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第11話 チョイ能力の本当の力

俺たちは今、白崎先生を調査するため、倉庫の中に潜んでいる。


「……おい、これって絶対ヤバいやつだろ」


俺はひかりの顔を見た。彼女も同じように驚きながら、倉庫の中を覗き込んでいた。

白崎先生はスマホ越しに、誰かと話している。


「"チョイ能力者"のデータ収集は順調だ。進化の兆しが見られる者もいる……」


進化の兆し……?


俺の能力が本当は"チョイ"じゃないかもしれないと感じていた矢先、そんな話を聞いてしまった。


「なあ、先生って俺たちチョイ能力者を監視してるのか?」

「どうなんだろう……でも、少なくとも普通の教師じゃないってことは確かだよね」


ひかりが小声で答える。

その時——


「誰だ?」


——白崎先生がこちらを向いた。


「ヤバっ!!」


俺たちは反射的にしゃがみ込んだ。

心臓がバクバクと鳴る。


白崎先生は辺りを見回したが、特に異常はないと思ったのか、またスマホに視線を戻す。


「……まあいい。そちらの指示を待つ」


そして倉庫の奥へと消えていった。


「今の、何だったんだろう……?」

「分からん。でも、俺たちを狙ってる可能性は高い」


俺はごくりと唾を飲み込んだ。

("チョイ能力者"のデータ収集……進化の兆し……俺たち、利用される?)


ひかりと目を合わせる。お互い、何をどうすればいいのか分からない。


その時——


「……お前ら、また何してんの?」


背後から突然声をかけられ、俺は飛び上がりそうになった。


振り向くと、呆れた顔をした風間が立っていた。


「えっ!? いや、その……ちょっとした調査?」

「はあ?」

「またその回答!?」


ひかりが慌ててフォローしようとしたが、風間はジト目で俺たちを見てくる。


「……お前ら、また変なこと考えてるだろ。どうせロクなことにならねえんだからやめとけ」

「いやいや、これは本当に重要な調査なんだって!」

「はあ……まだやってんのか。まあ、どうせ止めても聞かねえんだろ?」


風間はため息をつくと、無言で俺たちの腕を引っ張った。


「え、何!? どこ行くの?」

「つべこべ言うな。人目につかない場所に移動するぞ」


風間に連れられて着いたのは、学校の屋上だった。


「……え、屋上?」

「ここなら人気もないし、話せるだろ」


風間はフェンスにもたれかかりながら言った。


「で、何を調べてんだ?」

「……白崎先生のことだよ」


俺がそう言うと、風間の表情がわずかに変わった。


「……白崎?」

「ああ、先生、やっぱり普通じゃないっぽくてさ。さっき、"チョイ能力者のデータ収集"とか"進化の兆し"とか言ってたんだよ」


すると風間は、珍しく難しい顔をして黙り込んだ。


「……風間?」

「……お前ら、本気で深入りする気か?」

「え?」

「白崎に関わるなら、覚悟しとけよ。あの人、ただの教師じゃねえから」


風間はそう言うと、フェンスの向こうをじっと見つめた。


「……お前、何か知ってるのか?」

「…………」


風間は答えなかった。

ただ、その沈黙が、何よりも不穏な空気を漂わせていた。


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