っ!? なんだ、これ……」


目の前が霞むような感覚。

さっきまで自由自在に読めていた"心の声"が、一瞬で掻き消えた。


「これが"妨害装置"だ」


風間はそう言った。


「……妨害装置?」


「ああ。俺は"適応者特別監視班"と関係があるわけじゃねえが、"チョイ能力"の進化については、ある程度知ってる。……そして、お前の能力は今、危険な領域に入ろうとしてる」


「危険な領域……?」


「お前が完全な読心能力を手に入れたら、もう"チョイ能力者"じゃなくなる。お前は……"適応者"として、政府に管理される存在になるんだよ」


——適応者。


その言葉を聞いた瞬間、俺の背筋が冷たくなった。


適応者——それは、政府が特別監視している"本物の能力者"の総称。


「……俺が、適応者に?」


「おそらくな。そして、それを知っていたからこそ、白崎はお前のことを監視してたんだろ」


白崎先生……。

あの"進化の兆し"って言葉、そういう意味だったのか?


「なあ、佐倉」


風間が真剣な表情で俺を見る。


「お前、これ以上進化したら、もう普通の高校生には戻れねえぞ?」


……。


俺は、一体どうすればいい?

能力を"進化"させるのか、それとも——


選択の時が、迫っていた。

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